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無能と追放された【鑑定士】、王国最強の軍師になる 〜見えない才能を切り捨てた者たちの末路〜  作者: 水無月レイ


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第34話 判断は救いではない

 解体は、静かに進んだ。


 家屋を壊し、使える木材をまとめる。

 畑を荒らさぬよう、土を整える。

 墓標の石は、一つずつ布で包まれた。


 終わるはずだった場所が、

 別の形で“終わり直して”いく。


 誰も騒がない。

 誰も笑わない。


 だが、俯いてもいない。


 レインは、丘の上からその様子を見ていた。


「……救った気はしないだろう」


 セレスが隣に立つ。


「ああ」


 即答だった。


「失ったものは戻らない」

「移住が成功する保証もない」


「それでも、彼らは動いた」


 レインは、集落を見下ろす。


「俺が救ったんじゃない」

「踏み込んだだけだ」


 セレスは、わずかに笑う。


「それを、判断と言う」


 やがて、ミレアが丘へ上がってきた。


 昨日までの代表の顔ではない。

 ただの一人の人間の顔だった。


「……出発は、三日後です」


「そうか」


「王都の許可は、すぐには下りないでしょう」

「でも、交渉します」


 諦めない、と言わない。

 ただ、やると決めている。


「あなたは、どうしますか」


 ミレアが、問いかける。


「ここで終わりですか」


 レインは、少し考えた。


「終わりじゃない」


「では?」


「次に行くだけだ」


 同じことの繰り返し。

 選び続けるだけ。


 ミレアは、静かに頷いた。


「……私、あなたを少し誤解していました」


「どんな風に」


「救う人だと」


 レインは、首を振る。


「違う」


「ええ。違いました」


 ミレアは、遠くの森を見る。


「あなたは、救わない」

「選ぶだけです」


 それが、どれだけ残酷かも、

 どれだけ誠実かも、もう知っている。


「判断は、救いではない」


 ミレアが、ぽつりと言う。


「でも、逃げないことは救いになる」


 レインは、言葉を返せなかった。


 それは、今まで誰も言わなかった定義だった。


 救えない。

 完璧でもない。

 間違えることもある。


 それでも、背を向けない。


 それが、彼の立場だ。


「……生き延びます」


 ミレアは、最後に言った。


「あなたに従うのではなく」

「私たちの判断として」


「ああ」


 レインは、頷いた。


「それでいい」


 風が吹く。


 集落の煙が、空へ昇る。


 終わりを選んだ場所が、

 もう一度、始まりを選び直した。


 レインは、背を向ける。


 彼の役目は、終わった。


 救ったわけではない。

 導いたわけでもない。


 ただ、踏み込んだ。


 それだけが、残る。


 次の火種は、もうどこかで燻っている。


 判断は、終わらない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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