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異世界追放業  作者: なきり。


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10/13

10件目【お休み欲しいです】

 話は戻って、『圧縮』スキル持ちの冒険者サクマを追放した後。宿でベッドに倒れ込みながら疲れを癒す俺と、椅子に座って何かをいじる2人。


「にしてもサクマの『圧縮』…。 使い方によっては普通に強くね? 悪く言うつもりはないが、流石にスキルを理解しようとする姿勢が低すぎる」


 ため息をつきながら2人に話を振る、これまで7、8人ほど追放してきたが、誰が使っても弱そうな明らかハズレスキルと、本人の認識が甘く本来の力を発揮できていないにも関わらずハズレだと本人が宣っているだけのスキルの二つのパターンがある。今回は完全に後者だ。


「そうですね、圧縮した武器を隠し持っておいて解除、何もないように見えるところから武器を出すことで相手の予想外の攻撃を入れたり、目眩し用に何か軽い大きなもの、毛布なんかでも良いですが圧縮して持っておけば、相手に投げつけて圧縮を解除することで相手の視界を一瞬潰したりもできる。やりようはいくらでもあった気がします。まあ1番の問題点は決め手の無さですが」


「能力の応用については一緒に行動してる時に全部言えないのがキッツイわよね〜。アレでしょ? もし私たちに復讐しにきた時のためにあんま余計な事言うなって言われてんでしょ? にしても生き残りたいなら自分の能力で出来ることの幅くらい自分で理解するべきだけどね。で、今回はどうなると思う?私は圧縮したものが質量まで小さくなるに一票」


 サクマに対して思い思いのことを口にしていると、ラドナが突拍子もない事を言い出す。が、これも恒例行事のひとつだ。これは追放した後に3人の中で行う賭けで、後日兵士からどんなスキルに目覚めたか伝えられて確定するまでに、覚醒したらどうなるかを予想する、というものだ。結果が発表されたら、予想が当たった奴のその日の宿代を他2人で割り勘する。


「僕は圧縮できるものの定義が広がって、大気やモンスターを圧縮できるようになると思います」


「俺は大穴で、実はスキルが圧縮じゃなかったに賭ける。空間を捻じ曲げる能力でしたー、とか」


「ああ、前に一人居たわね。何故か聖女がスキルを正確に伝えられてなくてスキルの名称から違うの。なんだっけ、草育てる奴」


「『植物成長』だと思ってたら『万物成長』だった方でしたかね」


「「そう、それ」」


 正解を導いたドニルに指を刺しながら、同調する声が重なる俺とラドナ。

 15歳になった際教会に連れられ、聖女からスキルを鑑定してもらう準成人式。18歳で行う成人式が独り立ちを意味するなら、準成人式は親の手の掛からなくなる一人前を示すイベントだ。スキルに沿った職を目指すか、向いていなくても自分が行きたい道を行くかを成人までに考える大事なイベントなのだが…


「まず『植物成長』でどうやって冒険者になろうと思ったんだよ、それで戦えると思ったのか? 農民になれば大活躍の大当たりスキルだろ。なんで適性があって安全に金を稼げる農民を捨てて、適性がない上命の危険がある冒険者になるんだ。なんか目的あるって言ってたか?」


「ないでしょ、今まで目的があって冒険者になった方がいた事ないわよ」


「そうだよな、頭が痛くなってくる…」


 普通冒険者になるやつなんてやむを得ない理由がある、もしくは一攫千金を夢見てギャンブルとして志すやつしかいない。実際のところ高ランクのモンスターを倒せる実力がないとただの命懸け日雇い労働なのだが。

 俺は冒険者向きのスキルで、剣術道場をするような金も知名度もなかったから仕方なく、ラドナは元々魔法が好きで勉強していたところ『魔力効率』を授かったため研究も兼ねて、ドニルは両親を探すため、戦闘の適性はないがサポーターとして研鑽を積んで、手段として冒険者を選んだ。

 だが追放する奴らの話を聞いてもなぜか目的を話しやしないのだ、元々無いのか恥ずかしいのか。どちらにせよ、命をかけたやり取りをする冒険者という職を舐めているのか?


「ま、そういう意味ではやりがいある仕事だけどな」


「急に何よ」


「俺たちが追放してるのって、大体が目的意識のない新人だろ? 強い意志もなく冒険者になってスキルも弱いってんじゃ生き残るのは難しいからな、間接的に命を助けてる様な気がして悪くない。10日かそこらしか関わらないとはいえ、冒険者のイロハを教えたり、話したりしていく中でちょっとは人となりを知っちまうからな。関わった事ある奴が死ぬのは、何度経験しても気分が悪い」


「ああ、ソロでやってる理由もそれだったかしら? パーティメンバーが死んでいくのに耐えられなくなって一匹狼になったとか言ってたわね」


「正直お前らと組むかどうかも悩んだけどな。でも、初めの1ヶ月にパーティの練度を高めるお試し期間あったろ? あそこでこいつらなら死なねぇなって思ったんだよ」


「まだアレが終わってから3ヶ月、王様から命を受けて4ヶ月ですもんね、なんだか相当昔に感じます」


「毎日が濃過ぎるからね。初対面の相手とパーティを組んで数日で追放して、また新しいメンバーを入れての繰り返し。実質足枷を常に抱えながらダンジョン攻略の毎日だし、結構削られるわ」


「…そうだな、今日は追放したことだし、明日まで休みにするか。今が昼頃だから明日の朝まで半日ちょっとだが、こんくらいは許されるだろ。そもそもいつまでに何人とか決まってないしな」


「確かに…そういえば僕たち休み取ってなかったですね。冒険者やってると日時の感覚が狂うと言われますが、自分で働くか休むか決められるせいで休みの概念まで狂ってたのか」


「なんなら3日くらい休んでもバチ当たらないと思うんだけど。久しぶりに1人でダンジョン潜りたいし」


「ドニル、休みに関してなんか言われてねぇの?」


「ちょっと待ってくださいね、何か書かれてた様な…こっちか? いや、規則に関する事だからあっちの方に…ギル、この束から探してもらえますか?僕は別の場所を探します」


「多っ!? 初めて見たけどなんだこれ! そこらの本より分厚いぞ!?」


 ドニルが本を入れるための型から取り出した紙の束は規格外の量で、改めて国から直々に任された仕事という重みと、それを一身に背負わせてしまっている罪悪感を感じる。しかも俺に渡されたのはドニルが持つ束の10分の1にも満たない量で、普段の負担の大きさを表している様で心が痛い。


「…ごめんな、ドニル。ほら、ラドナも」


「はぁ? なんで私も…いや、ごめんドニル。というかありがとう、いつも」


 ラドナは自分は関係ないと言いたそうな顔をしていたが、普段から飯も洗濯も、野営の際の拠点作りも火起こしも、もちろん戦闘中のサポートも任せている事が頭を巡ったらしく素直に感謝を述べる。これは転生者が言うところの『つんでれ』になるのだろうか? いや、ラドナは結構素直だからその定義には当てはまらないか。

 俺たちの謝意と感謝を受けるドニルは不思議そうな顔で、


「何ですか急に。これが僕の仕事ですのでお気になさらず。…っと、これですかね」


 ドニルはそう言うと、大量の紙束の中から一枚の紙を取り上げる。上から下まで凄まじい速度で目を走らせると、小さく「あっ」と声を上げ、


「…すみません2人とも、ちゃんと書いてました。『予定通り同行者の追放が完了した場合、翌1日の休日を設ける事を許可する』らしいです。完全に失念してました、申し訳ない」


「あ、そうだったのか。いや普通に目を通してない俺たちが悪いし謝るなよ、この紙の量目の当たりにして、全部覚えてないとかふざけんななんて言えねぇよ」


「そうよ、今分かっただけ良いとしましょ」


「2人とも…やっぱり追放の時と全然性格違いますよね。特にギル。僕は自分の黒い部分を出してる感じですけど、2人は完全に別人って感じします」


「よせやい、照れるだろ。ともかくその文言を見るに、明日丸一日休みにして良いっぽいな」


「じゃあ明日は私1人でダンジョン潜るから、明日に備えて準備してくるわね」


「僕もサポートアイテム買い足したいので今日は外に行きますね。あ、2人とも8時までには帰ってきてくださいね。今日も僕がご飯作るので」


「マジ?宿屋の飯の5倍は美味いからな、何作るか楽しみだわ。こっちの部屋で食うからラドナも時間になったら部屋来いよ」


「了解。いつも私だけ別部屋で宿賃高くて、賭けの時に多く払わせて悪いわね」


「今更だな、パーティとはいえ分別は必要だろ? とりあえず俺も外出るから、8時に俺たちの部屋集合で。それじゃ解散」


 そうして俺たちの、各々の休日が始まった。

【補足情報】

 聖女がスキルを鑑定、実際はその場で付与している準成人式ですが、本来は女神が行うところを聖女に丸投げしてます。この世界の住人にあげるスキル一覧あげるから適当に付与しといて、じゃ。みたいな感じで、自分は転生者にスキルあげる仕事してます。なんなら転生者にスキル上げるのは趣味なので仕事何もしてません。ゴミ女神。


 この世界では金貨一枚が10000円、銀貨で1000円、銅貨で100円と言う感じで取引されてます。100円以下の端数は店にくれてやります。というか、売買において下二桁が吹き飛んで0に固定されてるので、最低100円からって感じです。大味ですね。


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