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醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第五章 出会いと再会の雲龍国

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011 雪蘭の気持ち(泰然視点/翡雲視点)

 翌日、父は帰宅すると、すぐに宮殿へ報告にいき、昼過ぎに帰ってきた。

 俺は仁峰(レンフォン)様のことを父に伝えた。

 そして、もし仁峰(レンフォン)様が必要としているのなら、雪蘭(シュウラン)碧砂(ビーシャ)国に行くことを覚悟しているということも。


「それで、仁峰(レンフォン)は、雪燕(シュウエン)を見つけ出して、どうするつもりでいるのだ?」

「え?」

仁峰(レンフォン)に聞かなかったのか?」

「……はい」


 聞かなかった。正直、聞くのも怖かったし、連れ戻されるという考えに頭の中が支配されていた。


仁峰(レンフォン)なら、雪燕(シュウエン)の気持ちを優先させてくれるだろう」

仁峰(レンフォン)様はそうだとしても、もし春燕(チュンエン)雪燕(シュウエン)のことを知ってしまったら、どうなるでしょうか? また周りに悪い噂を流し、破滅させようとするでしょう」

「そうだな。しかし、ここは仁峰(レンフォン)を信じてみてよいのではないか? 単身でここまで来たのだ、煮るなり焼くなりどうとでもできることも承知で、それでもここへ来たのだろう」


 確かに、護衛を二人だけ連れてできることなど、何もないと言ってもいいくらいだ。

 ひとりで考えを巡らせていると、使用人が扉を叩いた。


翡雲(フェイユン)様がお見えです」

翡雲(フェイユン)が?」


 まさか、瑠麗(リウリー)がいるから来たのか?

 そういえば、雪蘭(シュウラン)のことで頭がいっぱいで、父に瑠麗(リウリー)のことを話していなかった。まあ、後でもよいか。


「おお、通しなさい。泰然(タイラン)翡雲(フェイユン)は月に一度は訪ねてくれているのだ」

「ああ、そうでしたか」


 俺が適当に返事をすると、父はニヤリと笑い尋ねた。


雪蘭(シュウラン)に会わせたくないのか?」

「はい? あ、いえ違います。今、瑠麗(リウリー)が来ていて」

「リウリー?」

「実は、密仙(ミーシェン)国から、礼節を学びたいと言って黎瑠麗(リウリー)という女性が来ておりまして。密仙(ミーシェン)国の大婆様からの書簡を父の机に置いておいたのですが、報告することを忘れていました」

「まったく、密仙(ミーシェン)国の大婆様の紹介とは、只事ではないではないか。そのリウリーとは、知り合いか?」


 父は机に置かれた書簡を開き目を通した。


「はい。山で出会ったウリ坊で、今は人間に戻り翡雲(フェイユン)の許婚となりました」

「ん? 情報量が多いな……。泰然(タイラン)、お前は本当に、いろいろな経験をしてきたのだな。またゆっくり、山の屋敷での話を聞かせておくれ」 


 短くまとめてしまったが、山の屋敷での話だったら、いくらでも話せてしまいそうだ。特に、雪蘭(シュウラン)と過ごしてからの日々は、毎日が色鮮やかな日々だった。


「はい、また今度」

「よし、翡雲(フェイユン)を迎えておいてくれ、私はその瑠麗(リウリー)殿と話をしてから行く」

「分かりました」


 翡雲(フェイユン)を迎えに行こうと門の方へ向かうと、その途中で翡雲(フェイユン)の姿を見つけた。

 真っ先に俺に会いに行こうとしていたのか、俺の部屋がある家屋の前に立っていて、よく見ると、なぜか雪蘭(シュウラン)を……抱きしめていた。


翡雲(フェイユン)?」


 ****


 私は土産を手に慧王の屋敷を訪ねた。雪蘭(シュウラン)に食べてもらいたくて、茶屋で菓子を買った。

 今までも、月に一度程度、碧砂(ビーシャ)国から帰還した際、慧王の屋敷に足を運んでいたいた。

 今日は雪蘭(シュウラン)が都に来てから初めて訪ねる。せっかくだから、雪蘭(シュウラン)泰然(タイラン)と都を散策しようと思って足を向けたのだが、それはやめた。

 仁峰(レンフォン)様の言葉を聞いてしまったから。


 門を通され、まず泰然(タイラン)に会おうと思い東の家屋を目指すと、雪蘭(シュウラン)が出てきた。

舞を舞う時の装いだろうか、紫の髪に薄紅色の衣がよく似合っている。薄く化粧をしていて髪も結い、とても綺麗だ。


雪蘭(シュウラン)?」

「えっ、翡雲(フェイユン)様? あ、もしかして」


 泰然(タイラン)から仁峰(レンフォン)様のことを聞いているのだろうか。雪蘭(シュウラン)がクルリと向き直り屋敷へ戻ろうとしたので、私は駆け寄り手を握ってそれを止めた。

「待ってくれ。仁峰(レンフォン)様のことを聞いたか?」

「は、はい」

「会うのは嫌か?」

「いえ。会いたいけれど……ただ、少し怖いと思うのが本音です」


 無理やり作った笑顔で雪蘭(シュウラン)はそう言った。


 怖い。それもそうだ。

 私だって仁峰(レンフォン)様を視界にとらえた時、警戒してしまった。見知った仲であれど、腹の中は分からない。

 不安で当たり前なのに。

 私は雪蘭(シュウラン)の手を引き、強く抱きしめた。


「フェ、翡雲(フェイユン)様?」

「すまない、私は雪蘭(シュウラン)の気持ちを蔑ろにしていた」

「えっ? そんなこと……」

「先ほど仁峰(レンフォン)様に偶然会った。彼の話を聞いて、私は雪蘭(シュウラン)と会うべきだと思った。だから」


 私としたことが、雪蘭(シュウラン)の気持ちを二の次に考えてしまっていた。


翡雲(フェイユン)?」


 いつもより低い泰然(タイラン)の声に名を呼ばれ、私は慌てて雪蘭(シュウラン)から手を離した。


「あ、失礼した」


 雪蘭(シュウラン)は困り顔で、大丈夫ですと言ってくれたが、軽率だった。ここは人目もあるのに。

 それに、泰然(タイラン)の視線が痛い。


「菓子なんて買ってきて、なにか用があってきたのか? 今、色々と立て込んでいるのだが?」

「ああ、菓子は雪蘭(シュウラン)が好きだったものを買ってきた。それと……」

「あ、雪蘭(シュウラン)、そろそろ時間ではないのか?」


 泰然(タイラン)の言葉に、雪蘭(シュウラン)はハッとして屋敷の西の方へと目を向けた。


「そうでした。今から瑶琳(ヤオリン)とその友人の舞の稽古をみるんです」

「おお、それでその様な美しい装いだったのだな」

「はい、失礼しますね」

「あ、ああ……」


 雪蘭(シュウラン)は舞を教えているのか。

 瑶琳(ヤオリン)とも、仲良くやっているのだな。

 それなのに……。


「で、翡雲(フェイユン)はなにか言いたげだが」

「先ほど仁峰(レンフォン)様と偶然、道であったのだ」

「え、それで?」

「連れてきてしまった。今、屋敷の前で待ってもらっている」

「は? 明日、父が戻ってからと約束したのだが」

「あー、叔父上はもう帰ってきてるだろうし、大丈夫かと思って。私は明日、用があって来れないし……いや、すまん。そんなに怒るな。雪蘭(シュウラン)雪燕(シュウエン)であることまでは、言っていないぞ? やはり、明日にしてもらうか?」


 余裕が無さそうな泰然(タイラン)の顔を見たら、益々申し訳なくなってきた。


「お通しせよを皇太子殿下を、門の前で待たせておくなど失礼であろう」

「父上……」


 慧王殿下の隣には、澄まし顔で立つ瑠麗(リウリー)の姿もあった。

 瑠麗(リウリー)がなぜここに?







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