反撃 最初の一手
「ぶっちゃけお前らはどう思う」
委員長からの音声データが止まる。
開口一番に声を上げたのは零だった。
「私はお前らの学園生活なんて知らないからなぁ。ぶっちゃけ、さっきの話をどこまで信用していいかわからないしー」
「信用して良いわよ」
考えるよりも先に口が動いた。
だって、ウチからしたら100%信用していい情報源よ。
「私は性格悪いから、あえて指摘するぞ」
「なによ」
「なんでノータイムで信用していいと断言できる」
モモがこの音声に出てる黒幕ちゃんで、私達をハメようとしてる可能性があるかもしれない。
委員長が会話を盗聴している事も、そのデータをウチに送ることも気づいていて。
それでわざとこの会話をした可能性があるかもしれない。
零の主張はこんな所ね。
でも、それでもウチは断言する。
「その可能性はないわ」
「理由は?」
「簡単よ。モモの話を始めたのがゆるりだからよ」
ゆるりの性格なら、機密情報をぽろっとこぼしてもおかしくないし。
委員長が録音してるなんて普通気づかない。
『だって、れっかちには洗脳耐性ないでしょ?』
それ以上に、ゆるりは委員長を気にしない。
あいつは洗脳耐性を絶対視してる。
そりゃそうよね。
ゆるりから見れば、呪文を唱えるだけで耐性を持っていない相手を洗脳出来るんだもの。
「ゆるりはウチ以外を警戒しない。この状況で、ウチらを罠にハメるなんて考えもしないはずよ」
「なるほど……財人はどうだ?」
「俺も赤山に賛成だ」
頭を抱えた財人がゆっくりと口を開く。
「赤山程の根拠じゃないんだけどな……普段のゆるりを知ってるとうっかり失言したって方がしっくりくる」
「あっそ。んじゃぁ、洗脳学園エアプの私はお前らの判断を信じる」
「なによ、そのエアプって」
「知らないなら知らない方が良い……それより、だったら作戦立てるぞ」
零の奴……わざと話を変えたわね。
まぁ、ウチもその話をしないとって思ってた所だし良いけど。
「この情報を信じるなら、そのモモって子は確実に仲間にしたい」
「俺と同じように洗脳を解くんだな」
「あぁ。でも、問題が沢山ある」
零の言葉にピンときた。
多分、洗脳ループの事ね。
「ウチが学園に行くのは黒幕に怪しまれるからNG。かといって、財人や零が学園に行けば洗脳ループの餌食になる……そう言う事よね」
昼休み前に引っ張り出す?
いや、それも怪しまれる。
ただでさえ、財人はズル休みしてる状況よ。
体調不良って事で話を通してるらしいけど……休んだ次の日にモモを連れ出すなんて怪しすぎるわ。
「あぁぁぁ!!学園に行くこと自体のリスクが高すぎるのよ!!」
「かなりうぜ~仕組みだな。そのモモって子だけ学園から拉致するか」
「もっと目立つ事してどうすんのよ!!」
やるなら放課後にモモと鉢合わせるのがベスト。
でも、それにしたってモモをどう呼び出すの?
ゆるりや学園に潜む黒幕に見つかった時点で危ないのよ。
学園近くで待ち伏せは出来ない。
かといって、ウチはモモの家も知らない。
適当な用事をでっち上げる?
でも、学園でモモがそれを話したら結局ゆるりにバレる。
「拉致……拉致……それだ!!」
「え。どうしたのよ財人」
「良い作戦思いついた」
突然大声を出した財人。
ウチも零も、財人の作戦に耳を貸す。
「おま、それは」
「バカ!!あんた、自分の事をもっと大切にしなさいよ!!」
「でも、この作戦なら確実だろ」
それは、余りにも危険な作戦だ。
財人の身を削った作戦。
失敗したら、洗脳学園とか関係なく人生が終わりかねない。
でも……この方法なら確実にモモ一人だけを呼び出せる。
「少しでも危険な橋を渡らないときっとあの黒幕には勝てない。こんな作戦でモモを仲間に出来るならやる価値はある」
「それは……そうだけど」
「ちょっと時間をくれ」
戸惑うウチをよそに、零が声を上げる。
「私が財人の作戦を仕上げる。お前だけに責任が被らない、出来るだけ安全で、私達皆が納得できる形に」
零が取り出したのはノート。
財人の作戦。
ウチの要望。
零の要望。
やがて危なっかしい作戦は、少しマシな危なっかしい作戦へ昇華された。
「これなら、ウチも良い」
「よし……なら準備だ。決行は明後日にするぞ」
確かに、ゆるりも黒幕も厄介よ。
危ない橋を渡らないと勝てないわよね。
「待ってなさいモモ。アンタの洗脳、絶対解いてあげるんだから」




