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醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第四章 母の故郷は秘密がいっぱいでした

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010 密仙国の使者

 隣で誰かが飛び起きて、私の掛布も引き剥がされて目を覚ました。


「ん、なに?」

雪燕(シュウエン)、起きて!」

「起きてるわ、瑠麗(リウリー)

「もっとちゃんと起きて!」


 私を揺り動かしながら、朝から元気いっぱいの瑠麗(リウリー)

 昨日は翡雲(フェイユン)様と仲直りができたのだと、夜遅くまで嬉しそうに話してくれて、私も幸せな気持ちで眠りについたのだけれど、一体どうしたのだろう。

 そうだ、鞠で遊ぶ約束をしていたんだ。


「多分来てるわ、密仙(ミーシェン)国からの迎えが!」

「えっ、もう!?」


 意外な言葉に、一気に目が覚めた。

 瑠麗(リウリー)は着替えながら怯えた顔をしていた。


「怖いから一緒に来て」

「どうして怖いだなんて……」

「会えばわかるわ。とりあえず着替えて~」


 瑠麗(リウリー)に急かされながら着替えを済ませ部屋を出ると、食堂から聞き慣れない女性の声がした。

 瑠麗(リウリー)に背中を押されながら食堂へ入ると、泰然(タイラン)様と向かい合って食卓に座る、黒髪の美しい女性がいた。群青色の慎ましやかな衣に身を包んだ妖麗な方だ。

 黒髪だから、蝙蝠になった二の姫のお姉様だろうか。

  泰然(タイラン)様は私に気が付くと微笑み、声をかけてくれた。


雪蘭(シュウラン)、それと瑠麗(リウリー)もいるのか?」

瑠麗(リウリー)?」


 女性に名前を呼ばれると、瑠麗(リウリー)は私の後ろから姿を現し、女性に向かって礼をした。


「お久しゅうございます。瑛麗(インリー)お姉様」

「うん、元気そうだな。近くにいると知って、迎えに来た。外に馬車を待たせてある」


 瑠麗(リウリー)は私の隣に立つと、瑛麗(インリー)様に尋ねた。


「お姉様、私の呪いを解いてくれた雪燕(シュウエン)も一緒でいいですか?」

「もちろん。その者は密仙(ミーシェン)国の血が流れている。密仙(ミーシェン)国に入る権利も住む権利もある。それから、雲龍(ユンロン)国の皇子もここにいるのだろう。ついでに連れて行こうかと」

「お迎えの日取りくらい、前もってお知らせくださいませ。翡雲(フェイユン)様にも、準備がありますでしょう?」

「準備とは、二人の仲を深めるための時間か? 抜け駆けするなんてズルいではないか。私だって男に興味がないわけではない。ましてや、」


 瑛麗(インリー)様は立ち上がると、椅子に腰掛けた泰然(タイラン)様の後ろに立ち、後ろから抱きついた。

 突然のことに、泰然(タイラン)様は目を丸くし、耳を赤く染めた。


「この者を気に入った。私も譲らないぞ」

「お、お姉様!?」

「えっと、翡雲(フェイユン)様? 私も貴方と同じで薬の調合が」

「人違いだ。俺は翡雲(フェイユン)ではない」


 瑛麗(インリー)様の手を払い、泰然(タイラン)様は席を立つと、こちらに早足で移動する。


「お、そうだったのか? それは失礼した。では、お前は誰だ?」

「この屋敷で薬の研究をしている者だと、さっき説明したではないか」

「ああ、そうだった。名を名乗らぬから、間違えてしまった。しかし、薬師か、だから良い匂いがしたのだな。薬剤の匂いが身体に染み付いていて心地よい。良ければ、少しだけ血をくれないか?」

「は?」


 泰然(タイラン)様が頬を引きつらせ一歩後退した。


「お姉様、おやめください。そうやって気に入った人間の血を研究しようとするのは」

瑠麗(リウリー)は黙っていなさい。正直に言うと、そこの……雪燕(シュウエン)といったか? 貴女の血も欲しい。呪いの痕跡を感じる。若いのに、歳を取らない薬を常用していた経験でもあるか?」

「は、はい。おそらく」


 私が肯定すると、瑛麗(インリー)様は嬉しそうに瞳を輝かせた。


「ほう、それは興味深い。あの薬の材料は、密仙(ミーシェン)国で採れない物ばかりで、一度しか作ったことがないのだ。日々、常用しなければ効果が続かない薬だから、量を作らねば意味がないのだけれどな」

「つ、作れるのですか?」

「まあ、密仙(ミーシェン)国が仙女の住む国と呼ばれているのは、私のように秘伝の薬を調合できる人間がいるからだからな。瑠麗(リウリー)の様に、なにもできない者も、年々増えてはいるのだがな」

密仙(ミーシェン)国ではあまり作れないのか? それならば、誰であれば、常用できるほどの数、薬を作れるんだ?」


 泰然(タイラン)様が尋ねたことが分かれば、薬の出どころが分かり、誰に呪われたのか知ることができるかもしれない。


「それはもちろん…………そうだな。お前、名は何という?」


 瑛麗(インリー)様は、言いかけた言葉を飲み込み尋ねた。


「…………」

「ふーん、そうだな。お前が名を私に教え、血をくれて、それから、夫になってくれたら教えてやろう!」

「それは無理だ」


 泰然(タイラン)様は即座に否定したけれど、瑛麗(インリー)様は余裕の笑みを浮かべていた。


「そうか、まあいい。気が変わったら教えてくれ」


 妖艶な笑みを浮かべた瑛麗(インリー)様は、私達を通り越して、食堂の入り口へと目を向けていた。入り口には、大きな欠伸をしながら翡雲(フェイユン)様が立っていた。

 

「朝から騒がしいな。……ん? どちら様だ?」

「あ、姉の瑛麗(インリー)です。お姉様、こちらが翡雲(フェイユン)様です」

「ほう、私は密仙(ミーシェン)国の二の姫、瑛麗(インリー)と申す。妹を迎えに来た。そなた達も準備ができているのなら、密仙(ミーシェン)国へと案内しましょう」

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