表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
最終章 荒廃した碧砂国を潤すもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/91

001 約束

 瑠麗(リウリー)は、詳しい話は泰然(タイラン)様から聞いた方がいいと言って、彼を呼びに行った。 


 そして、泰然(タイラン)様が今の状況を説明してくれた。


 昨夜、慧王殿下の元に届いた書簡には碧砂(ビーシャ)国の皇宮での出来事が書かれていた。

 慧王殿下の配下の者は皇宮にも潜伏しているらしく、その方からの知らせだという。


 どうやら、皇宮で疫病が発生したそうなのだ。


 碧砂(ビーシャ)国に訪れていた旅の一座が都を訪れた際、倒れた舞姫の為に、皇帝陛下は、彼らを皇宮に招いたそうだ。

 そして皇后の宮殿で芸を披露している時に、一座の一人が疫病で倒れたという。


 皇后は、自らの危険を顧みず、旅の一座を自分が住まう宮内に一人ずつ部屋を与えて隔離し、太医を遣わし治療させたという。

 その後も三人ほど発病し、皇后の宮内の女官も数名が発病した。発病した者は、高熱と発疹の末、帰らぬ人となったそうだ。


 皇宮で疫病が発生したことから、おそらく慧王殿下が碧砂(ビーシャ)国へ行くことを、雲龍(ユンロン)国の皇帝は許さないはずとのことで、早朝から慧王殿下は判断を仰ぐために皇帝陛下に会いに行き、まだ戻らないそうだ。


 兄の仁峰(レンフォン)は、いつでもここを立てるように準備を済ませて待機中だという。

 そう話してくれた泰然(タイラン)様も、出立の準備を済ませていることに私は気付いていた。


泰然(タイラン)様が、兄を都まで送り届けるつもりですか?」

「……ああ、そうだ。父上に許可が下りなかった場合、俺が行く」


 やっぱりそうなのだ。でも、大丈夫なのだろうか。

 問題は疫病のことだけじゃないのに。


「慧王殿下が碧砂(ビーシャ)国に入れなくても、配下の方々は違いますよね。兄を送り届けるだけなら、その方々に託すことはできないのてすか? 泰然(タイラン)様は、緑淵で罪に問われるかもしれないのですよ」

仁峰(レンフォン)様が一緒だ。問題はない。急ぎのため、死の谷を通る。あの道は俺が詳しい。解毒薬は密仙(ミーシェン)国の者から得たことにして……」


 なにか変だ。

 どうしてそんなに急いで戻らなくてはならないのだろう。

 疫病の者が出ているのなら、皇太子である兄は、ここにいた方が安全なのに。皇后だったら、そう判断し、国へ戻ろことを止めるだろう。

 

「なぜ兄は急いで戻らねばならないのですか。何か私に、話していないことがあるのではないですか?」

「…………」


 図星だったのか、泰然(タイラン)様は、窓の方へと顔を背け、黙り込んでしまった。

 泰然(タイラン)様が言えないということは、碧砂(ビーシャ)国で、簡単に口にしてはならないような事が起きてしまったのだろうか。


「無理に聞いてしまい、申し訳ありません。お兄様に聞きます」


 席を立ち部屋を出ようとすると、後ろから泰然(タイラン)様に抱きしめられた。


「待て、行くな……」

泰然(タイラン)様?」

「……が疫病にかかったのだ」


 耳元で掠れた声で囁かれた。

 言葉を聞き取れたけれど、どうしても信じられなくて、私は泰然(タイラン)様に聞き返した。


「今、誰がかかったと仰いましたか?」

「皇后だ。詳細は分からない。俺が碧砂(ビーシャ)国へ行き、秘薬を使う」


 お義母様が疫病に?

 それはいつのことで、今、お義母様の容態はどうなのか。秘薬を使えば、助かるのだろうか。


 怖くて聞くことができなくて、嫌な想像ばかり膨らんでいく中、慧王殿下が戻り話を聞いた。

 やはり皇帝陛下の右腕である慧王殿下を疫病が発生した都市へ送る許可は下りなかった。


「父上、俺が責任を持って仁峰(レンフォン)様を送り届けます」

泰然(タイラン)様、ありがとうございます。ですが、責任などと仰らないでください。緑淵の町までの近道をご存知とのことですので、そこまで連れて行っていただければ、後は何の問題もございませんので、雲龍(ユンロン)国内のみ、ご案内いただけますか?」

「いえ、俺は薬師として碧砂(ビーシャ)国の都まで、同行いたします」

「しかし……疫病は危険です。それに……」

「お兄様、私も行きます。もしかしたら、お義母様の病を治せるかもしれないのです。どうか一緒に行かせてください」


 私の義母の治療なのに、泰然(タイラン)様だけに危険を背負わせるわけにはいかない。私が願い出ると、兄は困った顔を泰然(タイラン)様へ向けた。


泰然(タイラン)様、話してしまったのですか?」

「……雪蘭(シュウラン)に見抜かれてしまいました。申し訳ない」

「お兄様、お願いします。泰然(タイラン)様だけに危険を背負わせるわけにはいきません。何があろうと、この先の困難を二人で乗り越えると約束したのです。それに、お義母様に聞きたいことがたくさんあるんです。だから」

「駄目だ。皇后に、絶対に連れて帰るなといわれている」

「ですが……」

「それに、戻っても間に合わないかもしれないのだぞ」

「……」


 間に合わない。

 その言葉が重くのしかかる。

 だって、もう何人も亡くなったと伝え聞いているのだから、もしかしたら今、話している間にも──。


「あのさ、今から行けばまだ皇后に会えると思う」


 張り詰めた空気の中、瑠麗(リウリー)が声を発した。


「言ってなかったんだけど、おそらく皇后自身も、歳を取らない呪いの薬を常用していると思うの。どれくらい薬を作り置きしているかは分からないけど、その薬が体内から消えるまでは、身体に入った病も進行が遅れるのではないかと思うの」

雪蘭(シュウラン)が谷の毒に耐えたことと同じことが言えるのではないかということだな?」


 泰然(タイラン)様が尋ねると、瑠麗(リウリー)は小さく頷いた。


「多分そんな感じ」

「一つ気になったのだが、作り置き、とはどういう意味だ?」

「高熱で新たに薬は作れないだろうってこともあるけど、材料の一つが、碧砂(ビーシャ)国から無くなってしまったみたいだから」

「国からなくなる? 一体どんな材料なんだ?」

「御神木の葉っぱよ。燃え尽きてしまったんでしょう?」


 瑠麗(リウリー)はお兄様にそう尋ねた。

 御神木が燃えてしまっただなんて聞いていない。

 しかし兄の顔を見れば、それが真実なのだと分かってしまった。


「御神木に何があったのですか?」

「落雷で御神木は燃えてしまったんだ」

「そんな……」

「心配するだろうと思って、言わなかった。すまない雪蘭(シュウラン)。皇后を想う気持ちは分かる。しかし連れて行くことはできない。それが皇后との約束なんだ」

「皇后は、天災を雪燕(シュウエン)のせいにさせたくないから、戻るなと言っいるのでしょう?」

「おそらく」

「だったら、私にいい考えがあるわ」


 瑠麗(リウリー)に皆の視線が集まった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ