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醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第四章 母の故郷は秘密がいっぱいでした

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001 黎瑠麗

「黎瑠麗(リウリー)と申します」


 食堂にて出迎えたのは、私と同じくらいの歳の美しい少女だ。

 髪は薄茶色で毛先がクルッと丸まっていて、意志の強そうな大きな瞳も同じく黄色がかった茶色をしている。


「これが……もっと幼いと思っていた」

「あら、何か言いまして?」


 泰然(タイラン)様は真面目にそう言葉を発すると、瑠麗(リウリー)は笑顔のまま泰然(タイラン)様を牽制した。


「私は翡雲(フェイユン)という。瑠麗(リウリー)は……前にも何処かで会ったことがあるような……?」

「あら、それは口説き文句かしら?」

「いや、そういうつもりでは」

「ふふっ、冗談ですわ。では、座ってお話しましょう。やっと話したいことを全てお話できますので」


 わけが分からないまま、翡雲(フェイユン)様は腰を下ろし、私と泰然(タイラン)様もそれに続いた。

 食卓には、お茶とお茶菓子が用意されている。


「私は、密仙(ミーシェン)国の皇族の一人、王位継承権争い真っ最中の姫にございます」

「は?」


 翡雲(フェイユン)様は、お腹が空いていたのか、さっそく手をつけていた菓子を、驚いて机に落としてしまった。

 泰然(タイラン)様は、恐らく翡雲(フェイユン)様も抱いているであろう質問を瑠麗(リウリー)にした。


「それは……翡雲(フェイユン)と婚約を結ぶのが、君ということか?」

「それはわかりません。三姉妹の中から、翡雲(フェイユン)様が一番気に入った姫と婚約を結ぶことになると思いますので。お噂は聞き及んでおられますよね? 蛇のように地を這い毒牙を持つ女性が一の姫、闇夜に紛れて空を舞う生き血を吸う姫が二の姫、そして、毛を逆立て突進する獣のような女性が三の姫にあたる私です」

「そ、そんな笑顔で……ん? 毛を逆立て突進する獣のような……リウリー? り、リウリーなのか!?」


 翡雲(フェイユン)様は驚いて立ち上がった。

 瑠麗(リウリー)は少し恥ずかしそうに頷くと口を開いた。


「はい、私は、翡雲(フェイユン)様に幾度となく助けていただいたウリ坊です。この度、御三方のお力によって完成された秘薬によって呪いが解け、国へ帰ることができます。皆様には、お礼として密仙(ミーシェン)国へご招待させていただきます」


 翡雲(フェイユン)様は眉間にシワを寄せたまま長考状態に突入し、泰然(タイラン)様も瑠麗(リウリー)の言葉に苦笑いだった。


密仙(ミーシェン)国の王位継承権争いはとても特殊で、権利のある女性に呪いをかけ、一番先に呪いを解いた者が次の女帝になるのです。ですので、翡雲(フェイユン)様と婚約を結ぶのは、女帝にならなかった二人の内のどちらかとなります」


 反応のない翡雲(フェイユン)様に代わって、泰然(タイラン)様が瑠麗(リウリー)の言葉に応えた。


「そ、そうか。それはご苦労であったな。ということは、翡雲(フェイユン)は都から婚約に関する知らせが来るのではないか?」

「そうですね。そうなると思います。恐らく大婆様の占いで今日のことは既に分かっていたと思いますので、知らせはもう着いている頃だと思います」

 

 翡雲(フェイユン)様は、やはり瑠麗(リウリー)の言葉に反応は見せず、ずっと何かを考え込んでいる。

 だんだん不安そうな顔になる瑠麗(リウリー)を見て、泰然(タイラン)様は何とか場を繋ごうとしてくれている。


「そうか、雪蘭(シュウラン)、良かったな。母の故郷を訪ねることができるじゃないか」

「はい、瑠麗(リウリー)は、私の母が同郷であったことから、私をたくさん助けてくれていたのです」

「はい、そうなのです。あの……翡雲(フェイユン)様?」

翡雲(フェイユン)……大丈夫か?」


 名を呼ばれても気づいていない翡雲(フェイユン)様の目の前で、泰然(タイラン)様は手を振ってみたり、肩を揺すってみたり声をかけたりすると、ようやく反応が返ってきた。


「へっ? あ、そうだな。私は──」


 そして、瑠麗(リウリー)と目が合うと、気まずそうに視線を落とした。

 瑠麗(リウリー)はさっきまでの自信満々のリウリーらしい顔から、不安そうに、懇願するように翡雲(フェイユン)様に言った。


翡雲(フェイユン)様、どうかお礼をさせてください。私が今、ここにいられるのは、何度も泰然(タイラン)に追い出された私を救ってくださった翡雲(フェイユン)様のお陰なのです」

「あ、ああ。少し頭の中を整理したい。寝不足で全く頭が回らない、少し寝かせてくれ」

「はい、ごゆっくりお休みくださいませ」


 瑠麗(リウリー)は食堂の入り口まで翡雲(フェイユン)様に付き添って見送ると、私のところへと一直線に戻ってきた。

雪燕(シュウエン)、私、翡雲(フェイユン)様に気味悪がられていない? 一度も目を合わせてもらえなかったの」

「そんなことないと思うわ。きっと、密仙(ミーシェン)国との婚約の話も出ているし、色々と考えたいのではないかしら?」

「そうだといいんだけど」


 瑠麗(リウリー)は椅子にドカッと腰を下ろすと、机に突っ伏してしまった。その様子を呆れたように見ていた泰然(タイラン)様は、私に尋ねた。

 

瑠麗(リウリー)は、今までも、こんな感じで雪蘭(シュウラン)と話していたのか?」

泰然(タイラン)は黙ってて」

「おい、俺に八つ当たりをするなよ。別に礼をしてほしい訳では無いが、治療したのは俺だぞ。翡雲(フェイユン)との態度の差が激しくないか?」


 瑠麗(リウリー)は顔を上げると、頬を膨らませながら泰然(タイラン)様を睨みつけた。


「あんたは私を治療してすぐポイッてしたでしょ。外は寒いし、すんっごく辛かったんだから!? 私は翡雲(フェイユン)様と雪燕(シュウエン)にお礼ができたらそれでいいの」

「そうか、……では、そうすればいい。俺も失礼する」


 少しムッとした表情で泰然(タイラン)様が立ち上がると、なぜか瑠麗(リウリー)は彼の袖を掴んで止めた。


「あ、ちょっと待って。まあ、治療してくれたのは、アレだし、お礼にこの谷の秘密を教えてあげるわ」

「谷の秘密?」

「うん。実はね、死色の深淵の谷を作ったのは、密仙(ミーシェン)国なの」






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