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最強の眷属たちに囲まれて、まったりダンジョン運営してます~裏山ダンジョン、ときどき攻略者~  作者: Jasmin


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第47話 琥珀の九尾

朝食の席で切り出した。


「今日、召喚をやろうと思うんだ。」


ハヤテが箸を咥えたまま「おっ」と声を漏らした。


「蓄積魔力が500を超えた。貯金も合わせれば、かなりのコストは出せるから、そろそろ4人目を呼びたい。」


「かしこまりました、召喚するのであれば、夜間、攻略者の来訪がない時間帯でしょうか?」


「そうだな。夜にやろう。」


「了解っす!楽しみっす~!」


ハヤテが翼をぱさりと広げた。リンドヴルムは何も言わず、ただ小さく頷いた。



日が沈んだ。


攻略者たちが全員帰った後、居住エリアのリビングに集合した。情報端末のモニタには、各エリアの稼働状況が映し出されている。森エリア、物資補給エリア、火山エリア。全てのエリアに攻略者の反応はない。蓄積魔力は654まで増えていた。


「じゃ、始めるか。」


毎回この瞬間はテンションが上がる。


リビングの中央に立つ。目を閉じ、意識をダンジョンコアに向けた。脳裏に蓄積魔力の数値が浮かぶ。654。ここから500を召喚に充てる。さらに現金150万円。


ハヤテの時が約150万円相当で中位眷属。リンドヴルムの時が250万円で最上位――ただし弱体化状態。今回はそれを上回るコストだ。


意識を集中させた。


「幽世の導に従い来たれ、異郷の住人。」


魔力が体の底から引き抜かれるような脱力感。同時に、ダンジョンに蓄えた残高が脳裏で減っていく。


光が生まれた。


――琥珀色。


ユキの時は蒼白、ハヤテの時は翠、リンドヴルムの時は紫。今度は深い琥珀。光が渦を巻き、天井まで柱のように立ち上がる。熱はないが、空気が重くなる。魔力の密度が、部屋の中で急激に跳ね上がっているのが分かった。


ユキが一歩前に出た。ハヤテが緊張で強張る。リンドヴルムは腕を組んだまま動かない。


琥珀の光が収束していく。柱が人の形を取り始め、輪郭が浮かび上がった。


長い髪。狐の耳。そして――3本の、胴体ほどあろうかという大きな尾。


光が消えた頃、リビングの中央には女性が立っていた。


腰まで届く琥珀色の髪が、残った光の粒子を纏ってゆるく揺れている。頭頂部からは三角形の大きな獣耳が2つ。切れ長の瞳は金色に近い琥珀で、瞳孔がわずかに縦に細い。背後には琥珀色の毛並みの尾が3本、ゆったりと揺れていた。


纏う雰囲気や表情は柔らかくて、人懐こいのに、それでいてどこか掴めない。


(きっとまた、一筋縄では行かないんだろうな……。)


琥珀の瞳が、まず俺を捉え、次にユキを、ハヤテを、リンドヴルムを順に見た。その視線の動きは自然だが、観察しているようにも感じた。


そして、笑った。


「へぇ。なんだか、不思議な組み合わせだね。こんなに強い子ばっかり集めて、戦争でもするつもり?」


琥珀の瞳が俺に戻る。口元には笑みが浮かんでいるが、観察されていると感じた。


「――俺は鷹峰遥。一応人間で、ダンジョンマスターだ。名前、聞いていいか?」


「シノ、が発音しやすくていいかな。九尾だけど、今はご覧の通り三尾。ちょっと不本意な姿でごめんね?」


シノはそう言って、背後の3本の尾を軽く振った。これだけの面子を前に、その仕草には気負いがない。


「よろしくね。――で、この子たちが?」


シノの視線がユキに向いた。ユキは無表情のまま蒼い瞳でシノを見つめ返している。2人の間の空気が、張り詰めた。


だがシノはすぐに表情を崩した。


「エルフかな?すごいね、初めて見るかも。でもちょっと強すぎるような……?」


「私はユキと申します。エルダーエルフです。」


「ユキちゃん。よろしくね。」


ユキの目が微かに細くなった。「ちゃん」付けに反応したと思われるが、何も言わなかった。


ここでハヤテがバッと手を挙げた。


「自分、ハヤテっす!鷹獣人の――」


「あ、ホークアイでしょ?翼の形で分かるよ。元気な子だね。」


「おお、詳しいっすね!」


ハヤテは素直に感心している。シノはにこりと笑ってから、最後にリンドヴルムを見た。


リンドヴルムは腕を組んだまま、紫の瞳でシノを見据えていた。


「祖竜。」


シノが呟いた。笑顔は消えていないが、やはり驚きが勝るようだ。


「まさか祖竜がいるとは思わなかったなぁ。ユキちゃんもだけど、相当強いよね? 言い直すよ、戦争じゃなくて、世界を滅ぼすつもり? なんて。」


最後の言葉は俺に向けたものだった。リンドヴルムが小さく鼻を鳴らす。


「九尾か。今は三尾とはいえ、中々癖のあるやつじゃな。」


「あら、嬉しい。」


「……ふん。」


リンドヴルムはそれ以上何も言わなかった。シノはそれを見て、また笑った。


それから、うちのダンジョンの運営方針を話した後、シノにダンジョンを案内することにした。

シノはと言えば、これだけの戦力を集めておきながら「なるべく殺さない」という方針を聞いてポカンとした後、ツボに入ったのかしばらく笑っていたが、悪い気はしていないようだった。



ユキが先導し、俺がその横を歩く。ハヤテは上空を飛びながらついてきて、リンドヴルムは最後尾で無言でついてきた。シノは、俺の半歩後ろ。3本の尾が歩くたびにふわりと揺れている。


森エリアに入った時、シノは立ち止まった。


3本の尾が一斉にぴんと立った。鼻先がわずかに上を向き、すん、と空気を吸い込む。獣耳が左右にくるくると動いた。


「――へぇ。」


「人間の残り香がすごい。1日30人……いや、もうちょっと?」


「攻略者だよ、今日は16組だから、まぁそれくらいだな。」


「攻略者……か。ダンジョンって言ってたし、敵?いや、血の匂いが薄いね。」


シノの獣耳が片方だけ傾く。


「同じ人間が繰り返し来てる匂いがする。あんまり緊張している感じじゃないね。」


「九尾の鼻は、そこまで分かるのか。」


「まぁね。情報収集はうちの得意分野だから。」


シノは笑ってそう言った。森エリアの木々を見回しながら、獣耳だけが忙しなく動き続けている。地面の匂い、空気の流れ、木々に残った魔力の痕跡。それらを片端から拾い上げているようだった。


物資補給エリアでは棚の品揃えを見て「ポーション中心なんだ」と呟いていた。


案内を終えて居住エリアに戻った時、シノが口を開いた。


「ねぇ、1つ聞いていい?」


「何だ?」


「物資補給エリア、入口から森エリアを抜けた先にあるでしょ。攻略者が森エリアで体力を消耗してから補給エリアに着く導線になってる。なんで?」


「そうだな。消耗した攻略者が買ってくれれば嬉しいなって。」


「逆にした方がいいと思うな~。」


驚いた。いままで4人で運営してきて、ここは疑問に思ったことがなかったからだ。


「何でそう思う?」


「先に補給エリアを通らせて、ポーションや装備を万全にしてから森エリアに入ってもらう。そうすれば攻略者の滞在時間が延びる。体力が尽きて早々に帰る人が減るし、補給エリアの売上も上がる。あと、今の構成だと火山エリアと補給エリアを行き来して何度でもアタックできるでしょ?穴だらけだよ。」


俺は黙って聞いていた。確かにその通りだ。


来てまだ数時間なのに、攻略者の行動パターンを匂いだけで分析して導線の問題点を指摘している。


「それと、宿泊エリア。作れるなら、作った方がいいよ。」


「……これも一応、何でそう思うか教えてくれるか?」


「森エリアの匂いに、長距離を移動してきた人間のものが混じってた。汗の量と疲労の度合いから見て、不自然に疲弊してるよね。」


遠征組の存在を匂いだけで読み取ったのか。ダンジョンボードで確認していた情報と一致している。


「あ~そうなると、食堂エリアもだね。空腹で宿泊なんて、ダメだよね。」


「なるほど。ありがとう、参考にする。」


「ふふ。いつでも聞いてね。」


シノはひらひらと手を振った。


だが、俺はその様子を見ながら、妙な感覚を覚えていた。

言葉にしにくい。シノは的確で協力的なんだが、どこか引っかかるんだよな。


ただ――深追いするつもりはなかった。ユキもリンドヴルムも、最初から心を開いていたわけじゃないし、それでも、時間が経てば変わった。シノだって、そうなるかもしれないし、ならないかもしれない。どちらにしても、急ぐ必要はないよな。


「シノ。部屋を用意するから、今日はゆっくり休んでくれ。」


「ありがとう。助かるわ。」


シノはそう言って、琥珀の尾を揺らした。


――――

貯金残高:720,500円 / ダンジョン蓄積魔力:154

スキル:【剣術】Lv.5 / 【身体強化】Lv.5 / 【戦闘機動】Lv.3 / 【危機感知】Lv.3 / 【状態異常耐性】Lv.2

眷属:ユキ(エルダーエルフ)/ ハヤテ(鷹獣人)/ リンドヴルム(祖竜)/ シノ(九尾)★New!


【ダンジョン構成】

入口 → 森エリア(初級者向け/管理:ユキ&ハヤテ)→ 物資補給エリア → 火山・大空洞エリア(中・上級者向け/管理:リンドヴルム)→ 居住エリア → コアの小部屋

――――

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― 新着の感想 ―
ポーション買うだけで帰る奴も出そうだけどな
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