スタート
『ウチは……洗脳されている』
『ウチは……洗脳されている』
『ウチは……洗脳されている』
なんなの、これ。
今日ずっと頭の中で流れてる。
ご飯食べた後も、その後の授業でも、ずっと。
「朱里ちゃん、大丈夫かしらぁ」
「何?モモ」
「今日午後からずっと様子が変よぉ」
よりにもよって、モモに見抜かれる始末だ。
こいつ、普段はエロ女のくせしてよく周り見てるな。
「大丈夫。ちょっと疲れがたまってるだけ」
六華の他のメンツに面倒みられるのはまだしも、モモに看病されるのはなぁ。
なんか悔しい。
いつもバカやってるモモに介護されるのはなんか悔しい。
でも、皆部活とか委員会とかで居ない。
ぶっちゃけもう放課後。
部活も休みでやることも無し。
さっさと家に帰ってベッドの上で療養しよう。
「朱里ちゃん!!危ない!!」
「え?」
気が付けば、目の前に柱があった。
あぁ、これあれだ。
歩きスマホとかしてて、前見てないから電柱に当たるみたいなやつ。
「いったぁぁぁぁぁぁ」
「ちょっと、本当に大丈夫なの?朱里ちゃん」
しくじった。
めちゃ頭がじんじんする。
『ウチは……洗脳されている』
『ウチは……洗脳されている』
『ウチは……洗脳されている』
「私の声、聞こえるかしら?血は……出てないわね」
『……あぁ。洗脳が解けちゃったのかぁ』
「もし、声が出せそうなら何か言ってみて。意識は朦朧としてないかしら」
『洗脳……財人 、アンタ一体何を』
『大丈夫だよ、朱里さん。君もすぐ、元に戻れる』
全部……思い出した。
ウチは、この学園は洗脳されて。
「ウ、ウチ……今、どうなって」
「本当に大丈夫?幸い外傷はなさそうだけど」
ウチの目の前には、心配そうにこっちを見てるモモが居る。
財人 や他の六華は居ない。
「朱里ちゃん?」
ここでまた叫ぶ??
いや、駄目だ。
昨日の事を思い出せば分かる。
ウチの洗脳が解けている事がバレたら、きっとまた振り出しに戻る。
「ごめん。ぼーっとしてた」
「私心配よぉ。もし、誰にも言えない悩みがあるなら」
「ベ、べつに?!アンタに心配されるほどウチはやわじゃないし」
ウチの洗脳が解けたことは、バレちゃだけ。
今は普通に話せてるモモも、いつあの虚ろな目になって襲ってくるか分かったもんじゃない。
「朱里ちゃんのそういう性格、可愛いと思うけれど……あんまり無茶はしちゃだめよ」
「はいはい」
だから、洗脳されていた時と同じ回答をしないと。
幸い、洗脳されていた時の記憶は残ってる。
何とでもなる。
「ね、ねぇモモ」
「なぁに」
「今日の事、恥ずかしいから皆には内緒にしておいてくれる」
今日、ウチがしないといけないのは……家の日記帳を見ること。
この正気を保った状態で家まで帰ること。
「まぁ。それじゃぁ、これは私と朱里ちゃんのヒ・ミ・ツ♡」
「艶っぽい声出してるんじゃないよ!!」
これが最優先だ。




