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淡野モモ

 「とりあえず、家に帰って落ち着かね?」


 そんな提案をしたのは零だった。

 ウチも財人も、洗脳から解放されたばかりのモモも確かに疲れてた。


 だから、その提案に反対する人は居なかった。


 「てか、今から電車で帰るのだるいし、レンタカー借りるぞ」


 運転席に零が。

 助手席に財人が。


 ウチとモモは後部座席で隣に座った。


 「あら?車に乗せられるなんて本当に誘拐されてるみたい」

 「だから、アレは建前だって。アンタ、分かって言ってるでしょ?」

 「本当かしら?あのお姉さんは私達を使っていかがわしい事をするつもりかもしれないわよぉ」

 「無いわよ。零がそんな奴だったらウチがぶっ飛ばしてるわ」


 その声に零は抗議の声を上げ、そんな零を財人がなだめる。

 パッと見たら普段のモモに見えるけど。


 「ごめんなさいね、冗談よ」

 

 顔に元気が無い。


 「こうでもしないと気持ちの整理が付けられないの」


 財人や委員長も、洗脳を解除した後の反応は大きかった。

 罪悪感を覚えたり、スタンガンを持ち出して大暴れしたり。

 

 でも、モモは何というか。

 二人に比べて痛々しい。

 

 「ねぇお姉さん。貴方の家に帰るまで、あと一時間位であってるかしら?」

 「いや、淡野。零の家はそんな遠くないし、15分もあれば着くぞ」

 

 モモの質問に財人が返す。 

 ただ、モモは淡々と言葉を返した。


 「お姉さん、帰りにマックによるつもりよね?私達の気分転換も兼ねて」

 「え?」

 「それに、この時間は道が混むからざっと一時間ぐらいかかるだろうって考えてる……違うかしら?」


 零はその言葉に対し、乾いた笑みをこぼす。


 「おいおい。なんで分かるんだ?めっちゃ怖いんだけど」

 「そう……これぐらいなら、まだ使えるのね」

 「モモ?」

 

 どうしたんだろう。 

 モモの雰囲気が全然違う。

 

 「朱里ちゃん、財人君、あとお姉さん。皆には話すべきよね」

 「それって、黒幕の事?」

 「そうね……黒幕と、私の事を」


 黒幕の情報!!

 今ウチ達に一番足りない情報よ。


 「最初に言っておくわ……私も認識阻害の影響を強く受けてる。だから、黒幕の顔や正体は思い出せない」

 「それでもいい。知ってる事を教えて」

 

 ウチの言葉に、モモは静かに首を縦に振った。


 「みんなは、黒幕と一緒に行動している化け物は知っているかしら?」

 「確か、ミーゴとか呼ばれてたやつよね」

 「俺も見たよ。まぁ、その時化け物と一緒に居たのはゆるりだったけどな」


 忘れるはずがない。

 本当に恐ろしかった。

 思い出すだけで、身震いしそうなほどに。


 「みんなももう体験している通り、この世界不は不思議な力があるの。人の認知を歪める洗脳や、普通の生物とは一線を画した化け物」


 普通なら、言質罪が無いって笑い飛ばすところなんだけどね。

 もうウチらも当事者よ。

 そんな事は言ってられない。


 「黒幕もそんな存在なの。皆に分かりやすく言うと……そうね、ミーゴから知識を与えられた魔法使いみたいなものかしら?」


 魔法使い。 

 一気にファンシーな言葉が出てきたわね。

 

 まぁ、ゆるりの使った呪文や洗脳。

 それがあの化け物の知識由来の魔法だと考えるのは筋が通るわ。


 「そして私も、普通とは少し違うの」

 「え?」


 モモは一瞬、次の言葉を吐くのをためらった。 

 視線を左右に動かし、大きく深呼吸をする。 

 そして、意を決したようにそれを告白した。


 「私ね、いわゆる超能力者なの」

 「はい???」

 「人の心を読むことが出来る……そんな力を生まれながらに持っているの」


 いや。

 えっと。


 確かにモモの人を見る目は凄いと思ってたわよ。

 実際、他人の心を読めると言われても違和感ないわ。


 でも、余りに急な告白で脳の処理が追い付かないと言うか。

 そもそも、そんな能力があるなら普段の生活にもっと支障が出てもおかしくないはずじゃない?

 それに、洗脳に関してもパッと気づける様な気もするし。


 「そんな能力があるなら普段の生活にもっと支障が出てもおかしくないはずじゃない?」

 「え?」

 「それに、洗脳に関してもパッと気づける様な気もするし」


 ウチが心の中で思った事を、全部口にしてる。

 一言一句違わずに。


 「証明はこれぐらいで十分かしら?」

 「十分ていうか、ちょっと怖いぐらいだけど」

 「ごめんなさいね。私の力も認識阻害のせいで万全では無いの……だからさっきのは試運転も兼ねてたの」


 だとしても心臓に悪いわよ。

 というか、万全じゃない状態でここまで正確に心を読めるの?

 ならー


 「朱里ちゃんが考えてる通りよ。私は黒幕の計画を事前に知ったのよ、心の声を聞いてね」

 「それで一人で止めようとしたの?」

 「えぇ、結局は失敗してしまったけれどね」


 ふと、悔しそうにモモは顔をあげた。

 ぽつり、ぽつりと。

 モモは黒幕と対峙した時の事を話し始めた。

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