日常だと思っていたもの 前編
「あ、あぶな。ホームルーム遅れる所だった」
寝坊して朝から全力疾走とか、本当に勘弁して。
髪セットする時間も無かったし、ホント散々ね。
「お、朱里が遅刻なんて珍しいな」
「まだ遅刻はしてないわ!!ギリギリセーフよ!!」
からかうように声を掛けてきたのは、隣の席の縁欲財人。
ま、この学園じゃ知らない人はいない有名人よ。
ぱっとしないはずなのに、話せば引き込まれてしまう。
噛めば噛むほど味がする。
するめの様ないい男。
「どうしたんだ朱里。変な顔してこっち覗き込んで」
「いや……相変わらず変なあだ名よねと」
「何が?」
「アンタのよ。スルメ男」
「それかぁ……いや、変なあだ名なのは本当にそう」
あれ。
なんだろう。
何か違和感がある。
変な感じねぇ。
「しゅりち~。どったの?」
「ぼぉっとしてますわねぇ。そんな朱里さんも可愛い可愛い」
「ヒャァ!!」
誰よ!!
突然ウチの体に抱き着いたのは!!
いや、六華の中でそんな事してくるのは一人!!
「モモぉ……このエロ女ぁ」
「あらやだ。怒った朱里ちゃんも可愛いわよ?」
「因みにゆるりもいるよ~」
180はある高身長のモモはニマニマと笑いながらウチをからかう。
その背中に隠れてあくびをしているのはゆるりだ。
「ゆるり、アンタもモモの暴走を止めなさいよ」
「えぇ、だってももちの説得は面倒だもん」
「面倒ってアンタねぇ」
「ゆるりはね。ゆったりと生きてたいの。将来の夢はニート」
ゆるりは碌な大人にならないわ。
「ゆるりちゃんが望むなら私が養ってあげるわよぉ。もちろんお代は、か・ら・だ」
モモも碌な大人にならないわ。
「まったく……あんたらこの調子で進学とかどうするつもりよ」
「あらぁ?でもこの前の中間テストは私達の方が上だったでしょう?」
「な?!そ、それは」
「ゆるり達はざいとっちに勉強教えて貰ってたもんねぇ。しゅりちは照れ屋さんだから来なかったけど」
「うっさいうっさい!!」
だって。
財人と一緒に図書館で勉強って、照れるじゃない。
絶対二人きりなんて……ウチの精神が持たない。
「あぁ。何だ、朱里も期末は俺と一緒に勉強しような」
「良いわよ別に!!アンタの力なんかに頼らなくたって、ウチの力だけであのボンクラ二人の成績抜いてやるわよ!!」
まぁ、全く。
毎日騒がしくて大変よ。
まぁ……でも、こんな毎日が楽しい。
こんな事、財人や六華の皆には恥ずかしくて言えないけど。
『ウチは……洗脳されている』
「え?」
「どうした、朱里?」
「い、いや……何も」
何?
さっきの。
そう言えば、今日寝坊したのよね。
その時、変な夢でも見たのかしら?




