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学園潜入

 「おはよう委員長。今日もいい天気ね」

 「おはようございます朱里さん。今日も昨日と同じで良い天気です」


 月曜日。

 ウチと委員長は早速学園へ乗り込んだ。


 委員長、正気で居るときはわざと回りくどい言い回しをするって言ってた。

 さっきの会話でざわざわ『昨日と同じ』って言ってたのがサイン。


 ホームルームは洗脳ループの対象外なのは確認済み。

 委員長もイレギュラーなく正気。


 今の所問題は無いわ。

 気がかりがあるとすれば。


 「ねぇ縁欲君。この前さ、容疑王のカードが欲しいって言ってたじゃん。ウエハース買った?」

 「まだ買っては無いけど、どうしたんだよ(みのり)

 「カードは界隈が違うから興味ないんだけどさ、あまったウエハースは食べさせてもらえると嬉しいなって」


 財人。

 やっぱり、学園内では六華を名前呼びしてる。

 

 「(みのり)、あなたは本格的に食事制限しないといけないですわ!!」

 「天上さんは心配性だなぁ」

 「いってもなぁ……朝のホームルームで菓子パン食べながら言われても説得力ないぜ(みのり)

 「そうですわよ。わたくしも同じ放送部員として心配してるんですわ」


 (みのり)の口元についたパンくずを財人が拭いている。

 昨日……あれだけ泣いて振られた男がする行動じゃない。


 一体何が目的でアイツをハーレムの主にしてるのよ。

 昨日の財人の姿を思い出したら……現状に腹が立って仕方ないわね。


 「そう言えば朱里さん。一時間目は古典ですが、課題はやってきましたか?」

 「え、課題?やったわよ??」


 ポンと委員長が肩に手を置く。


 「なら、大丈夫です」


 その方に、ぎゅっと力が入ったような気がする。

 委員長の視線は、ウチを通して財人の方を見ていた。


 「ちゃんと課題をこなしているなら大丈夫です。私達は大丈夫ですから」

 「……そうね」


 励ましてくれてるのよね。

 そういえば、今までずっと学園では一人だった。


 でも、今日は委員長もいる。

 ちょっと心強いかも。


 「あらあら?珍しいわねぇ。二人が仲良くお話なんて」

 「げぇ、モモ」

 「嫌だわ朱里ちゃん。そんな事言われたら私傷ついちゃうわよぉ」

 「因みにゆるりも居るよ」


 こんな時に問題児がそろいもそろって。

 ゆるりは良いとして……モモの視線。

 委員長の方、見てるわね。


 やっぱり、洗脳されてる人間とされてない人間がモモには見抜けるんだ。 

 幸いな事は、モモの頭の中ではそれが体調不良に変換されてるっぽい事。


 モモが黒なら、今日何か仕掛けて来るかもしれない。 

 モモが白なら、きっと委員長にもおせっかいをかけると思う。


 今日一番の目的は洗脳ループの開始時間の特定だけどー


 「どうしたの?朱里ちゃん」 

 「なんでもないわよ」


 モモの事も気になる。

 少しだけ、気にしておこう。



 「委員長、さっき先生が呼んでたわよ」

 「分かりました。もう昼休み前ですけれど、お昼は先に食べて良いんでしょうか?」

 「先に来てほしそうだったわ」

 「なら、今から向かえば大丈夫でしょう。朱里さん、案内してください」


 委員長とアイコンタクトを取る。

 うん。 

 大丈夫。


 委員長はまだ正気だ。

 洗脳ループに陥ってない。


 「先生の用事が想像以上に早く終わって良かったです」

 「本当よねぇ。少なくとも、お昼ご飯前に終わって良かった」

 「えぇ……ごはんの後にあの作業はちょっとしんどいですからね」


 先生からの呼び出しなんて物はない。

 全部口実だ。


 委員長のおかげで分かったのは、午前中は洗脳ループが始まらない。

 特段、委員長が頭痛を訴える様子もなかった。


 なら……昼休みか掃除。

 この時間にループが始まってる。


 そう考えるしかない。


 『放送部が送ります。皆のラジオです』


 「もうラジオが流れる時間ね……早く教室に戻りましょ」

 「えぇ。朱里さんも空腹でしょうし」

 「ウチは大丈夫。委員長こそ、大丈夫なの?」

 「はい……烈火はまだ大丈夫です」


 ウチらにしか分からないやり取りをしながら廊下を歩く。

 まぁ、おなかもすいたしね。


 「財人……そんな事があったんですのね」 

 「縁欲君!!辛いときは美味しいものを食べましょう。私、いっぱい知ってますから!!」

 「我慢するのは偉いと思うわぁ。でも、周囲の人間を頼ってもいいのよぉ」


 ウチが異常を感じたのは、教室のドアを開けた瞬間だった。

 いつも以上に騒がしい教室。

 中心には……ぐすりと泣き始める財人の姿があった。

 

 「な、何これ?!」

 「財人君……一体何が」

 「あぁ、ざいとっち?昨日振られたんだって」


 放送部のラジオが流れる中、どんどんと騒がしくなっていく教室。

 その有様に困惑しているウチに声をかけたのは。


 「なんかさぁ。すっごいショックだったみたいでね、振られた記憶が無くなっちゃってたんだってさ」


 いつもと同じ、飄々とした顔のゆるりだった。

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