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黒川ゆるりの独白 

 「しゅりちも強情だなぁ」


 ベッドの上。

 つまらない動画しか見つからないスマホをぽいっと投げた。


 そんな時に、そんな声が出た。

 最近ずぅぅぅっとしゅりちの事を考えてる。


 「なんでしゅりちは洗脳ハーレムに抗うんだろ?」


 なにかゆるりと見えてるものが違う?

 しゅりちは別に好きな人が居て、ざいとっちを好きにさせる洗脳がいやだったとか?


 いやぁ。

 そんな話聞いてないし。


 分かんないなぁ。

 なんでしゅりちは、あそこまで洗脳を嫌うんだろう。


◇


 ゆるりが洗脳耐性を身に着けたのはきっと半年前の事。

 『ざいとっちを好きになる事』と『勉強を真面目にする事』を強要されてたっけなぁ。


 特に、勉強させられるのが嫌だった。

 ゆるりは面倒臭い事なんてしたくないのに、なぜか学園では勉強を強要される。

 

 それが嫌で。

 なんでゆるりがこんなに真面目になってるんだろうって考えて。


 それが何時しか洗脳耐性になっていたみたい。


 『やっぱり烈火は見てられません!!財人君が他の皆を好きになるなんて!!』


 ゆるりはびっくりしたよ。

 だって洗脳が雑過ぎる。


 【ざいとっちを好きになる洗脳】と【本人の悪癖を治す洗脳】なんて両立するはずがない。

 ゆるりもれっかちも他のクラスメイトも、欲求不満で度々洗脳を解除していた。


 『欲張りすきだよねぇ……全然みんなの欲求を抑えられてないじゃん』


 面倒だったので、そのまま洗脳されたふりを続けた。

 昼の放送で皆を洗脳してるんだって何となく掴んだ。


 『ねぇざいとっち。お願いがあるんだけどさぁ』


 ざいとっちに頼めばなんでも解決出来る事に気が付いた。

 この洗脳ハーレムが意外に使える空間だって気が付いた。


 『烈火は!!烈火はもう嫌なの!!』

 『なんなんですの?!これは一体??』

 『もう我慢できないよ~~。私はもっともっとおなか一杯に食べたい!!』

 『何なのよこれ!!ウチは一体今まで何を??』


 そして、この空間が存外もろい事に気が付いた。

 邪魔をしているのは【本人の悪癖を治す洗脳】。


 ゆるりは知ってるよ。

 禁止されると皆歯向かいたくなるんだよ。


 れっかちの独占欲は強くなっていく。

 とうかっちの困惑する回数が明らかに増えている。

 反動でみのちっりがあほみたいにお菓子を食べている。

 しゅりちの反抗的な態度がどんどん強くなる。


 黒幕は、きっとまともで真面目なんだろうねぇ。

 きっと本命は【ざいとっちを好きになる洗脳】で、追加の善意で【本人の悪癖を治す洗脳】をたしている。


 『それじゃぁ駄目だよ。いつかこの洗脳ハーレムは自滅する』


 それは……困るなぁ。

 今の学園の方が面白いし、楽できる。 

 だがらこそ、この学園は長く、1秒でも長く、ゆるりが卒業するまで長く、洗脳されてなくちゃ困るんだよ。


 『ねぇ、君なんだよね。黒幕ちゃんはさ』


 だから、黒幕に会った。

 わざとらしく洗脳されているふりをしていた黒幕ちゃんに声をかけた。


 『ゆるりが協力してあげるよ。君だって、この洗脳ハーレムが続いたほうが良いんでしょ?』


 その硬い頭に力の抜き方を。

 勤勉な脳に怠惰な人間の扱い方を。


 そうして今の学園は出来上がった。

 【ざいとっちを中心としたハーレム】だけを洗脳の根幹とした今の学園が。


◇


 「ミ=ゴっちが何も言ってこないって事は……しゅりちは放置でOK」


 う~ん。

 振り返っても、振り返っても、やっぱりしゅりちの意見には納得できないや。

 

 コスパが良いのが一番だし、楽なのが一番だし、楽しいのが一番でしょ。

 何でしゅりちはあんなに必死に、ハーレムを壊そうとしてるんだろう?


 「ん?電話??」


 ブー、ブーとスマホが暴れている。

 いつもなら気にも留めないんだけど……妙に気になる。


 ははぁ。

 なるほど。


 「しゅりち」


 電話かけて来るとは思わなかったなぁ。

 やっとゆるりと一緒に学園を楽しむ気になったのかなぁ。


 「もしもし~」

 『久しぶりね、ゆるり』


 う~ん。

 声が楽しそうじゃない。

 これは……しゅりち、まだ抵抗する気じゃん。

 マジか~。


 「嘘でしょ~。もう諦めた方が楽だって」

 『悪いけど、ウチは諦めるつもりは無いから』

 「はいはい。それで、何の用?」

 『一つ、アンタに伝えておこうと思ってね』


 もったいぶってどうしたんだろう。 

 

 『ここ数日、財人が休んでるでしょ?』

 「風邪だって聞いてるけど」

 『それ、風邪じゃないって言ったらどう思う?』

 「へ?」


 ゆるりの思考が追い付く前に、しゅりちはビデオ通話に切り替える。

 画面に映ったのは。


 『助けてくれゆるり!!気が付いたら朱里が俺の事を!!』


 グルグル巻きにされたざいとっち。

 洗脳が解けてる様子は無いざいとっち。


 『財人の身柄は預かった。これはアンタの洗脳ハーレムをぶっ壊すための、宣戦布告よ』


 そんなざいとっちを人質に取ったと、澄んだ目でしゅりちは宣言していた。

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