表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第四章 母の故郷は秘密がいっぱいでした

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/91

014 恋をしてみたかった(瑠麗視点)

 いつの間にか姉の珊麗(シャンリー)が私たちの間に立っていた。珊麗(シャンリー)に気付くと、瑛麗(インリー)は急にしおらしくなった。


「だって、瑠麗(リウリー)が生意気だから」

「もう、久しぶりに会えたのに。瑠麗(リウリー)、可愛い顔をよく見せて」


 珊麗(シャンリー)姉様が、冷たい手で私の頬に触れた。

 珊麗(シャンリー)はいつも私に優しい。

 もちろん瑛麗(インリー)にも。

 血縁者には、珊麗(シャンリー)の魅了の術は通用しないというけれど、私は珊麗(シャンリー)姉様が大好きだ。魅了の術にかかっているのではないかと思うくらい。


珊麗(シャンリー)、いつも瑠麗(リウリー)に甘すぎよ」

「歳の離れた妹は可愛いのよ。瑛麗(インリー)のことも可愛いと思っているわよ。しばらく次の婚約の話は無さそうだし、どちらが残るか、私は楽しみなのよ」

瑠麗(リウリー)が残っても、なんの役にも立たないと思うけど?」

「そう? 瑠麗(リウリー)がいたら宮殿が明るくなるわ。それに、優しいから、一緒にいると心が休まるわ。それから、瑛麗(インリー)は、薬作りが得意でしょう? たくさん作って国益を増やして。ついでに新薬の開発もお願い」

珊麗(シャンリー)……」


 人を寄せ付けない性格の瑛麗(インリー)ですら、珊麗(シャンリー)にかかれば子猫のように甘えだす。

 女帝に選ばれたのが珊麗(シャンリー)で良かった。

 私は絶対に、珊麗(シャンリー)には勝てないから。


瑠麗(リウリー)が羨ましいわ。誰かに恋、私もしてみたかった」

「あら、好みの方を選んだのでは?」

「魅了が効きやすくて、一番体力のある男を選んだだけよ」

「でも、あの方を伴侶として迎えるのでしょう?」

「そうね。本当は魅了が効かない方と結ばれたかったわ」


 珊麗(シャンリー)は悲しげにそういった。

 初めて見るその表情に胸が痛くなる。

 瑛麗(インリー)も、珊麗(シャンリー)のその表情を見逃さなかった。


「もし、そんな素敵な方と巡り逢えたら、女帝を代わってあげるわ。まだ次期女帝というだけで、代替わりするにはまだ時間があるもの。私達だって、それぞれ呪いを自力で解いて国に戻ったのだから、女帝になる権利はあるわ。その時、まだ女帝になっていなくて、私か瑠麗(リウリー)か、嫁いで居ないほうが珊麗(シャンリー)の隣に居たのなら、だけどね」

「あら、本当に?」

「ええ、私もいいわよ」


 瑛麗(インリー)の言葉に、期待に瞳を輝かせた珊麗(シャンリー)の顔を見た。そんな顔をされたら、私も瑛麗(インリー)の話に乗るしかないではないか。

 しかし、私が同意すると、瑛麗(インリー)はつまらなそうにこちらを見た。


「なによ。明日、翡雲(フェイユン)様に選ばれるつもりでいるくせに。言っておきますけど、許婚候補は私と瑠麗(リウリー)だけではないことは分かっていますの?」

「えっ?」

「前女帝であるお祖母様の娘がいますからね。女帝候補にはなり得ないけれど、皇族であるのですから。歳だってそんなに私たちと変わらないもの」

「わ、忘れていたわ」


 それを考えると、まだ婚姻していない皇族は、他に三人もいることになる。上は二十代半ばから、下は瑛麗(インリー)と同い年だったか。


「やっぱり忘れていたのね」

「べ、別に分かっていたわ」

「あ、そう」


 瑛麗(インリー)が意地悪くそう言うと、珊麗(シャンリー)はクスリと微笑んだ。


「ふふっ、仲がいいのだから。……本当は、三人で、この場所で国を守りたかった。散り散りになることは幼い頃から分かっていたけれど……。明日、どちらがこの国を去ると決まっても、私は二人のことを、ずっと大切に想っているわ。だから、喧嘩はダメよ?」


 姉は私たち二人を抱きしめると、部屋へ戻っていった。


 姉に諭されたせいか、瑛麗(インリー)は、それ以上何も言わず部屋へ戻った。


 雪燕(シュウエン)のことが心配で、泰然(タイラン)に護衛を頼んだけれど、その後に妨害行為もなく、翌日の選定の儀を迎えた。



 まず、大婆様から翡雲(フェイユン)様に、許婚候補である五人の姫と、密仙(ミーシェン)国の姫を皇族に迎えることについての諸注意が説明された。


 これは国同士の約束であること、一つの国に姫は一人しか婚姻関係が結べないこと、姫が望んだ場合、密仙(ミーシェン)国に姫を返すことなど。


 これらの契約が守れない場合、翡雲(フェイユン)様の命をもって償うと誓約書を交わした。

 国家間の争いを起こさないための人質であることを互いに誓い合うのだ。


 そしてその誓約書には、選ばれた姫も名を記すことになっている。


「さあ、どちらの姫を選ぶのだ?」

「はい、私は瑠麗(リウリー)を妃に選びます」


 翡雲(フェイユン)様は私の手を取り、真っ直ぐに私を見て言葉を続けた。


「ここへ来る前から、いや、呪いが解ける前から、約束していた。ずっと一緒にいようと。そうだろ、瑠麗(リウリー)?」

「は、はい!」

「大婆様は、私の心に別の女性がいるとおっしゃいましたね。それはおそらく真です。長年大切に想ってきた女性をすぐに忘れることはできません。これからも彼女は、私の妹のような存在として心に居続けるでしょう。ですが、瑠麗(リウリー)は違います」


 皇子は何人も妻を娶るだろうし、雪燕(シュウエン)のことをパッと忘れて私に乗り換えてしまうような人より、心に留めてくれる誠実さを持っているほうが信頼できる。

 翡雲(フェイユン)様は、ただ心のままに話しているだけなのだろうけれど、私はそんな彼が大好きだと改めて心に思う。


「彼女は私と共に同じ道を歩む妻として大切にしていきます。それでもよいか?」

「はい、私は翡雲(フェイユン)の唯一無二の存在になります」


 これから彼がどんな美しい女性に囲まれようとも、私は私として尽くしていきたい。

 翡雲(フェイユン)様は、私の答えを聞くと、力強く抱きしめてくれた。

 そして、耳元でこう言った。


「ありがとう。これからずっと一緒だな」


 ずっと一緒。なんてよい響きだろう。

 しかしその余韻にまだ浸りたいのに、水を差すように大婆様は口を開いた。


「すまないね。説明不足だった」

「えっ?」

瑠麗(リウリー)はまだ嫁には出せぬのだ」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ