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醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第四章 母の故郷は秘密がいっぱいでした

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002 死の谷の秘密

 密仙(ミーシェン)国は、この場所と目と鼻の先に位置しているという。谷川を北上し、毒を撒く紫色の花が咲くその先の山に密仙(ミーシェン)国があり、毒は花が撒いているわけではなく、国を守る為に人工的に作られ散布されたものだという。


「昔から他国とのつながりはなかったわ。でも、たまに迷い込んでくる者がいた。国に辿り着く者は大抵瀕死状態だったわ。国の周りは狼だらけだし、切り立った崖に急流、雲龍(ユンロン)国から国に入るのは危険だらけなのよ」

「迷い込んだ者はどうするのだ?」

「生きていれば、秘薬で助けてあげた。でも、その助けられた人々の内の一人が薬師だったみたいで、その人はその秘薬に固執したの。記憶を消す薬を飲ませても、その人だけは決して忘れなかった。たまにいるのよね。薬が合わない人。それで密仙(ミーシェン)国を探そうとしたから、一人の優しい仙女が秘薬の作り方を教えてあげたの。でも簡単にそろえられる材料ばかりではないでしょ。秘薬は作れなくて、その薬師は嘘つき呼ばわりされた。そして、大々的に密仙(ミーシェン)国の捜索隊が作られ密仙(ミーシェン)国は夜襲にあったの」


 泰然(タイラン)様は瑠麗(リウリー)の話を真剣に聞き、そして信じられないといった顔で言った。


「そんな話……聞いた事がない」

「うん、密仙(ミーシェン)国に入った雲龍(ユンロン)国の者は、誰一人国へ帰れなかったから」

「えっ……」


 それは、夜襲で国へ入った人々は全て……。

 瑠麗(リウリー)は瞳を閉じて、哀悼の意を示すかのようにしたあと、続きを話した。


「仕方ないのよ、密仙(ミーシェン)国の人々にもたくさん被害が出たのだから。それから密仙(ミーシェン)国は変わった。国の者を、他国の皇族に嫁がせるようにし、国で作られる不思議な力を持った様々な薬を各地で伝説のように広め、国へ関心が向かないようにした」

「そして迷い込む者が現れないように、谷に毒をまいたのか」


 泰然(タイラン)様の言葉に、瑠麗(リウリー)は静かに頷いた。


「ええ。夜は特によくない人間が動く時間だから、毒は濃いものにするの。薬師に伝わる昔話も、全部作られたものよ。あの秘薬の書は、仙女が与えたもの。だけど、長い時間をかけて自分たちで作ったことにしたの。仙女への関心を忘れさせるために」

「なぜその話を俺に?」

「今、国をまとめている女帝は温厚な方だけど、私の姉はそうじゃない人もいるから、密仙(ミーシェン)国に害をなす者と判断されたら……」

「俺の祖父は?」

密仙(ミーシェン)国が殺したといえば、そうかもしれない。谷の毒は人間によく効くように作られているから。何度も毒に侵された末の短命ね」

「では、直接手を下されたわけではないのだな」

「そうね。そういうことは、基本的にしないわ。でも、姉がもし実権を握れば、分からない」


 瑠麗(リウリー)のお姉さんということは、あの噂にあった一の姫と二の姫のことだろうか。


「実権を握るって、女帝になったらってことよね」  

「そうとも言えないわ。皇族に嫁いだ者がその国を監視する役目があるから、翡雲(フェイユン)様に嫁ぐ人が雲龍(ユンロン)国に関する事の実権を握るといっても過言ではないわ」


 それを聞くと泰然(タイラン)様は首を傾げ、口元を緩めた。


「あ、そういうことか。翡雲(フェイユン)と婚約したいから、間を取り持ってほしくて脅してるのだな」

「ち、違うわよ! 一応、出しゃばりすぎると危ないかもしれないから教えてあげたのよ」

「それはどうも」

「だから、違うってば!? 雪燕(シュウエン)泰然(タイラン)が意地悪してくる!」


 瑠麗(リウリー)は椅子から立ち上がると、私の後ろに隠れてしまった。


瑠麗(リウリー)泰然(タイラン)様はそんなつもりはないと思うわ」

「私だって、そんなつもりないのに。善意で教えてあげたのよ」

「だから、礼を言ったではないか。俺にとって、これまでずっと目障りだったウリ坊は、雪蘭(シュウラン)をずっと影で支えてくれていたのだろう? それは知っている」

「ん? 褒めても何も出ないわよ」

翡雲(フェイユン)の前でも、素でいたほうがいいのではないか?」

「……泰然(タイラン)がそう言うなら、そうしてみようかしら」


 意外と素直に了承した瑠麗(リウリー)は、また席に戻ると、机に突っ伏してしまった。


「ねえ、婚約相手って、どうやって決めるの?」

「さっきも少し話したけど、皇族に嫁ぐのは皇族の役目だから、女帝に選ばれなかった三姉妹の内の二人のどちらかよ。人に戻って分かったけど、姉達はもう呪いを解いて国に戻っているみたいだから、私にはもう王位継承権はない。だから、私か姉のどちらがよいか、翡雲(フェイユン)様が選ぶの」

「二分の一の確率か、頑張れ」

「なっ、なんかムカつく! 雪燕(シュウエン)、見たでしょう、泰然(タイラン)は、雪燕(シュウエン)以外にはこういう冷たいやつなのよ~」


 言い方は冷たかったかもしれないけれど、事実ではある。どうして二人は馬が合わないのだろうか。


「そんなことないわ、今のは事実だし、応援してくれたのよ。それに、町の人達にはとても優しいもの」

「はいはい、ご馳走様です。で、数日中に迎えについての知らせが来ると思うわ。雪燕(シュウエン)は、密仙(ミーシェン)国に住むつもりはある?」

「えっ、それは……」


 私は、泰然(タイラン)様へと目を向けた。

 泰然(タイラン)様と都へ行く約束は、秘薬が完成したあと、その時も私が泰然(タイラン)様と一緒にいたかったら、という話だった。だから、まだ不確定な約束だ。

 私が答えに迷っていると、瑠麗(リウリー)は察して、先の話をしてくれた。


「そうね、大婆様にお会いして、密仙(ミーシェン)国に住みたいって思ったら、国を案内してあげるわ。雪燕(シュウエン)密仙(ミーシェン)国に住む資格があるから。それと、翡雲(フェイユン)様には、別の書簡が都から届くと思うけれど、多分、ここから一緒に密仙(ミーシェン)国へ行くことになると思う」

瑠麗(リウリー)泰然(タイラン)様は?」


「秘薬を作ったのは一応、泰然(タイラン)だから、招いてあげてもいいわよ。どうする?」

「は? それなら行く気はない」

「えー、そんなこと言っていいの?」


 瑠麗(リウリー)泰然(タイラン)様に近づくと、こそっと耳打ちした。


雪燕(シュウエン)密仙(ミーシェン)国を気に入って帰ってこなくなっちゃうかもしれないわよ?」

「……じゃあ、俺も行く」






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