日常だと思っていたもの 後編
「本当にあの二人は!!委員長からも何か言ってよ」
昼休み。
私達は六華のメンツとご飯を食べていた。
と言っても、財人はゆるりとモモに連れられ購買のパン競争に行ったから……しばらくは帰ってこないか。
「モモさんはあれで人を選んでいるでしょうし、少しハレンチなのは少々目を瞑りましょう。ゆるりさんは……もう駄目かもしれません」
メガネをくいっと動かしながら、委員長がため息をつく。
比奈野烈火なんて名前から想像もできない程真面目な委員長。
六華に委員長みたいな話が通じる人が居てよかった。
ウチと委員長ぐらいよ。
六華でまともなのは。
何せ、エロ女の淡野モモ。
ニート志望の黒川ゆるり。
そして残りがー
「烈火。諦めてはいけませんわ。どんな子にも光る所があるのですから」
「黒川さんはきっとおなかがすいてるんだよ。私もおなかがペコペコな時はやる気出ないもん」
「実……わたくしは思いますの。貴方は食べすぎですわ」
「え、えぇ?!そんな事ないよ天上さん!!今日なんか、ご飯2号分ぐらいしか食べて無いもん」
何故かエセお嬢様口調の天上統香。
あほほどご飯は食べるのになぜかスタイルは良い女の敵、北条実。
もう癖が強いったらありゃしないわ。
「それにしても、朱里。さっきからお箸が進んでいないように見えますわ?」
「え、そう?」
「えぇ。朱里は頑張り屋でございますし、何か疲れがたまっているのかと思いまして」
統香はそう言いながら弁当のコロッケを一つ分けてくれる。
「良いの?」
「もちろんですわ!!ノブレスオブリージュってやつですわ」
そう言う事なら、遠慮なくもらおうかな。
なんか、隣の実がアホほどよだれ垂らしてる。
アンタはもう散々食ってるでしょうに。
その胃袋はブラックホールか何かなわけ??
『放送部が送ります。皆のラジオです』
「お、ラジオ」
スピーカーから聞こえてくるのは実の声だ。
「実さんも、統香さんも、放送部をよく頑張ってます。ほとんどの生徒から人気のラジオなんて中々実現できることじゃないですもの」
「委員長からおほめにあずかるなんて、嬉しいですわね!!」
いや~実際良いラジオなんだよねぇ。
選ぶ曲センスあるし。
メインパーソナリティーで喋ってる実の声は聞きやすいし。
「ねぇ統香。今日はなんの曲流すの」
「今日は素直に流行に乗ることにいたしましたわ。テックタックで流行りのー」
「フッフッフッ」
ど、どした?
実の奴。
急に意味深な笑みを浮かべて。
「実はね。今日の放送、家で私が取ってきたデータをすり替えて流してるの」
「はい???」
なんかすごい事言い始めた。
統香が固まっちゃったじゃん。
「な、なぜそんな事を」
「あ、委員長もせっかくだから聞いてよ。天上さんったら、私のリクエストした曲全然使ってくれないの」
「いや……それは貴方が……持ってくる曲が」
ま、まぁたまにはいいんじゃない。
統香のセンスは認めてるけど、実だって自分の好きな曲放送で流したいでしょ。
「いいじゃんたまには。ねぇ、実。曲名何なの?」
「良くぞ聞いてくれました赤山ちゃん。これは名曲なんです」
「うんうん」
「ボーカロイド、阿寒シヌの【拷問、どうやってやる♡】ですから」
「ん???」
いま、なんて???
『鞭打ち!!棒打ち!!脅迫!!爪剥がし』
ウチの理解が届く前に、その曲は流れてしまった。
可愛い機械音が残虐な内容を淡々と歌い続ける。
教室の空気は、次第に冷えていった。
「あ、あれ?」
「実……ごめんなさい。こうなることをわたくしは知っていたのに……止められなかったわたくしのせいですわ」
「アババ……アババババ」
「悲しかったらわたくしの胸で泣いて良いんですのよ。涙は恥ずかしい事ではありませんわ」
まったく。
何やってんだか。
まぁ、こういうのも楽しくていいけどね。
『ウチは……洗脳されている』
『ウチは……洗脳されている』
『ウチは……洗脳されている』
「あ、あれ??」
また、この声?
いったいこれは……何なの??




