9件目【追放業ってなに?】
これは俺たちが追放業を始めた…というか、任命された時の話。
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「お主ら、冒険者を追放するための冒険者パーティを組んでくれ」
「…はい?」
ソロで活動していた俺たち3人は、街を守る衛兵から個別に手紙を受け取り、同じ場所、同じ日時に集められた。集まった場所は国王への謁見の間、なにをやらかしたか記憶を辿りながらビクビクして王が話し出すのを待っていたら、突拍子もない話が飛び出してきた。
「ほっほ、何を言われているか分からんという顔じゃな。順を追って説明しよう、君達はパーティを追放されたものが力に目覚める、という噂を聞いたことはあるかな?」
「まあうん、多少は…」
「でもそれって単なる噂じゃないの?元々弱かったスキルが追放されただけで強くなるなんて御伽噺でしょ」
「それがそうでもないんじゃよ。実は定期的に酒場に家臣を忍び込ませて視察を行っているのじゃが、ちょうど人前で冒険者を追放しているパーティがあったらしくな? 可哀想にと着いて行ってみると、突然街の一角を破壊するほどの水球を出しよったというんじゃ。
慌てて追放したパーティの元に戻り話を聞くと、なんでもスキルは『水操作』。珍しいスキルではあるが、体内の水分を操ることしかできないハズレスキルだったそうなんじゃが、何故か追放された瞬間、大気中の水分まで操れるようになったらしい。
報告を受けたワシはその後も経過観察をするよう命令しその後の様子も確認させたのじゃが、モンスターや動物、確認していないがおそらく人も、種族問わず体内の血液の循環を狂わせ死に至らしめる凶悪スキルになっとったらしい。怖いの〜」
「…マジです?」
「マジなんじゃよ」
「にわかには信じがたい話ですが、実際に起こる現象ならば、それを意図的に誘発させることも可能なはず…というわけですね?」
「そうじゃ、ドニルくん。我々はそうやって強化されたスキルのことを、転生冒険者の言葉を借り、『チートスキル』と呼ぶことにした。君たちにはハズレスキルの持ち主を意図的に追放し、『チートスキル』を発現させるためのパーティを組んでもらいたい」
「何で俺たちなんだ? 俺たちはフリーのソロ冒険者だ、元々完成されたパーティに頼めば良いんじゃ?」
「元々パーティだった者たちは仲間意識が強い、新しいメンバーを入れること自体も本来、メンバー内で協議を重ねて考えることじゃ。それに何度もメンバーを追放するというのは精神的に負担がかかり、最悪パーティ自体に不和が生まれ解散しかねない。それは避けたいところじゃ」
「だから、元々仲間意識の薄いソロの俺たちを寄せ集めてパーティを組む、と」
「そうじゃ。それにお主らソロ冒険者は1人で活動するため、さまざまな技能を修めておるじゃろ? 特にサポーターのドニル君、君は特殊じゃと聞いておる。何でもさまざまなパーティに臨時で入っては抜けを繰り返しているそうな」
「ええまあ、サポーターが1人で気楽に活動するならそれくらいしか方法がないもので」
「その豊富な実務経験とモンスターやサポートアイテムについての知識、新しく入ったメンバーと潤滑な連携を可能にする意思疎通能力。まさしく今回のパーティに相応しい。なにしろ、追放する冒険者には劣等感を覚えて貰わなければいけんからな」
「劣等感?」
「前に一度、覚醒した冒険者に話を聞くため呼び出したことがあったのじゃが、なんでも『見返してやりたい』という気持ちで発現したらしい。本人もよくわかっていなかったようじゃが、精神面が大きく関わっているようなのじゃ。
そこで、前衛として【ソロでダンジョン踏破を成し遂げた】ギルくん、後衛として【史上最年少、16歳で上級魔法を扱う才女】ラドナくん、サポーターとして【一人でサポートを完結させる知識と経験の宝庫】ドニルくん。しかも全員が最高ランクのSランク冒険者じゃ。この優秀な3人に劣等感を覚え追放されることで、『チートスキル』を発現させる…ということじゃ」
「話はわかったが、そんなことして国に何のメリットがあるんだ? 反乱分子になるかもしれないだろう」
「君たちはダンジョン内で得た報酬をどうしている?」
「そりゃ、ギルドに持っていって手数料引かれた上で買い取ってもらうけど」
「その手数料、ギルドだけじゃなく国にも支払っとるんじゃよ」
「え? そうなの?」
「そうですよ、冒険者登録した時に話されたでしょう?」
「覚えてねぇ〜…」
「ギルド、国、本人で割合は1.5対1.5対7ほど貰っておる。いつもありがとうのぅ」
「…まあギルド以外に売ると違法になって捕まるから良いか。つまり、『チートスキル』に覚醒した冒険者が高難易度のダンジョンを踏破することで、レアなドロップアイテムを買い取って利益を出したいってことな」
「そのとおり、反乱分子になってしまう可能性もあるが…ワシには優秀な臣下がおるものでな、詳細は言えぬが心配は要らぬよ」
「なるほど…で、肝心の報酬は? 金だけならダンジョン攻略で充分稼げてるんだ、やる気が出るものを用意してくれてるんだろうな?」
「勿論、一年の契約を完遂してくれた暁には報酬を用意してある。まずギル君にはこれを」
「なんだ…? !! こ、これは…!」
「伝説の秘剣、『キャルバリバ』。契約満了の暁にはこれを贈呈しよう」
「やるやる! 絶対やります! 他2人が断っても俺だけはやりますよ! なにせ世界に5本しかない秘剣の一角、キャルバリバが手に入るってんだから!」
「ちょっと、何私たちがやらない前提みたいに話してんのよ。私には?まともなもの用意してるんでしょうね」
「ラドナくんには、かの大賢者が記したとされる失われた魔道教本…写本ではあるが、これを差し上げよう」
「やるやる! 絶対やるわ! 現存しない大量の魔法が記されていると言われる伝説の書物でしょ!? どうやって手に入れたのよ!」
「それは秘密じゃ。そして最後、ドニルくんには…」
「僕を物で釣ろうとしても無駄ですよ。僕にはやるべきことがあるんです、金や物のために冒険者してるんじゃな…い…」
国王が手に持った鏡の蓋を開くと、楽しそうに談笑する2人の男女が鏡に映る。40か50代か、一見して普通の中年夫婦にしか見えないその2人を見て、ドニルは膝から崩れ落ちる。
「ドニル君には、離れ離れになった家族の居場所と、契約期間内の安全を」
「え…? な、なん…母さ、父さん…? どうして、何処に…」
「君が幼少の頃、金がなく一家もろとも行き倒れになるところを両親が奴隷に落ち、その金で生きながらえてきたのじゃろう? 安心せい、2人ともちゃんと生きておる。命を受けなかったからと何かするわけでもない。ただ、契約を満了すれば2人を奴隷から解放し、一家を引き合わせる事を約束しよう」
「…は、はは。ずるい、ずるいですよ…こんなの、受けるしかないじゃないですか…。色んなパーティに聞き回っても情報なんて一つも出てこなかったのに、何処にいたんだよ、馬鹿…!」
「…なぁラドナとやら。なんか俺たちと比べて、あいつだけ理由が重くて俺たちが物欲に塗れた卑しい奴らに見えないか?」
「言うんじゃないわよ、ちょっと気にしてたんだから。でも別に、理由に偉いもクソもないでしょ、全員利害が一致したんだからそれだけで良いわ」
「おお、さすが最年少上級魔法使い様。クールでかっこいいね〜」
「ぶっ飛ばすわよ」
「では、全員受けてくれるということで良いかの?では契約の1年間、追放業をよろしく頼むぞ。細かい契約内容は後日追って連絡する、その際契約書も手配するので書面にサインをしてくれ。それと…」
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細かいことはドニルに丸投げしたが、大体はこんな感じ。
国が指定した冒険者、指定がなければ自分たちで探し出したハズレスキル持ちの冒険者を自分たちのパーティに勧誘し、十日経ったら追放する。追放する当日までには国王に通信水晶で連絡を送り、その後の動向を見守る兵を手配してもらう。その後のことは国に任せて、俺たちは新しいメンバーを追加しに行く…この繰り返し。
正直俺たちも半信半疑で始めたし、一人目を追放した時には相当心が痛んだ。だが後日国から受け取った連絡で、追放した冒険者が能力に覚醒し、今は一人で森に籠り能力を試しているという話を知ったので見に行ってみると、本当にパーティに入っていた時とは別次元の能力に覚醒しているではないか。この時初めて、この活動が意味のあることだと実感できた。
新しいメンバーを入れては追放する、なんて事を繰り返していれば、普通のパーティなら評判ダダ下がりで新しいメンバーも入って来なくなるだろう。
だが俺たちは元々ソロ活動で有名になった3人、各地でパーティではないと触れ回っているのもあり、俺たちがパーティを組んでいると思っているのはごく少数だけだ。一緒にいる人間が減ろうと、前と変わっていようと、周りから見ればただの友人付き合いにしか見えない。それもあって、思ったより順調にこなせている。
1年間続けるにあたって問題は山ほど出てくるだろうが、今のところ特にまずいことも起きてないし、これからも国からのお仕事頑張ろう。
【補足情報】
通信水晶というのは、水晶が発する特殊な振動を周波数として増幅して、離れた場所でも通信を可能にする特殊な道具です。映像を映し出し、そしてそれを記録することができるので、文字を書いてそれを水晶に映すことで連絡を取ってます。
ギルは周りから見てパーティに見えないと思ってますが、流石に長期間ソロ冒険者だったはずの奴らが行動を共にしてるので違和感を持たれてるというか、普通にバレてます。
酒場などで「パーティじゃねーよ」と言い回るのも、ツンデレ女子の「あんたのことなんか好きじゃないんだからね!」みたいなニュアンスに取られてます。周りも「嘘つけよ」とか言いますが、ギルはバレてないと思ってます。鈍感系。
では何故メンバーがギルは他の冒険者がピンチの時絶対助けに入るで有名なのでギルの性格的に他人を陥れることはしないと信頼されてるし、なんなら後進育成に力入れてんなぁくらいに思われてるからです。




