比奈野 烈火
「そもそも、ずっと考えていたんです」
「な、何を」
「財人君にとって、六華は毒でしかない」
何でカバンまさぐってるの委員長。
一体何を取り出すつもりなの。
「財人君は今、大きな節目を迎えようとしているのに……六華の皆は何も知らない癖に女の顔で財人君に近づいて」
あれって、スタンガン?!
なんでそんなものが学園のカバンに??
「今からでも遅くありません。六華の皆を財人君から引き離す」
「ちょ、ちょっと待って」
「大丈夫ですよ朱里さん……貴方が二度と財人君に近づかないって約束してくれるなら、烈火は手を出しませんから」
そう言いながらスタンガンの電源入れてるじゃん。
今すっごいバチバチ音が鳴ってるんだけど。
「でも、少しはしつけをしないと」
「ひ、ひぃ?!」
「そこを動かないでくだ………あ、あぁ!!」
どうしたんだろう?
いきなり委員長が苦しんでる?
「烈火は……何を……皆で一緒に、財人君を支えなきゃいけないのに」
「え?」
「あぁぁぁぁあ。痛い……頭がぁぁぁぁ。烈火から離れろ!!烈火は、財人君さえいれば……違う、みんなと一緒に」
そうか。
委員長にかかっている洗脳は……独占欲を抑える洗脳なんだ。
根本はウチと一緒。
『財人を中心としたハーレムを受け入れる』洗脳だ。
ウチは財人が元々好きじゃなかったから、『財人の事が好きになる』側面が強く出てた。
委員長は財人を独り占めしたかったから、『他の女が財人とイチャイチャするのを受けいれる』洗脳になったんだ。
それが分かったなら、まだやりようはある。
「委員長……本当にウチを攻撃していいの?」
「何を……烈火は、烈火は……財人君の一番になるんです……その為に」
「ウチらは邪魔?」
「分かっているなら」
「でも、今のままじゃ委員長の願いは絶対に叶わないよ」
委員長の動きがとまる。
頭を抱えて、じっとウチを見つめている。
「委員長、自分が洗脳されてるってもう分かってるんでしょ?」
「……」
「学園にはこの洗脳をかけ続ける仕組みがある。たとえ委員長が今正気に戻っても、次の月曜日にはまた元通りだよ」
「元通り?」
「良いの??そうなったら委員長は、財人のハーレムを作る為に動くようになる」
「ハーレム??財人君に他の女が??」
「そうだよ。他でもない、委員長が他の女と財人の仲を取り持つようになる」
ウチがポスターで洗脳を解除できたのは、『洗脳されている自分』が嫌だったからよ。
なら、委員長にも同じことをすればいい。
きっと、委員長にとって一番嫌な事は……『財人が自分以外の女にデレデレしてる』事でしょ!!
「烈火は……今、困惑しています」
委員長がまたスタンガンを持ち始めた。
「朱里さん。貴方の主張は荒唐無稽すぎますよ」
「それはそうだけど、でもー」
「でも、烈火の頭の中で嫌な声が響いているのは確かです」
「え?」
「『財人君の為にハーレムを作ろう』だなんて……烈火の考えとしてはありえないにも程があります」
ガツンと音が鳴る。
委員長は、スタンガンを自分の頭にぶっ刺した。
「え、ちょ、大丈夫なの」
「……えぇ、おかげでかなりすっきりしました」
ふらふらと委員長が立ち上がる。
その目は、いつぞやにみた虚ろな目ではなく。
「色々聞きたい事があります……朱里さん、話してくれませんか?」
自我を持つ、委員長本人の目だった。




