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呪文 攻略完了

 「で、これは一体どういう状況な訳?」


 零の部屋で目覚めて早々、ウチの目に入ってきたのは理解を拒む状況だった。

 

 「なぁ零?こんな拘束で本当に大丈夫なのか?」

 「いや~。嫌な奴を拷問する妄想しようぜのスレにはこんな感じだったはずで」

 

 椅子に座った財人を零がしばりつけてる。

 いや、本当に何よこれは。

 ウチは朝から何を見せられてるの??


 「おはよう赤山」

 「起きたならさっさと飯食えよ。好きな冷食チンしとけ」

 「まず説明が欲しいって話をしてるのよ」


 ウチがそう言うと、零はノートを一冊渡してきた。

 これは……チェックリスト?


 「良いか。私達は例の呪文について検証をしまくる」

 「その時にまた俺が暴れたら大変だろ?だから縛ってる」

 「だからって、財人……あんたはそれで良いの?」

 「これが一番安全かつ、一番事件解決に繋がるだろ?」


 財人。

 きっと、罪悪感とか責任感とか抱え込んでるのよね。

 

 「これが一番洗脳の謎に近づけるのは確かね」

 「そうだろ?零に言ったら俺に負担がかからないようにって色々とな」

 「そう……でも、無茶したら駄目。アンタの脳がヤバそうだったらすぐに中止するからね」


 少し不安はあるけど……とはいえ、今のウチらに出来るのはこれぐらいだ。

 まずはおなかすいたなぁ。

 冷蔵庫の中は……このラインナップなら焼きおにぎりにしようかな。


 「んじゃ、朱里ちゃんが飯食ってる間に最初の検証だ」

 「よし零。バッチこい!!」

 「んじゃ行くぞ。イヤ、イヤ、カストルム、フタグンー」


 ウチがご飯を食べている間に零が呪文を詠唱する。

 さて、これで財人はどうなるか。


 「ん?何だこれ??どうして俺が拘束されてるんだ??」

 「この感じは」

 「あ、朱里!!ちょうどよかった、助けてくれないか」


 この感じは、洗脳されてるわね。

 ウチが呪文を言っても、ゆるりが呪文を言っても、零が呪文を言っても、財人は洗脳状態に戻るのね。


 「よう財人……私の事分かるか?」

 「君は……えっと」

 「やっぱ洗脳されると忘れるっぽいなぁ。ほら、昨日のお前が残した音声だ」


 零はスマホを操作する。

 すると、スマホから財人の声が聞こえてきた。


 学園の謎を解くんだとか、絶対に洗脳に負けないとかそんな言葉。

 その言葉を数分聞いて、財人はまた正気に戻る。


 「よし……大丈夫だ。次、行ってくれ!!」



 「ハァ……ハァ……」

 「財人、アンタ本当に大丈夫なの??」

 「へーきだよ。ちょっと休憩さえすれば大丈夫だ」


 外はすっかり暗くなっていた。

 オレンジ色に染まった雲がウチ達を覗き込んでいる。


 「ま、これで全部のパターンは調べたな」

 「ふざけた口調で言ったりとか、合成音声に喋らせたりって必要だったの?」

 「当たり前だろ?」


 そのニンマリした顔で言うと説得力が無いわね。

 まぁ、零と財人のおかげで分かったことが一つある。


 「あの呪文は誰が唱えても発動するのね」


 ウチや零。

 果ては合成音声ソフトやAIで作った音声。


 どの媒体であっても、あの呪文を唱えるだけで財人は洗脳状態に戻った。


 あと、洗脳耐性を持っているウチ。

 そして部外者である零は洗脳されることは無かった。


 「つまりだ、この呪文に特別な魔力とかが込められてる訳じゃないって事だな」

 「でも……分かんないわね。なんで六華の皆はすぐに洗脳されたのに、零は何ともないんだろう?」


 零が洗脳耐性を持ってる??

 無いとは言い切れないけど……可能性は低いし。

 

 「思ったんだけど、そこまで複雑な問題でもないんじゃないか?」


 拘束から解放され、伸びをしている財人が声を上げる。


 「どういう事?」

 「いや、ちょっと前に買った同人誌……じゃ、無くて、漫画の話なんだが」


 言い換える必要あるのかしら?

 まぁ別にいいけど。


 「多分、この呪文はトリガーなんだよ」

 「トリガー?」

 「そう。多分本命の洗脳に仕組まれてるんだよ、この呪文を聞いたら洗脳状態に戻るって」


 あぁ、なるほど。

 『私がハイどうぞって言うと、貴方の指が動かなくなりますよ』みたいな感じね。


 「つまり本命は洗脳ループって事じゃないか」

 「じゃぁ零が呪文を聞いても何ともないのは」

 「そもそも話、洗脳ループに引っかかってないからだな」


 逆に言えば、学園内ならこの呪文を唱えただけで皆が洗脳状態に戻っちゃう。

 ますます、あの時のゆるりの余裕っぷりに説明がつくわね。


 「重要な情報ではあるけど……これじゃぁ結局本命の洗脳ループの謎まではつかめないわね」

 「まぁ焦んなよ。一日で何もかも分かるなんて都合の良い事はないって」

 

 零はエナドリを飲みながら、あるものをふらふらと見せつける。

 ウチのスマホだ。


 「もう使えるみたいだったから充電しておいた」

 「ありがとう零」


 よかった。

 あぁ、通知たまってるなぁ。


 家族からすっごく電話かかってるよ。

 昨日零が代わりに連絡してくれなかったら大事になってたわね。


 「って、あれ?」

 

 アプリの通知をかき分ける中、一つだけ見覚えの無いものがあった。

 ショートメールの通知?

 一体何だろう。

 

 差出人不明の音声ファイル?


 「まさか、詐欺とかじゃないでしょうね」


 ただ、なんか気になるわね。

 再生ボタンを押すだけなら……ウイルスとか入らないだろうし。


 『……ごめんなさい……朱里さん』

 「この声?!」

 


 ノイズが酷い。

 音質も最悪だ。


 でも、間違いない。

 これは……委員長の声だ。


 『これが烈火の………足掻き、です』

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