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色眼鏡

 「良かったわ。委員長がまだ正気で居てくれて」

 

 翌日。

 土曜日の早朝。


 「仮に洗脳状態に戻っていても問題なかったんですよ。私、土曜日はいつもここで勉強しているので」

 「こんな朝早くから?流石だね」


 ウチ達は問題なくカラオケ店前で集合完了。

 やっぱり、学園と関係ない所だと洗脳は働かないみたいね。


 「で、今日もカラオケで作戦会議?」

 「いえ。今日は私の家に来てもらいます」

 「委員長の家に?」

 「はい。財人さんについての情報を朱里さんに伝えようと思ってます」


 昨日言ってた財人に告白する予定があるってやつね。

 たしかに、ウチが財人について知ってることは少ない。

 

 財人は洗脳ハーレムの中心。

 アイツの事を知っておくに越したことは無いわ。



 「お茶を用意しました。好きな所でくつろいでください」

 「ありがと」


 まず一つ、委員長の部屋は普通だった。

 よかったぁぁ。

 これで財人の写真とかが壁一面に張られてたら恐怖でどうにかなる所だった。


 そうよね。 

 いくら委員長がとんでもないヤンデレでも、家まで変な事なんてありえない。

 アニメじゃないんだから。


 物が少なくてシンプル。

 ノートパソコン一台あるのは普通に羨ましいかも。


 「で、財人が大学生に告白するって話は本当なの?」

 「はい……結構前から計画を立てていたようで」


 なんで委員長はノーパソ開いたんだろ?

 まって。

 なんかアプリ開き始めた。

 ちょっと嫌な予感がする。


 「このパソコンには、財人君のカバンに仕込んだ盗聴器の音声データが残っています」

 「盗聴?!」

 「秘密ですよ……烈火が財人君のプライベートを覗き見てる事は」


 秘密も何も。

 えぇ……犯罪じゃん。


 でも、これが無いと財人の情報に迫れない。

 えぇい。

 ストーカーより洗脳の方が大事件。

 一旦ここは飲み込む。

 飲み込めウチ!!


 「財人君が思いを寄せているのは近所の大学生。名前は虚空零(こくうれい)と言うそうです」

 「ご近所さんって事は、小さい頃からの知り合いみたいな感じ?」

 「そうみたいですね……因みに、虚空零(こくうれい)の経歴を漁ったこともありますが、うちの学園には通っていないみたいですね」


 卒業生じゃないのね。

 だったら、(れい)って人は洗脳には関係なさそう。

 

 「烈火的には受け入れられない事ですが……財人君はかなり前から虚空零(こくうれい)に好意を持っていたみたいです」


 「それって、ウチの学園に入る前から?」


 「はい。何度もご家族の方、特に妹さんに『(れい)ちゃんはやめたら?』と声をかけられているのを聞いています」


 確かに……この話を聞くと財人への印象が変わるわね。

 ずっと昔から好きな人が居て、ぼちぼち告白する予定。


 そんな財人が態々学園なんて限られた空間でハーレムを作る必要は……あるの?


 『洗脳……財人 (ざいと)、アンタ一体何を』

 『大丈夫だよ、朱里さん。君もすぐ、元に戻れる』


 じゃぁあの時の財人の発言は何だったの?

 と言うか、動機の話をするなら財人以外に【財人中心のハーレム】を作る動機がある人が居るとも思えないし。


 「どういう事?」

 「烈火も朱里さんから洗脳の話を聞いた時に同じ事を思いました……今の学園は財人君にとって都合がよすぎる。財人君以外に、こんな洗脳をするメリットがある人物は居ないでしょう」

 

 「でも、委員長が盗聴で聞いた財人の発言とかみ合わない」

 「烈火は思います。この疑問をほったらかしにして学園に挑むのは危険です」


 そうね。

 特に土日は洗脳の恐怖におびえる必要が無い、いわばボーナス期間よ。


 この間に、出来る事はやっておいた方が良いわ。


 「でも、どうやってその疑問を晴らすの?」

 「朱里さんには今から、烈火と一緒に盗聴をします」

 

 はい????


 「なんでそうなるのよ!!!」 

 「ちゃんとした理由があるんです」

 「本当?!ウチは今、全然委員長の事を信用できないんだけど」


 真剣な表情で委員長が訴えてる。

 いや、でも、信用できない。

 よっぽどの理由が無きゃ納得しないわよウチは!!


 「烈火は財人君の事が好きです」

 「そりゃ、嫌と言うほど知ってますけど?」

 「そんな烈火だからこそ、財人君をひいき目で見てしまう」


 そう語った委員長の声は、少し弱々しかった。


 「烈火は今でも思ってます。財人君がこんなひどい洗脳するわけないって……でも、それは烈火の願望が混じった見方です」


 「委員長」


 「今の烈火が財人君をどれだけ観察しても、盗聴しても、きっと見過ごしてしまう点が出てきてしまいます。もし、本当に財人君がハーレム洗脳を行った黒幕なら……烈火の恋心は致命的な隙になります」


 思ったよりちゃんとした理由だった。

 そうよね。

 財人に告白の理由があるとか、近所の大学生が昔から好きだったとか以前に、好きな人が酷い事してるなんて考えたくもないに決まってる。


 委員長は、そのリスクをちゃんと理解してるんだ。

 凄いなぁ。


 ときどきドン引きする程怖い事しでかすけど、やっぱり委員長は冷静で頭が回る。

 最初の仲間になってくれたのが委員長で良かった。


 「言っとくけど、ウチは財人の事を厳しく見るよ?」

 「それでかまいません。烈火は最悪の事態があっても受け入れるつもりですから」


 そう言って、委員長がノーパソを操作する。

 ブーとノイズの音が鳴り。

 数秒後に財人の声がガビガビの音質で届いた。


 『明日の日曜日。俺は(れい)に告白する!!』

 『えぇぇぇ。おにぃやめときなって』


 「な?!」

 「は??????財人君??嘘ですよね???」


 想像以上の爆弾発言が響く。

 隣でシャーペンをバキッと折る委員長を横目に、ウチは初めての盗聴に臨むのだった。

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