権利の話
「ゆるりとしゅりちはね、この学園で好き勝手出来る権利を得たも同然だってはなしだよぉ」
「私は仲間外れですか?」
「だってれっかちは洗脳耐性持ってないでしょ~」
じっと、ゆるりが見つめるのはウチの顔だ。
委員長の事なんか、初めから眼中に入っていないみたいに。
「今、学園はざいとっちを中心にしたハーレムが洗脳で作られてる。これはしゅりちも知ってるでしょ?」
「えぇ。嫌な程理解してるわよ」
一歩、前にでる。
ゆるりが委員長と話す気なさそうだし、ウチが矢面に立たないと。
大丈夫。
委員長なら、いざというときに動いてくれる。
「ところでさ、しゅりちはハーレムアニメとか見る?」
「見ないわよ。そっち方面詳しいのは実でしょ?」
「ふ~んそっか。じゃか、教えてあげるよぉ」
ゆるりがまたパソコンをいじる。
再生された動画は……アニメレビューの動画?
「ハーレムアニメってのはさ、主人公にとって都合の良い事が起こるの。もちろん程度はあるんだけどさ」
ゆるりが流した動画の声が耳に入る。
『展開が主人公に都合よすぎる』だの。
『羨ましい』だの。
『人生の勝ち組』だの。
『そもそも、彼女達同士が仲良しな設定に無理がある』だの。
「それがどうしたって言うのよ」
「いやぁ、簡単な話だよぉ」
ゆるりがカチカチとショート動画を流し続ける。
そのどれもがハーレムアニメのレビューだった。
褒めてる動画も、怒ってる動画もあったけど。
聞こえてくるのは大体同じ。
『羨ましい』か『都合がいい』だ。
「ハーレムアニメでは定番のご都合展開?主人公補正?まぁ、そういう流れっていうのがさ……この学園内でも起こってる現象なんだよ」
ポリポリとスナック菓子を食べながらゆるりはウチを見つめる。
出方を伺ってるのか、話すのが面倒になったのか。
「今更そんな事?学園の皆が財人の都合がいい様に動いてるなんて、何となく分かってたわよ」
「いいやぁ。しゅりちはこの事実のすっごい所を理解してないよ」
「なんですって?」
えぇっとなんてわざとらしい声を上げてゆるりはカバンを広げる。
そこから出てきたのは、小テスト。
「ゆるりはさ、ぶっちゃけ勉強なんかするの面倒だと思ってるんだよね」
「アンタの性格ならそうでしょうね」
「そ~。でもさぁ、小テストの前日に一言、『ざいとっち、勉強おしえて』って言えばこの問題は解決するの」
は?
何言ってんの??
あまりに話が飛躍しすぎて分かんない。
ゆるりは一体、何をウチに伝えようとしているの??
「さっきの話を思い出して、しゅりち」
「さっきの……ハーレムが都合が良いとかって話」
「そう、それだよ!!」
明らかにゆるりの声が大きくなった。
興奮してる?
「ざいとっちは洗脳学園ハーレムの主人公みたいなもんなの。だから、ざいとっちが勉強を教えた相手が赤点とっちゃうのは都合が悪い」
「は?」
「だから、洗脳の力で無理くり頭を良くする。たとえ相手がざいとっちの説明をこれっぽちも理解していなくても、家で全く勉強をしていなくてもね」
じゃぁ何?
ゆるりはどこかのタイミングで洗脳が解けて。
何かのきっかけでウチと同じ様な洗脳耐性を得て。
「これだけじゃないよ?勝負事はざいとっちのチームが勝つ。ざいとっちの趣味は全クラスメイトが一定の理解を得るし、ざいとっちの意見は即学校に適応される」
この狂った学園で過ごす中でその法則性に気づいたのよね?
ウチや委員長が洗脳ループの餌食になっているのを見てるのよね?
「洗脳って力の強制力でその結果になるようにみんなの行動パターンが変わるんだよ。まぁ、洗脳って脳をいじってるみたいだからさぁ、頭も良くできるみたいだし、ある程度なら技術的な事も覚えさせてくれる」
それを知ったうえでゆるりは、洗脳にあらがわなかった。
ウチや委員長、ハーレムの中心に居る財人でさえ洗脳で心の奥底を歪められているのを見て見ぬふりをして。
「普通の人なら、洗脳を受けた時点で理性も消し飛ぶ……でも、ゆるりとしゅりちは違う」
自分の利益の為だけに、この洗脳を利用してきたっていうの?
そんなの、そんなのって。
「ゆるり達は洗脳で頭が良くなっても、知らない技術を身に着けても、理性が残ったまま。リスク0で好き放題に学園生活を送ることが出来る」
許せない。
許せるはずがない。
「ねぇ、分かったでしょ? しゅりちはね、この学園を目一杯利用する権利があるんだよ」




