↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は選択の連続である[Re:]  作者: 八白
第一部七章 パレ・ハラドナ
325/332

4/ジランブ・モア -13 一対百

 折れた神剣を抜き放つ。


「いつでもいいぜ」


「ナラ、オレ様はすこし距離を取らせてもらうぜ。構わないだろ」


「好きにしろよ」


 マレウスと町民たちが俺から距離を取る。

 マレウスは、俺から二十メートルほど離れた位置に。

 町民たちは、円形の広場の円周に並ぶ。

 誤射で仲間を撃たないようにか、円の三分の一ほどの円弧を描くような陣形だ。

 マレウスが、俺に向かって魔力銃《マナガン》を構えた。


「コイツを一発撃つ。それが開始の合図だ」


「ああ」


 沈黙が帳を下ろす。

 誰も、何も言わなかった。

 ただ吹き抜ける風だけが、さやさやと葉擦れの音を響かせていた。

 そして、


 ──パシュッ。


 合図としては地味な音が、広場に響いた。

 神眼を発動する。

 1/12倍速の世界へ。

 マレウスの放った銃弾が、それなりの速度で襲い来る。

 だが、問題は、その一発ではない。


 ──パパシュパシュッパシュパパパパシュッ──


 百人全員が、俺一人へ向けて銃撃を行う。

 視線を向けることはしなかった。

 連射も含めて百発以上の銃弾を、まともに避けてはいられない。

 右手の人差し指と小指を立てる。


 ──キュボッ!


 耳慣れた音と共に、白き炎が刀身を成していく。

 俺は、白き神剣の火勢を上げると、自分の周囲を白炎で薙ぎ払った。

 魔力銃《マナガン》の銃弾は、圧縮された魔力《マナ》だ。

 魔力《マナ》は、燃える。

 白き炎を、銃弾は、貫通することができない。


 俺は、一瞬だけ目を閉じ、今度は火勢を最大にして頭上で爆裂させた。

 太陽と同じ6,000度の炎が間近で爆ぜたのだ。

 目眩まし程度には、なる。


 まず、厄介な町民たちから処理する。

 擬似フラッシュバンにより視界を奪われた町民たちに、白き炎の火勢を利用して一瞬で近付き、1/12倍速の世界で丁寧に魔力銃《マナガン》を無力化していく。

 無力化は容易だ。

 斬る必要すらない。

 魔力銃《マナガン》の銃口に、白き刀身を一瞬近付けるだけで事は済む。

 銃口が溶け、塞がり、銃弾を発射することができなくなるからだ。

 火傷はするだろうが、遠慮はしない。

 治癒術士が三人もいるのだから、それでいいだろう。

 魔力銃《マナガン》百丁の処理にかかったのは、十秒少々だ。

 最後の魔力銃《マナガン》を無力化した瞬間、白き神剣の刀身が掻き消えた。


 ──パシュッ。


 恐らく、俺が町民たちの端に来るのを待っていたのだろう。


 ──パシュッ、パシュッ。


 魔力銃《マナガン》が連射される音が耳に届いた。

 振り返る。

 マレウスが陣取っていたのは、円弧の反対側だ。

 百人分の固定砲台は、マレウス側に一方的に有利だったわけではない。

 俺が町民たちへ近付けば、マレウスは、誤射、あるいは俺が回避することを恐れて攻撃することができない。

 恐らく、百人もの人々を無力化する術があると思っていなかったのだろう。

 放たれた三発の銃弾を、折れた神剣で弾く。

 そして、俺は、円形広場の中央へと移動した。


 マレウスが広場の円周を駆けながら、俺に向かって魔力銃《マナガン》を連射する。

 狙いは見事だ。

 眉間、心臓、腹部、股間──すべて急所を狙っている。

 だが、それだけだ。

 魔力銃《マナガン》の弾速は、音速に遥かに届かない。

 銃弾の軌道を完全に把握できる俺からすれば、防ぎやすくすらある。


 ──キュボッ!


 俺は、神剣に、再び白き刀身を纏わせた。

 そして、マレウスへ向けて駆け出すと同時に、剣先を背後に向け、火勢を爆裂させる。

 亜人の身体能力を遥かに超える速度でマレウスへと肉薄すると、俺は、彼の膝を思いきり蹴り抜いた。

 マレウスの右足が、折れる。

 そして、それでも離さなかった魔力銃《マナガン》を、手の届かない場所まで蹴り飛ばした。


 神眼を切る。


「──ウッ、……ぐ、アア、ア……!」


「三人とも、怪我人に治癒術頼む! 特にマレウス!」


「は、……はあーい!」


「よしきた!」


 プルがマレウスへ、アーラーヤが町民たちの元へと駆けていく。


「──…………」


 駆け寄ってきたマナナが、目をまるくして俺を見つめていた。


「あー、悪い。白き神剣を使うと、全身軽く火傷するんでな。治癒術、頼めるか?」


「あ、ああ。わかったよ!」


 マナナが俺に手を翳すと、手から治癒術の淡い光が溢れた。

 プルやアーラーヤのように即座に治癒するわけではないが、白き神剣の火傷は軽傷だ。

 徒弟級第一位の腕前でも十分過ぎた。

 マナナが、興奮気味に言う。


「す、……ッごいねえ、カタナ! すごいのは知ってたけど、頭でわかってんのと目で見るのとではぜんぜん違うよ。まいったね、こりゃ」


「すこしは安心できたか?」


 くすりと微笑み、マナナが頷く。


「……うん!」


 やがて、俺とマレウスの治療が終わる。

 マレウスが服を払いながら、ぐちぐちと口を開いた。


「チッ、まるで勝負にならねえ。ベアハウル、よくこんなバケモン連れてきたナ」


「すまんの、マレウス。カタナくんの強さが、ワシらの理解の及ばん領域だとは思っておらんかった。逆説的に、あの話は真実だったことになるの」


「信じてもらえました?」


「信じざるを得ないのう……」


「うっし」


 軽くガッツポーズを取る。


「──…………」


 ベアハウルが、屋敷へと視線を向ける。

 そこには、驚愕の表情でこちらを見つめるクロケーがいた。


「……ところで、クロケーについて頼みがあるんだがの」


「はい」


 俺が頷くと、ベアハウルが、真剣な目で話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。