縁欲財人の独白
「すっかり、遅くなっちまったな」
零と別れてから、2時間がたった。
結構へこんでるよなぁ。
優から連絡来なかったら、ずっと公園に居たよ
『おにぃ。お母さんがご飯温めてるから、早く帰ってきなよ』
我ながら、優しい妹だと思う。
でもなぁ、振られて泣いて帰ったなんて……恥ずかしい。
せめて、涙の跡だけでも綺麗に拭いて。
「あれ?ざいとっちじゃん」
「え?」
「奇遇じゃん。み~んな大好き。ゆるりだよん」
黒川?!
よりにもよってクラスメイトに泣いてる所を?!
まずい。
何かごまかさないと。
「どしたん?こんな時間に」
「いや……ちょっと用事があってな。黒川は」
「う~ん。ゆるりはね、夜のおさんぽ」
相変わらずマイペースな。
何を考えてるのか分からん奴だな。
「それにしても大丈夫?」
「大丈夫って、何が?」
「泣いてたんでしょ?跡残ってるし」
あはは。
バレてら。
でもなぁ。
振られて泣いてましたなんて、クラスメイトにこそバレたくない。
「それに変だよ?」
「変?」
「ざいとっちはさぁ、いつも学園だとゆるりの事ゆるりって呼ぶでしょ?」
あれ?
そうだったか?
「しゅりちや、れっかちや、みのりっちにとうかっちにももち……皆の事、名前で呼んで仲良くしてたじゃん」
「そうだっけか?」
あれ?
俺達って、そんなに距離近かったっけ??
なんか、そうだったような?
そうじゃなかったような??
「そうだよ!!ざいとっちはゆるり達六華を統べる男なんだから」
「そ、そんな大げさな」
なんか、黒川のテンションおかしくない??
変なものでも食ったのか??
「ふ~ん。相当ショックな事があったんだねぇ」
「え、いやいやいや」
「隠さなくてもいいよぉ……まぁ、すぐに何があったか聞かせてもらうけどね」
本当に、どうしたんだ今日の黒川は?
なんか、いつもと雰囲気が。
「イヤ、イヤ、カストルム、フタグン」
「は?」
なんだ?
呪文……か?
黒川……も……中二病って奴なのか?
「イヤ、イヤ、カストルム、フタグン」
「あ、なんの、呪文……もしかして、ゆるり達の中で流行ってるとか?」
そう言えば……俺が何で泣いてるんだっけ?
分からない、記憶がぼんやりとしてる?
「イヤ、イヤ、ミ=ゴ。ミ=ゴ・カストルム、フタグン」
えぇっと……振られたんだっけか?
誰に?
頭が痛い?
思い出せない?
思い出せないなら……重要な記憶じゃないのか?
まぁ明日学園に居ればみんなが居る?
みんなって誰だ?
決まってる。
朱里が。
烈火が。
ゆるりが。
統香が。
実が。
モモが。
六華の皆が居る。
「もしも~し。ざいとっち、聞こえる?」
朱里が。
烈火が。
ゆるりが。
統香が。
実が。
モモが。
六華の皆が居る。
「あれ?やりすぎたかなぁ。ぶっちゃけ加減が分からないんだよねぇ」
朱里が。
烈火が。
ゆるりが。
統香が。
実が。
モモが。
六華の皆が居る。
「まぁいっか。明日になれば、洗脳ループでいつも通りになるだろうし」
朱里が。
烈火が。
ゆるりが。
統香が。
実が。
モモが。
六華の皆が居る。
「ねぇざいとっち。今日何があったか、ゆるりに教えて?」
「ふら……れた……好きだった……人に」
「なるほどねぇ。他に変わったことは?」
そう言えば……今日。
映画館に行ったとき。
「朱里と烈火を……見たような、気がする」
「へぇ……しゅりちとれっかちが、二人で映画ねぇ」
「暗躍は結構だが。その男に負担をかけるのは頂けないな」
「ん?ミーゴっちじゃん」
なんか、虫みたいなのが居る。
あれはなんだ?
まぁ、どうでも良いか。
「この男の性格まで捻じ曲げる訳にはいかんのでな」
「ハイハイ。以後きおつけるから、許してよ」
なんで、ゆるりと虫が話してるのか、分からない。
でも、良いや。
気にする事じゃ、多分ないから。




