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醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第五章 出会いと再会の雲龍国

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002 仲の良い親子

「慧王殿下。お久しゅうございます。私は碧砂(ビーシャ)国の公主、雪燕(シュウエン)でした」


 ガタンっと椅子を飛ばして慧王殿下が立ち上がった。

 そして私の隣へ歩み寄ると、そっと手を握った。


「大きくなったな。本当に雪燕(シュウエン)なのだな?」

「はい、慧王殿下」


 慧王殿下は私の手を優しく握り微笑み、そっと手を離すと、泰然(タイラン)様へと向き直った。


「よくやった、泰然(タイラン)。そうか、事故に遭った少女とは、そういうことか。うむ、そうか……」


 慧王殿下は考え込みながら自席へと戻って行き、腰を下ろすと、神妙な面持ちで話を続けた。おそらく、配下の者から私の存在については知っていらっしゃるのだろう。


「では、緑淵で春燕(チュンエン)がしたことは、雪燕(シュウエン)だと確信はなかったが、雪蘭(シュウラン)を本能的に排除しようとしたということになるのか?」

「そうですね。私は雪燕(シュウエン)であることを否定し、その後すぐに泰然(タイラン)様が助けてくださいました」


 私の話を聞くと、慧王殿下は嬉しそうに頷いて尋ねた。


「そうか。たしか……配下の者から、その時既に、二人は許嫁であったと聞いたのだが……」

「父上、からかわないでください。その時は、春燕(チュンエン)を惑わすための虚言でした」

「なるほど。一つ尋ねたいのだが、雪燕(シュウエン)は、満月の晩は何をしていた?」


 なぜ慧王殿下は、満月の夜のことを尋ねるのだろうか。

 私が答えようとすると、先に泰然(タイラン)様が答えてくれた。


「今から一月半ほど前の満月の日は、事故の後、目覚めてすぐの日でしたが、山の屋敷で舞を踊りました。雪蘭(シュウラン)が舞うと、瓶に入っていた龍神の池の水が輝いておりました。そして、この間の満月の晩は、秘薬の素材である茸の採取のため、外で猪と一緒に狼と戦っていました」

「猪と狼? 気になる話だが、今はそのことには触れないでおこう。と、いうことはだ。春燕(チュンエン)は、龍神の池が光らず、自らが舞姫でないことに気付いてしまい、失意の中、池に落ちてしまったのかもしれぬな」


 私がいなくなって初めての満月の夜、春燕(チュンエン)は舞を踊ったのだろう。そして池が輝き、自分が舞姫に選ばれたと勘違いしてしまっていたのだ。


 泰然(タイラン)様は、眉をひそめて慧王殿下に尋ねた。


「では、あれだけ国中に触れ回っておきながら、舞姫ではなかったということになるのですか?」

「なんとも憐れだが、そうなるだろうな」


 泰然(タイラン)様も慧王殿下も、納得しているけれど、最近もよく雷雲を見かけていたのに……。


「ですが、最近もよく雷鳴が聞こえました。碧砂(ビーシャ)国に、雨が降っているのですよね?」

「そうだな……。まあよい、今は食事だ!」


 慧王殿下は言葉を濁すと、急に宿の者を呼んで食事を頼み始めた。


「父上、急にどうされたのですか?」

「いや、腹が減っていたことを急に思い出したのだ。それに、雪燕(シュウエン)とまた会えたのだ。お祝いしようではないか」

「ありがとうございます」

雪燕(シュウエン)が生きていると知れば、翡雲(フェイユン)もさぞかし喜ぶだろう……。ん? 翡雲(フェイユン)のことはよいのか、許嫁であったではないか?」

「それはそうなのですが……私は一度死んだのです。醜悪な公主として民を苦しめていた私とは決別しました。もう雪燕(シュウエン)には戻らないのです。だから、翡雲(フェイユン)様との縁は切れてしまったのです」

「父上、翡雲(フェイユン)は全て知っています。少しの間でしたが、一緒に山の屋敷で暮らしていたので」


 慧王殿下の悲しそうな顔を見て、泰然(タイラン)様がそう言葉を付け足してくれた。

  

「そうだったな。わかった。まあ、細かいことは気にせんでいいだろう。これからは雪蘭(シュウラン)と呼ぼう。それでよいな?」

「はい」

「よし、食事にしよう」


 それから、慧王殿下と食事をし、昔の話や、泰然(タイラン)様の子供の頃の話もしてもらった。二人の笑いどころが一緒だったり、好きな食べ物が同じだったり、仲のよい親子で羨ましい。


 食事が終わると、親子で積もる話があるようで、二人は隣の客室へ入っていった。







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