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異世界は選択の連続である[Re:]  作者: 八白
第一部二章 遺物三都
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3/ラーイウラ王城 -終 世継ぎの儀式

「首輪、取れましたよー!」


「もう、体が軽い軽い。まるで鳥になったかのようだ」


「……あ、ありがと、かたな! これで、どこへだって行ける。みやぎにだって!」


 プルの言葉に、頷く。


「ああ。絶対連れ帰ってやるから」


 ふと興味が湧いて、尋ねる。


「──ところで、首輪の解錠ってどうやったんだ?」


「案内された部屋に強力な魔力体がありまして、近付くと勝手に外れたんでし」


「へえー。あとで俺も行かないとな」


 王の間で行われる世継ぎの儀式。

 次期国王の従者は、儀式の後に首輪を外すこととなるらしい。


「──その」


 エリエに肩を借りたラングマイアが、恐る恐る俺たちに話し掛けた。

 戸惑うように、しかし微笑みながら。


「ありがとう、ございました」


 その首に、奴隷の首輪はない。

 ネルがウインクをする。


「職権濫用上等、ってね」


「……すみません。オレ、あんなことをしたのに」


「いいっていいって。俺にとって必要なことだったと思うからな」


「そう、ですか」


「エリエさんと幸せにやってくれ。俺は、それで満足だから」


「……はい」


 エリエが、やる気に満ち溢れた顔で言う。


「安心してください。今回みたいなことしないよう、ちゃんと捕まえておきます!」


「ああ、それがいい。そいつみたいなのは、放っておくとまたやらかすから」


 ラングマイアが苦笑する。


「お手柔らかに……」


 二人の様子を見て、プルが目を輝かせた。


「な、なんだか、すてきな関係……」


「プルさんとカタナさんも、さっきはすごかったでしよ。まるで打ち合わせしてたみたいに神剣を受け渡して!」


「そ、……そう? うへへへ……」


「あれはマジで助かったな。プル、改めてありがとう」


「うへ、へ、うへへへへ……」


 プルが首筋まで真っ赤になっていく。

 可愛いな、おい。


「ところで、何を話しておったのだ?」


「ジグが俺たちの元を離れた理由、とかな」


 ヘレジナは、遠い空の下のゼルセンに激怒すると思うけど。


「あ、それ知りたいでし!」


「……もう一度説明するのか?」


 ジグが溜め息をつく。


「それが責任ってやつよ」


 ネルの言葉に、ジグが辟易と呟いた。


「面倒なものだ」


 そんな会話を交わしていると、拡声術の声が玉座の間に轟いた。




「──次期国王、ネル=エル=ラライエ。並びにその従者、カタナ=ウドウ。世継ぎの儀式である。王の間へ来られよ」




 ラライエ四十二世は、とうの昔に退席している。

 今は王の間にいるのだろう。


「行きましょうか、カタナ」


 そう言って、ネルが立ち上がる。

 ヘレジナが尋ねた。


「世継ぎの儀式、か。私たちも見学していいものなのか?」


「ダメみたい。そもそも王の間へは、国王とその奴隷、世話係の側女しか入れないものらしいから」


「残念でし……」


「ところで、ネルよ。お前はどうするつもりなのだ。以前は国王になるつもりはないと言っておったが……」


「──…………」


 しばしの沈黙ののち、ネルが答えた。


「すこし、気が変わった。あたしが国王になって、奴隷制を廃することができるのなら、それはそれで頑張る価値があるのかなって」


「そうか」


 ジグが、他人事のように頷く。


「お前の決めた道だ。好きにしろ」


「……ジグは、ついてきてくれないの?」


「知るか」


「──…………」


「──……」


 沈黙に耐えかねたのか、ジグが眉をしかめて言った。


「……わかった、有事の護衛くらいはしてやる」


「ありがとう!」


「抱き着くな、鬱陶しい」


 アーラーヤが、にやにやと笑みを浮かべる。


「お、照れてんぞこいつ」


「照れるか、こんな小娘に」


「二十三なんですけどー!」


 ジグが、ネルの頭に手を乗せて、言った。


「──オレからすれば、お前はずっと小娘だよ。寝小便たれてる時から知ってんだから」


「は? たれてませんし」


「いいから行ってこい、ほら」


 ジグが、ネルをひょいと抱え、玉座のほうを向かせる。


「あ、おばか! 右腕くっついたばかりでしょ!」


「治った」


「治るかー!」


 二人の様子を見て、皆が笑う。

 さあ、あとはラライエ四十二世から事情を聞き出すだけだ。


「んじゃ、行くか。ネル」


「うん」


「皆、ちょいと待っててくれ。世継ぎの儀式が終わったら戻ってくるから」


「わ、わかった。気をつけて、……ね?」


「お話、あとで聞かせてくだし!」


「私たちはここで、軽食でもつまんでおる。急がずとも構わん」


 ヴェゼルが、軽く腕を組む。


「戻ってきたときには、ネルは国王か。ちょっと悔しいけど、仕方ない。コネクションを作れただけでもよしとしようかな」


「そういうとこ、したたかでいいと思うぜ」


「わかってるじゃん、アーラーヤ」


 俺とネルは、玉座の傍にいた側近に連れられて、ラーイウラ王城の最奥──王の間へと向かう。

 何が待っているのか。

 何が起こるのか。

 それは、まだ、わからない。

 でも、ネルのことは守り抜く。

 そう、心の中で誓った。

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