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最強の眷属たちに囲まれて、まったりダンジョン運営してます~裏山ダンジョン、ときどき攻略者~  作者: Jasmin


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第24話 パーティー結成

朝食の席で、ユキが新しい青いカップにお茶を注いでいた。昨日買ったものだ。気に入ってくれているようで、よかった。


「ご主人様、今日のご予定は?」


「午前中はダンジョンの管理を振り返ろうと思ってる。あとは……そうだな、やることがある。」


スマホを取り出し、ダンジョンボードのアプリを開いた。メッセージ機能に、ひかりからのDMが残っている。翠嶺洞で助けた新人の女の子。パーティーを組んで一緒に訓練しませんか、という申し出を「少し考えさせてくれ」と保留にしていた。


正直なところ、ひかりは真っ直ぐな子だったし、一緒に潜ること自体に問題はない。気がかりなのは、パーティー行動の経験が俺にほとんどないということだ。


むしろ今回の話は、俺が攻略者の常識を身に着けるために必要なことだと思う。


翠嶺洞には何十回と潜っている。だがいつも単独か、ハヤテとの2人組。他の攻略者と連携して動いたことはない。フォーメーションとか役割分担とか、そういう基本を俺は知らない。


まぁ、知らないなら学べばいい。ひかりは学校で基礎訓練を受けているらしいから、むしろ俺が教わる側だろう。


DMの入力欄を開いて、返事を打った。


『パーティーの件、ぜひお願いしたい。一緒に潜ろう。都合のいい日を教えてくれ』


送信。既読はまだつかない。朝だし、学校かもしれない。


スマホを置いて、朝食を片付けた後、ダンジョン全体のエリア配置に意識を向ける。


入口側から順に、森エリア、物資補給エリア、訓練エリア、居住エリア、そして最奥にコアの小部屋。攻略者が足を踏み入れるのは森エリアと物資補給エリアまでで、それより奥は管理区域として隠してある。


「ハヤテ、昨日の来客は3人だったか?」


「っす。3人とも森エリアで訓練して、帰りに物資補給エリアでポーション買って帰ったっす。奥に行こうとした人はいなかったっすよ。」


「最近はだいたいそのパターンだな。」


「っすね。みんな森で適度にモンスターと戦って、買い物して帰る感じっす。ご主人のダンジョン、攻略者にとっちゃ便利な訓練場兼ショップっすからね。」


攻略者の利用パターンが安定してきたのはいいことだ。口コミで少しずつ客が増えている。このペースなら、蓄積魔力も徐々に貯まっていくだろう。


「ユキ、ちょっと聞きたいんだが。」


居住エリアで洗い物をしていたユキが、手を止めてこちらに来た。


「はい、ご主人様。」


「訓練エリアのことなんだけど。」


森エリアと物資補給エリアの奥、管理区域の中にある訓練エリア。俺が個人的に素振りや打ち込み台での練習に使っているスペースだ。


「今ここは俺しか使ってないだろ。攻略者には開放してない。」


「はい。管理区域の中にありますので。」


「将来的に、このエリアを取り潰して別のものに作り替えたいと思ってる。」


ユキの蒼い瞳が少しだけ動いた。


「別のもの、とは?」


「例えば、森エリアみたいな他の眷属が管理するエリアとか。攻略者向けの新しい施設に変える。もちろん、そのためにはエリア拡張の魔力が要るし、管理する人手も要る。新しい眷属を召喚して、体制を整えてからの話だけどな。」


ユキは少し考えるような間を置いてから、静かに頷いた。


「合理的だと思います。訓練エリアの機能は、ご主人様が翠嶺洞で実戦を重ねている以上、以前ほどの必要性はありません。ダンジョンの成長を考えれば、攻略者向けの施設に転換する方が有益です。」


「だろ? まぁ、今の蓄積魔力が25だから、どっちにしてもまだまだ先の話だけど。」


「魔力の蓄積ペースは、攻略者の利用が増えれば加速します。焦る必要はないかと。」


「その通りだな。」


ハヤテが翼をばさりと広げた。


「新しい眷属っすか! どんなのが来るか楽しみっすね。」


「まだ先だって言ったろ。」


「分かってるっすよ。でもこう、仲間が増えるかもって思うとテンション上がるじゃないっすか。」


そう言って、ハヤテは翼で顔を扇ぎながら笑った。鷹獣人の翼は本来武器にもなるはずだが、こうしているとただの大きなうちわにしか見えない。


「ところで、森エリアの管理は今日も交代制でいいか。午前はハヤテ、午後はユキ。」


「了解っす。」


「かしこまりました。」


2人が同時に返事をした。森エリアはダンジョンの顔であり、攻略者が最初に足を踏み入れる場所だ。自動制御だけでは対応しきれない部分もあるから、ユキとハヤテが交代で管理している。


ユキの精霊魔法があれば森エリアの環境を細かく調整できるし、ハヤテの空中偵察で攻略者の動きも把握できる。2人の得意分野が違うから、交代制がうまく機能している。


頭の中で、ダンジョンの未来図をぼんやりと描く。


今は森エリアと物資補給エリアだけの小さなダンジョンだが、いずれは湯治エリアで疲れを癒し、食堂エリアで食事を取り、攻略エリアで実戦を積む、なんて未来図も思い描いている。攻略者がここに来れば、訓練から休息まで全部揃う。そういう場所にしたい。


そのためには魔力と金と、何より人手が要る。新しい眷属の召喚は避けて通れない。召喚のコストは眷属の格によって大きく変わる。ハヤテのときは蓄積魔力100と現金100万だった。上位の眷属ならもっとかかるだろう。


「ご主人様。」


ユキの声に顔を上げた。テーブルの上に、湯気の立つカップが置かれていた。ユキが淹れてくれたお茶だ。


「ありがとう。」


「……私も、ここが大きくなっていくのは嬉しいです。」


ユキがそう言って、自分の席に戻った。嬉しい、という言葉を自発的に口にするのは珍しい。昨日の外出以来、ほんの少しだけ、ユキの中で何かが変わったのかもしれない。


しばらくして、スマホが振動した。ダンジョンボードの通知。ひかりからの返信だ。


『本当ですか! ありがとうございます! 明後日の午前なら空いてます。協会の入口で待ち合わせでいいですか?』


文面からテンションの高さが伝わってくる。


『OK。明後日の午前、協会の入口で。よろしく頼む』


送信して、スマホを置いた。


明後日、初めてパーティーを組んでダンジョンに潜る。他の攻略者と連携して戦うのは初めてだ。ひかりは新人とはいえ、俺が知らない攻略者の常識をたくさん知っている。学べることは多いだろう。


「ご主人様、何か良いことがありましたか?」


ユキが、少し首を傾げてこちらを見ていた。


「明後日、パーティーを組んで潜ることになった。前に話した新人の攻略者と。」


「……そうですか。お気をつけて。」


「ありがとう。ハヤテ、明後日は俺一人で出るから、ユキとダンジョンの管理を頼む。」


「もちろんっす! 」


ハヤテが翼をバサバサ振って応えた。頼もしい限りだ。


ふと、ユキが棚の前に立っているのが目に入った。青いカップを棚に戻すところだった。丁寧に、元の位置に。


「ユキ、明後日は留守番になるが、大丈夫か。」


「もちろんです。お任せください。」


いつも通りの簡潔な返事。


明後日。パーティーで潜るのは初めてだ。どんな感じになるのか、正直少し楽しみだった。


――――

貯金残高:845,000円 / ダンジョン蓄積魔力:25

スキル:【剣術】Lv.4 / 【身体強化】Lv.3

眷属:ユキ(エルダーエルフ)/ ハヤテ(鷹獣人)

――――

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