淡野モモの独白
まず、最初に断っておくわ。
私はまだ洗脳……というより、認識阻害の影響を強く受けているの。
だから、核心的な事は思い出せないわ。
あれは、そう。
去年の話よ。
『財人君の事が好きって』声が聞こえたの。
◇
私は生まれた時から他人の心の声が聞こえる力を持っていた。
まぁただ、この力を持って良かったと思う事は余りなかったわ。
聞きたくない本心も聞いてしまうし。
下手におせっかいを駆けて余計に拗らせてしまった事もあったわ。
もちろん、悪用して生きていく道もあったと思うわ。
でも、やっぱりそう言うのは良心が耐えられなくてね。
私は人の道を生きる事にしたの。
「おはよう財人君」
「お~おはよ。淡野」
だから私は知っていた。
財人君には思い人が学園外にいることを。
「あ、委員長もおはよう」
「おはようございます。今日は早いですね財人君」
烈火ちゃんが財人君の事を好きな事も知っていたわ。
財人君の事を考えると叶わない恋になってしまうけれど、私は関与しない。
こういう恋は当人の間で解決するのは筋だからね。
私は下手に介入しない。
もし、落ち込んでいたら慰めて、前を向いて歩けるようにしてあげるぐらい。
私はそれでよかった。
そんな毎日を過ごしていた時の事。
『※※※※※※※※』
ある心の声を聞いたの。
『※※※※※※※』
その声の内容までは思い出せない。
でも、あれは財人君への恋心と……恐ろしいほどの嫉妬。
『※※※※※※※』
それと、悲痛なまでの自己嫌悪だったの。
◇
『※※※※※※※』
『仕方ないさ。急にあんなことを言われたら僕達でも耐えられない』
『※※※※※※※!!』
『確かに……このままじゃ僕たちは』
朱里ちゃんが黒幕ちゃんと呼ぶ子の声は次第に激しさを増すものだった。
決して顔には出さない。
「みのりっち~。またそんなに食べて、とうかっちに怒られるよ」
「えへへ。おなかすいちゃったんだもん」
「それにしたって食べすぎですわ。もう少し我慢なさい」
「げぇ、天上さん」
「げぇとは何ですの。げぇとは」
皆といつも通りの会話をしながら、心の内で激しい嫉妬を募らせていた。
そしてもう一つ。
『※※※※※※※』
『欲しがっているから……確かに筋は通ているのかもしれないね』
『※※※※※※※』
『なら、僕たちがするべきは……財人君から選ばれる事でもなく、財人君を欲しがるでもなく』
黒幕には……二つの人格があったわ。
『僕』を名乗る人格と、認識阻害によって『※※※※』になっている人格。
『|※※※※※※※《あたえましょう⦆』
『なるほど……財人君が喜びそうな何かを与えれば良いのか』
『※※※※には、洗脳がある』
『あの時と同じように動くという事だね』
最初は聞き間違えたのかと思ったわ。
でも、私も不思議な力を持っている人間。
それも、他人の心を読む力を持った人間よ。
『僕と』
『※※※※で』
『作ろうか、またあの時の様に』
『※※※※達の理想の世界を』
その『洗脳』という手段が嘘だとは思えなかった。
◇
「おかしいね。どこでこの計画を知った?」
「私も特殊な力を持っているのよ。貴方の心の声が聞こえたの」
次の日。
私は黒幕を止めるために動いていた。
彼女一人を屋上に呼び出したのだ。
「貴方が二つの人格を持ったいるのも知っているわ……この計画を進める原因が、財人君であることも」
「な~んだ、僕たちの事、全部知っているのか。それじゃぁ、とりつく必要は縺ェ縺?〒縺吶o縺ュ」
瞬間、黒幕ちゃんの後ろにゲートが開く。
そこから現れたのはミ=ゴと呼ばれる化け物だった。
「その話し方は何かしら?」
「簡単な事だよ。僕と※※※※は二重人格では縺ゅj縺セ縺帙s繧」
その口調は歪としか表現できないわ。
まるで不完全な人格統合。
口調がふらふらと揺れる、素人小説のキャラクターセリフみたいな喋り方だったわ。
「僕も、※※※※も、二人そろって【螟ゥ荳顔オア鬥?】なんだ。財人への恋心も、この洗脳能力も、僕と※※※※のもの」
「嘘はついてないみたいね……ねぇ【邨ア鬥?】ちゃん。どうしてこんな事をするの?」
きっと、このまま正論をぶつけても彼女は止まらない。
この計画は恋心と嫉妬だけでは始まらない。
それ以外に、彼女の心を歪めた何かがあるはず……そう思って、質問するしかなかったの。
「人の心を読める君なら分かるはずだよ」
「へぇ。何かしら?」
「愛って醜いと思わないかい?」




