比奈野烈火の独白 前編
『委員長って真面目だよね』
『ね〜。あんな事言わなくて良かったのに』
私は真面目なことが好きだった。
真面目に生きていれば、親も先生も褒めてくれるますから。
『あの子、ちょっとうざいよね』
『なんか、先生に媚び売ってさぁ』
でも、年を重ねるたびに友達は私の事を嫌いになる。
正しい事をしているのは私なのに。
まるで、罪人の様に扱われてしまう。
学校をサボるなんて、言語道断だ。
でも、なんだかなぁ。
『烈火は……間違って無いのに』
ちょっとしんどいなぁ。
『いや、比奈野は間違ってないだろ?』
そんな私の前に、あなたは現れた。
『俺なんかさぁ、断るのが苦手で……小学生の時は学級委員を押し付けられたよ』
『え、えっと?』
『何が言いたいかていうと、俺も比奈野のきもちは分かるってことだ』
口下手で、あんまり成績も良くなくて。
『俺の好きな人の受け売りなんだけどさ、他人なんかウザいと思ったら心の中でボロクソに言っていいんだよ』
『でも、それは』
『比奈野だって、モヤモヤしてることあるだろ?それを吐き出さなきゃ、きっとしんどいだけだって』
アドバイスは過激だし。
他の女の言葉をそのまま使い回す。
そんな少しかっこ悪いあなたが、あの日どれだけ私の心を救ってくれたか。
『ありがとうございます。財人君』
あの日から、財人君は私の……烈火の光なんです。
◇
「ねぇしゅりち。もう分かったでしょ?」
「モモ、実、離して」
「まぁ、何だかんだ言ってるゆるりも最初は戸惑ったし分かるよ」
頭が、痛い。
自分の意識を保つので、精一杯。
「本当はさ、ゆるりだって待ってあげたいんだよ」
気を抜くと思考を持っていかれる。
財人君のハーレムを作らないとって気持ちが心の底から溢れ出る。
「でも、あんまり派手に動くと黒幕ちゃんが怒るからなぁ」
朱里さん。
そんな顔をしないでください。
「だからさ、早く諦めてよ。この学園を受け入れて、耐性を持ってるゆるりと二人で楽しく過ごそうよ」
烈火はもう、動けないんです。
頼れるのはもう、朱里さんしか居ない。
そのあなたが、絶望しきった顔なんてしないでください。
そんな顔を見てしまったら、烈火の心まで折れてしまいます。
『あなたも、諦めたら良い』
頭の中に響く。
烈火の声で、まるで烈火がそう思っていると錯覚させる様な声が頭に響く。
『あなたの愛は異常よ。まさに僕の恐れた、周りを破滅させる毒の様な愛だ』
朱里さんとゆるりさんが何かを言い合ってる。
烈火にはもう、その声すら聞こえない。
『大丈夫。僕とカストルムの力なら、君の愛の毒だけを抜き取れる』
毒?
烈火の愛には、そんなものは。
『嫉妬心って言い換えてもいい。君は健全な気持ちで、普通の恋を、財人と行えるの』
あぁ。
そうですね。
烈火も分かっていたんです。
自分の愛がいきすぎていることぐらい。
朱里さんにドン引きされなくても。
洗脳で諭されなくても。
『大丈夫。僕たちの洗脳に身を任せて』
もう、抗う力も湧いてこないです。
なんなら、このまま洗脳を受けてもいいのかも。
『そしたらすぐ。財人が六華のみんなを好きで、僕たちも仲良しな世界に戻れる』
財人君が。
そうか。
烈火を好きになってくれるんですね。
『零はさ。一緒にいると楽しいんだ』
『俺が部屋の掃除しないと汚ないのなんのって感じでさ』
あの、虚空零の事すら忘れて。
『俺が悩んでた時、いつも零がバカな事に誘ってくれてさ。それが嬉しかったんだ』
えぇ。
良い話ではあるのでしょう。
烈火にとって、虚空零は恋敵。
それは財人君が振られた今でも変わらないですよ。
洗脳で虚空零を財人君の心から消せるなら、烈火だって嫉妬する事は無いんです。
『だからさ、俺は零に憧れてるんだ。また誰かが困ってたら、くだらない事を言いながら助けてあげたい』
でも、そんな財人君はいらないです。
えぇ。
えぇ。
本当に腹立たしい事です。
でも、事実なんです。
「だって烈火に光をくれたのは、虚空零に影響を受けた財人君なんですから」
「委員長?」
「れっかち?まだ頑張ってたの?」
視界がはっきりする。
周りの声を認識できる。
「そうです。烈火は、烈火だけは今の財人君を認められないんです」
あぁ。
こんなに声を張り上げても、烈火は洗脳に抗えない。
悲しいです。
悔しいです。
「スタンガン?!まさか頭に??」
「ちょ、ちょちょやめときなよれっかち。そんなんので洗脳耐性はー」
でも、頭の中で響く雑音を取り除くぐらいなら!!
「ふぅ。少しだけ、すっきりしましたね」




