歯車がかみ合う時
「ここから先は……認識阻害のせいで思い出せないみたいね」
気が付けらウチらはレンタカーから降りて零の家に居座っていた。
しょぼしょぼとポテトをつまみながらモモの話を整理する。
「ごめんなさい。やっぱり核心的な事は思い出せなかったみたい」
「何言ってんのよ。十分な情報じゃない」
確かに一瞬で事態を解決させる情報とかは無かった。
この洗脳ハーレムという異変に対する答えが出た訳でもない。
でも、黒幕がどんな奴かって言うのは分かった。
なんで財人中心のハーレムを作ったのかも。
「一つ、言わせてもらっていい?」
「どうしたんだ、赤山?」
「どうしたもこうしたも無いわよ!!アンタはど~してやばい女に好かれる訳???」
委員長といい、黒幕といい。
財人への恋心で狂った人間が多すぎる!!
「ちょっと朱里ちゃん。烈火ちゃんの事までやばい女って言うのは言い過ぎよ」
「は?モモ……あんたそれ本気で言ってる??」
ウチの言葉に対して、モモは不思議そうに首を傾げた。
もしかして……モモが洗脳される前は委員長の嫉妬が少なかったとか??
それが日を追うごとに強くなって、ウチの知る委員長に。
「え、盗聴??髪の毛でお守り……あの烈火ちゃんが??」
「お、おいおい淡野。怖い事言うなよ」
ウチの心を読んだであろうモモがありえないと言った形相で口にする。
財人もそれに倣うように、ウチに対して疑問を浮かべている。
「い、いやいや。ありえないわ」
「いやいやありえないって」
そして、ふたりで口をそろえてこう言った。
「あの烈火ちゃんがそんな事するはずが無いわ」
「比奈野がそんな事する訳がないって」
そうよねぇ。
最初は誰だってそう思う。
ウチがそうだった。
「ま、財人がやばい女ひっかけてるって話は置いておいてだ」
パッと零が場を仕切る。
傍から見たらアンタも大概やばい女よねというツッコミは何とか心の中に抑えた。
「財人が好きな女って部分で容疑者を絞りたい所だな」
「そうね。そこさえ分かれば一気に黒幕に近づけるはずよ」
とはいえ、今は洗脳で全員が財人を好きになっている状況よ。
そんな中で、洗脳前から財人を好きだった人を探すのは。
「あら?私言って無かったかしら?」
「モモ?」
モモがいったんコーヒーを飲む。
ようやく落ち着いたのか、いつもやってるみたいな悪そ~な笑みを浮かべて答える。
「黒幕はね、六華の中に居るわ」
「は?!」
「これは間違いないわよぉ」
「ちょ、なんでそんな大事な事最初に言わなかった訳!!」
「話の流れ的に分かるかなぁと思ったのよ」
モモの奴。
今笑ってウチの事見てる。
ぜ~ったいからかってる!!
「なぁ財人、六華って何?」
「あぁ、それはだなぁ」
財人と零が今更な話をしているのは置いておくわ。
あれ。
でも待ちなさい。
黒幕が六華の中に居る。
六華の中で洗脳解除が出来たのを打ちを含めて4人。
ウチとゆるりが洗脳耐性持ち。
ゆるりは黒幕の協力者だから除外。
モモは黒幕の計画を最初に邪魔した超能力者。
だからモモも黒幕の容疑者から除外。
委員長はウチが最初に洗脳から解除したのよ。
あの様子で委員長が黒幕とは考えられない。
となるとー
「残りは……|実《みのり⦆か|統香《とうか⦆」
この二人しかありえない。
「そうねぇ。朱里ちゃんの情報を合わせると、この二人のどっちから黒幕の可能性は高いわぁ」
「ん……待てよ皆。この二人ってたしか」
財人がそこまで言って、ウチも思いつく。
そう。
この二人に限っては、一つの大きな共通点がある。
「放送部」
そう言えば、洗脳ループは決まった時間に生徒を洗脳させる仕組み。
ウチが知っている限り、洗脳ループの開始は少なくとも午後からで。
『放送部が送ります。皆のラジオです』
カチカチ。
カチカチと。
今まで集めてきた情報が繋がっていく。
ウチの思考はすでに……黒幕の正体を突き止める寸前のところまで回り始めていた。




