ウチの名前は赤山朱里
「ウチの名前は赤山朱里。ウチの名前は赤山朱里」
部屋の中で、必死に自分の名前を叫んでいた。
ウチは今、ウチが本当のウチなのか自信を持てていない。
「大丈夫……今、ウチは正常だ」
ちょっと前まで、普通の高校生活を送っていたの。
いや……あの気持ち悪い光景が普通だと思い込まされていただけかもしれない。
『ねぇ財人 。またあんた寝坊したの?』
『いやぁごめん。朝起きれなくてさぁ』
『いやぁねぇ財人 君。寝癖が付いてるわよぉん』
『ちょ、朝から縁欲君の髪を……そ、そんなねっちょり』
『ハレンチですよ。いくら財人 さんが魅力的でも、風紀を乱すのはご法度です』
私の学園は、今おかしなことになっている。
縁欲財人というオタク気質の男を中心に学校が回っている。
『まったく。一緒にいるこちらが恥ずかしいですわ』
『まぁいんじゃな~い。うちら六華はこのガッコじゃ高値の花なんだし~』
『何の理由付けにもなって無いし』
学校の女子も、男子も、先生も、皆縁欲財人が大好きだ。
彼が困った時、何かあった時、皆が縁欲財人を助けるために動く。
それだけなら、まだいいわ。
全然良くないけど、まだいいわ。
問題は……ウチ。
ウチを含めた、6人の女子生徒。
六華とか言う意味の分からないグループ名が知らない間に定着してた。
六華は全員が財人の事が好きで……財人 は六華に囲まれてイチャイチャしながら学校生活を続けてた。
「ウチの好みは……そう、ガチムチの筋肉質な男よ。財人みたいなモヤシ……好きになるはずがない」
気持ち悪い。
気持ち悪い。
いつの間にか、私は財人 の事が大好きになるように洗脳されていた。
今日、たまたまずっこけて頭を打っていなかったら……この事実にも気づきはしなかった。
『大丈夫?朱里?』
『え、待って……なんなの、これ』
『……あぁ。洗脳が解けちゃったのかぁ』
今でも思い出す。
あのおぞましい光景を。
『洗脳……財人 、アンタ一体何を』
『大丈夫だよ、朱里さん。君もすぐ、元に戻れる』
あれだけ騒がしかった教室が一瞬で静かになった。
六華の連中も、先生も、生徒も、皆黙ってその場に突っ立って。
財人までもがうつろな目をしてまくし立てていた。
ハーレムがどうとか、皆で幸せになろうとか。
「駄目だ……眠たい」
きっと、ここで寝たらウチはまた洗脳状態に戻ってしまう。
そんな気がする。
だから、この【秘密の日記】に情報を残さないと。
出来るだけでも……多く……ウチが……赤山朱里である為に。
◇
「あれ?ウチ、寝てた」
目が覚めたら、ウチは机の上で突っ伏してた。
宿題でもしてたのかな。
昨日の記憶が……無い。
「えぇ……ウチ、もしかして疲れ過ぎ?」
パッと机を見ると、そこには【秘密の日記】……もといい、私の恥ずかしいポエム集がバタンと倒れてあった。
「あ、あっぶな。パパやママに見つかったら一生いじられる」
ポエムを書くのは好き。
でも、誰かに見られるのは恥ずい。
「と、とにかく早く隠して、学校いこ~」
昨日の自分が書いたポエムは……確認してる暇ない。
てか、普通に時間やばい。
遅刻しそう。
「ママ!!今日、ウチ朝ごはん要らないから!!」
さぁて。
今日も新しい一日が始まる。
「きぃ引き締めて行きますか」




