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醜い私にサヨウナラ〜捨てられ公主は深淵の谷で幸せになります〜  作者: 春乃紅葉@コミック版『妹の~』配信中
第三章 元許婚が秘薬作りを理由に住み始めました

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021 見ていた?(翡雲視点あり)

 どうやら、翡雲(フェイユン)様は隣の部屋にリウリーと一緒に泊まっていたそうだ。

 この宿は元々三部屋分予約していて、本当は、私とリウリー、泰然(タイラン)様と翡雲(フェイユン)様、そして侍衛の二人で部屋を分けようとしていたそうだ。

 眠いせいか、泰然(タイラン)様はとても怒っていて、二人で隣の部屋で話し合い? をしている。


 私はリウリーと二人で翡雲(フェイユン)様が泊まっていた部屋で朝食と身支度を済ませた。その間、昨日リウリーと翡雲(フェイユン)様が何をしていたのか話を聞いた。


 二人は、紅葉の木の下で葉っぱを交換して、高台で夕陽を見て、それから宿で夕食をいただいたそうだ。その後、翡雲(フェイユン)様はお酒を一杯だけ飲み、すぐに寝てしまったそうだ。


「リウリー、昨日は楽しかったのね。よかった」

『ええ、でも私が話したこと、なんとなく身に覚えがない?』

「身に覚え?」

『うん、紅葉とか夕陽とかさ』


 確かに、私も同じようなことをしたような……。


「実は私も……泰然(タイラン)様とね、紅葉を」

『うん、知ってる』

「え?」

『見てたから、知ってる。翡雲(フェイユン)様は、会話までは聞こえてなかったと思うけど。私、耳がいいからさ、全部聞いてたわ』

「……え」


 見ていた? じゃあ、ずっとそばにいたってこと?


翡雲(フェイユン)様、二人のことを応援しているっていっていたでしょ。泰然(タイラン)になら、雪蘭(シュウラン)を任せられるって言って、ずっと影で見守っていたのだから』

「そう仰っていたけれど、なんだか恥ずかしいわ」

『でもでも、まさか雪燕(シュウエン)の方から、赤龍橋の上で、泰然(タイラン)の気持ちを煽るなんて、驚いたわ』

「そ、そんなこと……してしまったかしら?」

『うん。でも、それがあったから、きっと泰然(タイラン)も自分の心に秘めていた気持ちを言えたのではないかしら。うふふ』

「あのね、リウリー。添い遂げてほしいって、私と夫婦になってほしいって意味で合っているかしら?」

『うーん、泰然(タイラン)って、嘘とかいい加減なこととか言わない奴なのよね。あんまり喋らない分、ちゃんと言葉を選んで伝えてくれていると思うの。だから、言葉のままに受けとればいいと思うわ。ぐふふ』


 ちょっと語尾が変だけど、そうなのかな。

 私の思い違いでも、夢でもなかったって思っていいのかな。


「そっか、ありがとうリウリー。私、夢かもしれない、なんて考えてしまって、ずっとリウリーに相談したかったの」

『相談事ならなんでも私に任せてちょうだい!』

「ふふっ、百歳だものね!」

『それは冗談だってば。あ、でもさ、泰然(タイラン)って都に実家があるんでしょう? 良家の坊っちゃんなら許婚とかいるんじゃない?』

「い、許婚?」

 

 どうして考えなかったんだろう。

 慧王殿下の息子なら、許婚だっているに決まってる。


『まあ、何人でも娶れるくらいの坊っちゃんなら心配ないだろうけど、許婚がいるなら前もって知っておきたいわよね。今度、聞いてみれば~?』

 

 今度? 私が聞けるだろうか。

 でも、なんて聞けばいいの。


 ****


 泰然(タイラン)はとても不機嫌だった。昨日は二人で楽しそうだったから、喜んでくれるかな、と思っていたのだが。


「もしかして、寝てない?」

「……寝たけど? まさか隣の部屋にいるとは。一緒に暮らすのなら勝手な行動は慎んでくれ。秘薬作りに支障が出る」

「たまには息抜きも必要だろ?」 

「…………」


 そう言ったら、じっと睨まれた。

 うーん。やっぱり怒っている?


「いや、悪かったって。二人で過ごしてどうだったか?」

「別に、いつもと変わらない。翡雲(フェイユン)はどうなのだ? 雪蘭(シュウラン)と仲良くなろうとしていたのではなかったのか?」


 恥ずかしそうに目線を逸らしながら尋ねるということは、ずっと気になっていたのだな。

 

「仲はいいぞ。でも、もうそれ以上は望まない。橋の上で良い雰囲気になったのだが、口づけをしようとして拒絶されてしまった」

「くっ……」

「はははっ、泰然(タイラン)は、まだまだ子供だなあ」


 顔を真っ赤にしてたじろぐ泰然(タイラン)の頭をわしゃわしゃと撫でると、手を払いのけられた。


「やめろ、頭をなでるなっ!」

「可愛い奴だな、私が色々と教えてやろうか? 泰然(タイラン)だって雪蘭(シュウラン)と──」

「いい、大丈夫だ」


 プイッとそっぽを向いて私に背を向けた泰然(タイラン)。なんだかもっとからかいたくなってしまう。


「そうか。で、昨日は仲良く過ごせたか?」

「ああ」

「赤龍橋で紅葉を交換し合い、高台で夕陽をみて、夜の町を散策して、それから二人で宿で……」

「見てたのか?」


 呆れて口を開けたまま、泰然(タイラン)はまた顔を赤くし、耳まで赤く染まっていく。


「はははっ、二人で気まずそうだったら、合流しようかな~なんて思っていたのだが、いらぬお節介だったな。やはり二人にとって私は邪魔者だな」

「邪魔、ではない。……都に帰るのか?」


 寂しそうな泰然(タイラン)の瞳に一瞬目が奪われた。

 今までこんなことはなかったのに、雪蘭(シュウラン)が現れてから、だいぶ丸くなったような気がする。


「……ん? いてほしいって顔だな」

「別に」

密仙(ミーシェン)国から招待が来るまでは居られるぞ。嬉しいか?」

「……ああ、嬉しい、嬉しい。早く戻ろう、帰ってやりたいことがある。あとは馬車で話そう」

「わかった」


 








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