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手がかり

 『これが烈火の………足掻き、です』

 「委員長」


 ショートメールが送られた日を見た。

 それは、ゆるりから逃げたあの日。

 

 「委員長は凄いよ。最後まで、戦ってくれたんだ」


 きっと、ショートメールにしたのはゆるり達にバレないため。

 基本ラインで話すもんね。


 ウチを逃がして、音声データまで残すなんて……頑張りすぎだよ。

 

 『彼女には逃げられたか』

 『まぁ良いんじゃない?しゅりちはどうせ戻ってくるよ』


 続いて聞こえてきたのは、ゆるりとあの化け物の声だ。


 「それ、黒川の声だよな」

 「話の流れ的に、もう一人の声は朱里が言ってたミーゴって怪物か?」


 財人と零もウチのスマホに興味を向ける。

 

 「委員長が隠し撮りしてくれたんだ。ウチらに情報を残すために」

 「なるほどなぁ。これがあれば黒川達……いわゆる黒幕の情報が分かるって訳だ」

 「いや、よく思いつくねそんな事。この子、盗聴に慣れてるんじゃない??」


 零は冗談で言ったんだろうけど、その通りよ。

 委員長はヤンデレでストーキングと盗聴の達人なんだから。


 口が裂けても言えないけど。


 『ごめんね、カストルム。僕の失敗だ』

 

 その声が聞こえた瞬間だった。


 「あぁぁぁぁ!!」

 「だぁぁぁ!!頭が!!」


 い、痛い。

 ウチの脳が……拒絶してる??


 洗脳されてる時より、負担が大きい。

 これは一体。


 「ちょ、お前ら大丈夫かよ」

 「零……平気なの?」

 「私は何ともねぇよ。でもこれは一体」


 『朱里さんが洗脳耐性を持っていると気づけなかった』

 『仕方のない事だろう。マスターも、普段の学校生活は自己洗脳をかけた状態で過ごしているのだから』


 ゆるりと、化け物と、もう一人。

 もう一人いる。


 そのもう一人が喋る度、ウチの脳が軋む。

 多分、財人も同じ。

 

 何で零だけ無事なの?

 落ち着いて考えないと。

 さっきの呪文と同じだ。

 きっと法則があるはず。


 『てかさ、認識阻害だっけ?消してよ黒幕ちゃん。ゆるりとも結構長い仲じゃん』

 『ごめんね。僕の正体は君にも教えられない。保険なんだ』


 認識……阻害?

 それだけじゃない、さっきの音声にもヒントはあった。


 【マスターも、普段の学校生活は自己洗脳をかけた状態で過ごしている】


 つまり……ウチと財人は黒幕と会ったことがあるんだ。

 クラスメイトとして?

 友達として?

 果ては先生かもしれない。


 でも、そんな事は関係ない。

 重要なのは……ウチと財人は黒幕の声を聞いただけで相手を特定できる可能性がある。

 それを防ぐための認識阻害って事よね。


 「財人……この声の正体を探ろうとしないで!!」

 「赤山?」

 「多分、この頭痛は黒幕の保険よ……自分の正体がバレそうになったら自動的に攻撃する仕組みになってるはず」


 そう考えれば辻褄が合う。

 零が認識阻害の被害にあってないのは部外者だから。


 声を聞いても相手を特定できないから。


 なら、ウチらもそうすればいい。

 その声から黒幕の正体を特定しようなんて、考えなければ良い。


 『疑り深いなぁ。黒幕ちゃんは……実はゆるりの洗脳耐性なんて簡単に突破出来るんじゃない?』

 『さぁ、それはどうだろうね』


 よし。

 完全に無効化出来た訳じゃない。

 

 けど、少し楽になった。


 「財人、朱里、お前ら本当に大丈夫かよ」

 「ありがとう零。赤山のおかげで何とかな」


 良かった。

 財人も何とかなったみたいね。


 それにしても認識阻害か。

 どれだけ入念なのよ。


 『だってさぁ。黒幕ちゃんの洗脳って手加減してるでしょ?』

 『手加減??』

 『ざいとっち中心のハーレムは作ってるけどさぁ、性格まで出来るだけ捻じ曲げないようにしてるじゃん』


 これだけ証拠を集めているのに。

 近づいているはずなのに。

 一向に黒幕にたどり着けない。


 なにか。

 何か役に立ちそうな情報は無いの!!


 『あ、でも一人だけ居たっけ?』

 「え?」 

 『性格を捻じ曲げられた女の子がさぁ』


 それはあっけなくウチに訪れた。

 ゆるりの失言。


 『ゆるりも、しゅりちも、あんまり黒幕ちゃんに迷惑かけたら本気の洗脳で終わっちゃうかもねぇ』


 委員長がつないでくれて。

 諦めたウチを財人が拾ってくれて。

 反撃するまでの拠点を零が与えてくれて。


 その長い道のりで、ようやく見つけた逆転の切り札。


 『ももちみたいに、エロエロになっちゃうのかなぁ』

 『違う!!アレは……不可抗力だったんだ』


 ある意味では、ゆるりがふざけてるだけにも聞こえる。

 でも、黒幕が必死こいて反論してる。


 『淡野モモは、僕の計画に支障をきたす存在だった』

 『ももちが?洗脳耐性も持っていないのに??』

 『彼女の厄介さは、君や赤山朱里が持つ洗脳耐性とは違う』


 つまり。

 この情報は真実。

 そんでもってー


 『モモは……僕の計画を止めてきた。彼女への対応が一歩でも遅れたら、僕はこの洗脳ハーレム学園を作れなかった』

 『ふ~ん。それで頑張って洗脳したら勢い余ってももちをエッチにしちゃったんだぁ』

 『間違っては無い……その言い方はどうにかできなかったのかい?』

 『ひぇぇ、こわいこわい。ゆるりはゆるりと退散させてもらうよ~』


 モモは白よ。

 それも、黒幕が一度本気で潰さなきゃいけなかったほどの、白。

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