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無能と追放された【鑑定士】、王国最強の軍師になる 〜見えない才能を切り捨てた者たちの末路〜  作者: 水無月レイ


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第26話 正しかった判断

 王都の中央庁舎、その最上階。


 円形の会議室では、再び同じ顔ぶれが揃っていた。ギルド幹部、監査局代表、王都治安局、そして――議長席に座る老貴族。


「……結論を出そう」


 低く、しかし重い声だった。


「例の傭兵団、そしてレイン・アルクスについてだ」


 資料が配られる。

 そこに並ぶのは、どれも“問題がない”報告だった。


・被害は最小限

・法令違反なし

・領主間衝突も回避

・民間人死傷者ゼロ


「見事な成果だな」


 治安局の男が言う。


「だが、功績として扱えない」


 監査局側が即座に返す。


「理由は?」


「判断の根拠が記録できない。再現性が証明できない」


 イオリス・フェルドは、席に座ったまま口を開いた。


「私は現場を見た。確かに、彼の判断は的確だ」


 数人が、意外そうに彼を見る。


「だが、それを制度に落とし込む術がない」


 淡々とした口調だった。


「再現できない成功は、個人に依存する。個人に依存する仕組みは、長期的に見て不安定だ」


 正論だった。

 誰も否定できない。


 老貴族が、ゆっくりと頷く。


「つまり?」


「我々が彼を排除した判断は、間違っていない」


 その言葉が、会議室に静かに落ちた。


 誰も反論しなかった。


 ギルド幹部の一人が、慎重に付け加える。


「レイン・アルクスは有能です。だが、組織に組み込めない」


「組み込めない存在を、中心に据えるわけにはいかない」


 治安局も同意する。


 イオリスは、わずかに視線を落とした。


「……ただし」


 全員の視線が、彼に集まる。


「彼がいなければ、救えなかった命が確かにある」


「それも事実だ」


 老貴族は、目を閉じた。


 しばらくの沈黙。


「――よろしい」


 やがて、結論が下される。


「レイン・アルクスは、王都の管理下には置かない」

「ギルドへの復帰も認めない」

「ただし、非公式協力者としての活動は黙認する」


 責任は、彼自身が負う。

 功績も、記録しない。


「それが、最も合理的だ」


 誰かが、そう締めくくった。


 会議は、それで終わった。


 誰もが理解していた。


 これは“排除”ではない。

 そして“受け入れ”でもない。


 **切り離し**だ。


 ―――――


 その頃。


 辺境の街道沿いで、レインは地図を畳んでいた。


「……決まったみたいだな」


 セレスが言う。


「ああ」


 レインは、空を見上げた。


「切り離された」


「後悔は?」


「ない」


 即答だった。


 カイルが、肩をすくめる。


「正しかった、ってことか?」


 レインは、少しだけ考えてから答えた。


「王都の判断は、正しい」


 二人が、驚いたようにこちらを見る。


「管理できないものを、中心に置けない。それは、組織として当然だ」


 だからこそ。


「俺も、間違っていない」


 レインは、静かに続ける。


「判断を、誰にも渡さない選択をした」


 風が、街道を吹き抜ける。


 英雄にはならない。

 肩書きもない。

 評価も、記録も残らない。


 それでも。


 判断が必要な場所には、必ず呼ばれる。


 正しかった判断と、

 救われた命だけが、静かに積み上がっていく。


 セレスが、微かに笑った。


「……世界は、少しずつ変わる」


「変わらなくてもいい」


 レインは答える。


「俺は、選び続けるだけだ」


 遠くで、次の火種が燻っている。

 次の判断が、待っている。


 これは、成り上がりの物語ではない。


 **判断を引き受け続ける者の物語だ。**


 第3章、完。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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