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縁欲財人

 「二十歳をこえちゃうとさ。周りがうるさいんだよ」

 「俺みたいな年下に手を出すのは犯罪みたいな声?」

 「う~んそういうんじゃなくて……結婚とかが前提の恋愛になるっていうか」


 夕焼けが財人と虚空零(こくうれい)を刺している。

 ウチは二人の会話をただずっと、聞いていた。


 「大学入ったばっかの時にそれを実感してさ……しばらく恋愛はいいやってなってね」

 「そんな事、あるのか?」

 「あるんだよ。財人にはまだわかんないと思うけど」


 虚空零(こくうれい)の右手が、財人の頭をポンと撫でる。

 

 「財人は人として好きだよ。嫌いなわけじゃない」

 「……」

 「それに、私みたいな女はやめときなよ。一緒になったって、財人に迷惑しかかけないよ」


 こんな会話……部外者のウチらが聞くべきもんじゃない。

 財人が洗脳の黒幕かもしれないから。

 それを確かめない以上、学園で起こっている異変が解決しないから。


 そんな理由を掲げながら、ウチは今日のストーキングをある意味肯定してた。


 「学校にさ、良い女の子とか居ないの?」

 「そうだな……赤山って茶道部の子が居て、明るいし、美味しい抹茶作るんだ」


 でも、今更になって……財人が黒幕じゃないかもってなって。

 ウチは、自分のしてる行為に罪悪感を覚え始めた。


 「比奈野(ひなの)って子は委員長やってて、凄く頭が良くて……黒川ってマイペースな奴もいて」


 そもそも、もうこの問答が答えじゃない。

 学園内ではウチら六華の事をファーストネームで呼ぶ財人が、今は苗字で呼んでるのよ。


 「天上と北条は放送部やっててさ、学園内でお昼の放送が好評なんだよ。淡野っていう、周りを欲見てるやつもいる」


 「いいじゃん。いい子達ばっかりでさ」


 こんなの、財人も洗脳の被害者ですっていってるようなものじゃない。


 「でも、俺はそんなのどうでもよくなるぐらい……(れい)の事が好きなんだ」

 「……」

 「もし、世間体を気にしてるなら、大丈夫だ!!そのぐらい、俺が何とかする」


 でも、じゃぁあのハーレムは何なの?

 一体誰が、何の目的で。


 「だからー」

 「馬鹿だなぁ」


 財人に洗脳をかけてるの??


 「財人を振ったのは、私の我儘だよ」


 財人の頬に虚空零(こくうれい)がキスをする。


 「責任を負いたくないだけの、悪いお姉さんの、酷い我儘なんだ。それ以上もそれ以下も無いよ」

 「そっか……なら、しょうがねぇか!!」


 気持ちを押し殺して明るい声を上げる財人。

 あんな男に……どうして望んでもないハーレムを与える洗脳なんてかけてんのよ。


 「告白とは別にさ……また、俺と遊んでくれるか?」

 「それぐらいなら、もちろん」


 こんなの、あんまりじゃない。


 「それじゃ、またね」

 「うん……また」


 虚空零(こくうれい)が公園を出て行った。

 その背中を見ながら、財人は立ち尽くす。


 「朱里さん。これを見てもまだ、財人君が黒幕だと思いますか?」

 「でも……じゃぁ、あのハーレムは何なのよ」


 頭が追い付いてない。

 分かってるのよ。

 ここまでの事があって、それでも財人を疑うのは変だって事ぐらい。


 でも、すんなりと受け入れられない。

 あと少し。

 決定的な何かが欲しい。


 「まだだ……」

 「え?」

 

 ぽつりと……財人がつぶやく。

 まだって、何??


 「まだ……まだ、駄目だ」


 まさか……不意打ちで虚空零(こくうれい)に洗脳するつもりとか言うんじゃないでしょうね。

 ここまできてややこしい事しないでよ。

 まだって言うのは一体何がー


 「まだ、まだ泣いちゃだめだ」


 あぁ……なんて声上げて泣いてるのよ。

 さっき、一瞬でも疑ったウチがバカみたいじゃない。


 「今泣いたら、(れい)に聞こえちまうだろ」

 「……」

 「俺の泣き声で……(れい)の心を縛るわけにはいかないんだ」


 財人は違う。

 ここまで他人を思える奴が、あんなハーレムを作るわけがない。

 洗脳なんてするわけがない。


 「帰ろう、委員長」

 「見極めは、すみましたか?」

 「うん」


 財人、ごめん。

 ウチ、ずっとアンタを疑ってた。


 「委員長、絶対……絶対に学園の洗脳を止めるわよ。ウチらの為にも……財人の為にも」

 「えぇ。もちろん」


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