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開廷

 「こうして登校するのも久しぶりね」

 

 財人を連れ、通学路を歩く。

 モモは一旦別行動。


 仕込める種は全部仕込んだ。

 絶対に完璧なんて言えないけど、大丈夫。


 「赤山、緊張してないか?」 

 「してないって……言ったら嘘になるわね」

 

 財人のカバンは異様に膨れてる。

 あのミ=ゴって化け物の対策って話だけど。


 「零とミ=ゴって存在をずっと調べてたんだ。そしたら結構情報が出てきてさ。一部界隈では有名な存在らしい」


 「それで武器を探してたのね」


 それが本当にあの化け物に通じるかどうかは未知数だけど。

 無いよりはましよ。


 話していたら、校門が目の前にあった。

 あの日、委員長を置いて逃げた光景が脳裏に浮かぶ。


 今度はそうならないわ。

 今日で終わらせるんだから。

 この狂った洗脳ハーレム学園を。


 「やぁしゅりち。おひさ~」

 

 校門から、ふわりと制服が舞う。

 踊るような仕草でゆるりがウチ達の前に現れた。


 「黒川」

 「やぁざいとっち。素面で喋るのは久しぶりだね」


 あれだけ煽ったのに、意外と余裕そうね。

 ゆるりも、黒幕も、簡単に負ける気なんて無いって所かしら。


 「さぁしゅりち。願い通りに教室には今、六華のメンバーしかいないよ?」

 「ありがと。じゃぁ、さっさと行きましょう」


◇


 「ねぇ比奈野さん。どうして教室に私達しか居ないんだろう?」

 「私も詳しい理由は聞いてないんです。まぁ、先生方がおっしゃる事なので、問題は無いと思いますけど」

 「そんな事より。実(みのり)ちゃん。すこし太ったんじゃないかしらぁ」

 「こらモモ。目を離した隙にセクハラかますのは辞めるようにと言いましたわよね??」


 教室のドアを開ける。

 そこには皆が居た。


 質問を受けながら本を読んでいる委員長。

 どうやって持ち込んだのか分からないアイスを食べている実(みのり)。

 セクハラするモモに、それをたしなめる統香。


 この光景を見るのも随分と久しぶりよね。

 ここ最近はずっと財人の部屋に籠りっきりだったから。


 「おはよ~みんな~」

 「ゆるりさん、財人さん、おはようございます」

 「あら朱里ちゃんも。もう体調は大丈夫なのねぇ」


 委員長の声を振り切って、モモが前に出る。

 

 「な、なによ。こっちの事じろじろ見て」 

 「ずぅっと心配してたのよぉ。朱里ちゃんが長い間休んでたから」


 傍から見れば、いつものモモだ。

 だけどー


 「それで、体調は大丈夫?」


 ウィンク2回。

 昨日モモと決めていた合図。


 【モモが洗脳状態にある】とゆるりが判断した証拠。

 良かった。

 

 モモも正気でゆるりにバレてない。

 第一段階はとりあえず突破ね。


 「そう言えば朱里さん、財人さん。何故、教室に私達だけ集められているのか知りませんか?」

 「れっかち??今ナチュラルにゆるりの事無視したよね??」

 「あなたの普段の態度を見ていれば、そう考えるのも不思議じゃありません事よ」


 烈火や統香が呆れた顔でゆるりの話を流す。

 ゆるりめ。

 本当に上手くこの空気に溶け込んでるわね。


 「じ、実はな皆に話したいことがあって、俺が先生にお願いしたんだ」


 財人が切り出した。

 『学園生徒は皆洗脳されている』って情報を六華に明かすのは財人の方が良い。


 「へぇ……そう言う話にするんだねぇ」

 「黒川さん?何か言った??」 

 「なんでもないよ、みのりっち」

 

 洗脳の影響で財人に恋心を持っている都合上。

 ウチやモモが切り出すよりも受け入れられやすい。


 全部、零の受け売り。

 しかも、財人にはかなり酷なお願いよ。


 「どうしたんですの?何か悩みでも??」

 「私達で力になれる事なら協力しますよ」


 「ありがとう…………皆、俺の事大好きなんだろ?」


 でも、財人はやり切ってくれた。

 

 「そ、それは……それは、そうですわよ??」

 「れ、れれ。烈火は財人君の事がす、すすす好きですけど??ど、どうしたんですか藪から棒に」


 分かりやすく動揺する委員長と統香。

 そんな二人の目を真っすぐ見て、財人は大きく息を吸った。


 「実は……その感情が第三者から歪められたものかもしれないんだ」


 「え?」

 「それは……どういう」


 「信じられない事かもしれないけど、落ち着いて聞いてほしい」


 委員長と統香がすっと止まる。

 後ろで様子を伺っていた実(みのり)も、ニヤニヤとこっちを観察するゆるりも。

 皆が財人に注目していた。


 「この学園は洗脳されているんだ。皆が、俺を好きになるように」


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