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御厨ナギはいちゃいちゃしたい  作者: 希来里星すぴの


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125/130

125 クリスマス計画 ナギ視点

noteの方で、裏話、小ネタを掲載していってます

(TOPページ)

https://note.com/kirakiraspino


noteではこちらの前日譚「0話」も公開中

https://note.com/kirakiraspino/n/na36abbadd334

 11月のとある日。

 来月のシフトを組もうとしていたが天方と二人、頭を悩ませていた。

「おい、お前ら予定もないのにクリスマスイブに休み申請するんじゃねえよ」と天方が声を張り上げる。

 そう。みんなの希望休が24日に偏りすぎていた。

 12月24日、クリスマスイブ「恋人と過ごす日」だ。あくまで俺の知る限りだが、この日に希望休を入れている中で恋人が居る人間は居ない。


「天方副隊長。なんで俺らがクリスマスに予定ないって決めつけるんですか」

「そうっすよ、俺らだってクリスマスまでに恋人ができるかもしれないじゃないですか」

「やっぱり今の段階で恋人居ねーんじゃねーか。シフト作る側の身にもなれ。一旦希望休全部消すぞ。真面目に用事があるやつは名乗り上げろ」

 天方の言葉を受けて、不平不満の声がそこらからあがりだす。

 ここは庁舎内の食堂なので、その声を聴いた周囲の人間がこちらに注目しだす。食堂でする話ではなかったか。

 だが、壱番隊の全員が寮に住んでいるわけでもないし、今日は色々とタイミングが悪く、一同に会するのはこの機会しかなかった。

 12月のシフトは年末が絡んでくるから、彼らの都合もあるだろうからなるべく早めに決めたかった。


「この日に集中しすぎてるから、用事が無ければできれば希望休はバラけて欲しいのだが」

 彼らにも事情があるだろうから普段はこういう事は言わないようにしているのだが、今回はあまりにも度を越している。

 俺の率いる壱番隊はよく言えばフレンドリー。悪く言えば今も学生気分の隊員達が多い。

 壱番隊は本来その役割ではないのだが弐番隊により新人教育を任されており、俺の隊には新卒者が多い。時折、その言動や行動が目に余ることもある。


「あ~あ~。御厨(みくりや)隊長はいいっすね」

「恋人と初めて過ごすクリスマスかあ」

「丁度土日だから、学生の番いちゃんでも泊りがけで過ごせるとかリア充爆発しろって感じですね」

 その言葉が聞こえたのか、隣のテーブルで黙々ととんかつ定食を食っていた加賀宮の手が止まる。

「……クリスマスイブに泊り、だと?」という戸惑いが窺い知れる。

 これまで何度もみやびの家に泊ったことがあるのはやつも知っているが、なんとなく俺たちがまだ一線を越えてないというのは感じ取ってるようだ。

 だが、今回はクリスマスイブ。

 明らかに「何かが起きる夜」だ。

 この時期のホテルは早めに予約した方がいいと天方に勧められ、実際にすでにホテルは予約してる。色々と考えた結果、イルミネーションと夜景が楽しめるというプランにした。

 軽く街を散策した後に、夕食を取り、ホテルで夜景を見ながら俺たちはそこで一夜を過ごす――。


 今回、申し訳ないとは思ったが、天方の協力の元俺は有休をとらせてもらう事になった。

 生まれて初めて出来た恋人、そして結婚を約束した大事な人と思い出に残る特別な夜を過ごしたいと考えた。

 まだきちんと「この日にデートしよう」と誘ってないが。


「隊長もこの日に有給入れてるじゃないっすか、どうせ初めての夜ってわけじゃないから隊長もこの日は俺らと一緒に虚しく仕事しましょうよ」

「……」

 思わず言葉に詰まってしまった。

「おい、遊佐」

「……マジっすか」

 からかいのつもりで発言した遊佐が凍り付いた。

「え? まさかマジでまだ……してないんすか?」

 恐る恐ると言った感じで聴いてくる。

「プライベートな事は話さないようにしてる」

 だが、俺の態度から察しがついているのか、俺と彼女の交際の進展具合は周りに筒抜けだ。

「へぇ~……知り合って数か月くらい経ってません? それでまだっすかあ」

 まだなんだよ。

 とはいえ「一度断られた」「それからまた断られたらと思うと誘うのに躊躇ってる」なんて言えない。


「でもまぁ彼女相手はまだでも、隊長なら他の女と経験あるでしょ、モテるし」

「……」

「……マジっすか」

「……彼女以外には興味はない」

 俺をよく知らない人間は何故「経験豊富」だと思い込むんだ。好きな女以外とはそういう関係になりたくないのに。


「え、じゃあ彼女とどこまでいってるんすか」

「それは――もういいだろ、この話題は」

 そもそも昼休みとはいえここは職員用の食堂だ。

 壱番隊以外の人間も居るし、何より加賀宮がこの話を聞いてさっきから眉間の皺を深くしてるぞ。心なしか、どす黒い殺気も出ている。

 加賀宮の隣に座ってるシオンがその様子を見て笑いをかみ殺している。

 シフト調整の話から、俺がみやびとクリスマスデートを計画していると知られてしまった。


「これで番いちゃんがクリスマスにバイト入れてたら笑うんすけどね」

「流石にそれはねーだろ」

「いや、カノジョ飲食店のバイトでしたっけ? 俺もバイト経験あるけど、クリスマスと年末年始は休みとりづらいんですよね」

「でも恋人との初めてのクリスマスっすよ。普通、恋人優先でしょうが。ねえ?」

 隊員のさりげない会話がやけに気になった。 

「……隊長?」

「……ちょっと電話してくる」

 言いようのない不安が渦巻く。

 ――まさか、な。


「え? 12月の希望休?」

 友達との昼飯中だろうに、俺からの電話に即出てくれた。この時間に声を聴けて嬉しい。

 メッセージを飛ばしても良かったが、みやびからきちんと聞いておかないと午後の仕事が手につかなさそうだし。

「ちょっと気になる事があって。まだバイト先に伝えてないよな? 可能ならその前に俺に教えてくれるか?」

「いいよ。すぐメッセージ送るね」

 用件だけを伝えて、名残惜しいがすぐに通話を切った。

 そしてすぐに彼女がバイト先に出す希望休の予定が送られてきたんだが……。


「なんでだ!!!!!!!!!!!!」


「クリスマスに希望休入れてないじゃないっすか」

 俺のスマホを勝手に覗き込んだ遊佐が周りに聞こえるくらいの声で言う。隊員たちが哀れみの目で俺を見つめてくる。

「隊長……ちゃんと彼女と付き合ってるんですよね、隊長が付き合ってると勝手に思い込んでるとかないですよね」

 酷い言い草だ。俺を何だと思ってるんだ。


「ナギ……お前こないだホテルに予約入れてたよな。彼女には全然伝わってないじゃねえか」

 天方が俺に気を使って周囲には聞こえないように小声で話す。

「言わなくてもクリスマスだから一緒に過ごせると思ってた」

 だって、クリスマスイブだぞ。俺も恋人と過ごすクリスマスは初めてだが、普通はイルミネーションを見たり、プレゼントを交換し合ったり、ケーキやチキンを食べたり、そのまま夜を過ごすもんじゃないのか? クリスマスってのは。

「あ、でも12月1日には希望休入れてるじゃないですか。彼女の誕生日とか付き合って数か月記念の日とか何かですか?」

「……映画の日だ。毎月1日は映画料金が安い」

 みやびはその日は毎月バイトに休み申請をしてる。特に見たい映画があるわけでもない月でも、1日は必ず希望休を入れてる。

 俺の言葉を受けてその場の雰囲気がずんと重くなった。哀れみの色が濃くなったようだ。

「隊長とのクリスマスデートよりも映画の方が重視されてるじゃないですか」

「もしかすると、隊長って番いちゃんにしてみたら優先度低いんすか?」

「ぐふっ……」

「おいこら、口を慎め。そしてナギ、最近のお前はダメージ受けすぎじゃねーか」



 その日の夜。

 いつものように彼女の家、俺はつい「みやび、俺たち付き合って……るんだよな?」と口に出していた。昼間の事が心配になって、聞いてしまった。

 これで「え?そんなつもりなかった」と言われたら……どうしよう。いや、キスもしてるし、大丈夫、だよな……?

 その先は断れられたことがあったが。

「うん?」

 嘘だろ、何かを考えこんでいるぞ。クリスマスデートだとか卒業後に結婚って俺の一人相撲だったのか?

 いや、確かにあの時に「結婚しよう」って言ったよな、みやびの方が。そしてその後熱烈な口づけを交わしたよな? 俺の記憶があやふやなのか? 夢だったのか? それとも俺の知らない「結婚」という意味の単語があるのか?

「違った……のか……?」

 次第に小声になってしまった。

「あ、いや。私たちって、付き合ってるっていう言い方が正しいのかな、って……だって、もう結婚の約束してるし。どちらかというと……婚約者っていうのが正しいのかな。そういう言い方って照れちゃうけど」

「あの沈黙はそういう意味だったのか」

 ほっと息を吐く。冷静に考えたらこんなことで不安に思うのはおかしいかもしれないが、どうもみやびの考えはよくわからない。

 結婚を約束しているのに、いまだキスの先まではいってないし。

 この家で泊まる事があっても電気を消したらみやびは5分も経たない内に寝息を立て熟睡してしまう。

 恋人と一緒に寝ているのにまるで警戒心が無い。男として意識されてないのかとたまに真剣に悩む時もある。


「なんでそんな話になったの?……やっぱり結婚嫌になった?」

 そう言いながら、不安げに上目遣いで見つめてくる。

「違う。彼女にクリスマスイブにバイト入れられてるってどういう交際してるって隊員に野次られただけだ」

「あっ、そっか。クリスマスだもんね。12月24日はすでに他の子たちが希望休入れてるから、店長がシフト作りづらいだろうなって思って休み申請してないんだけど……どこか行くの?」

 シフトを作る側の身としてはその心遣いはありがたいのだが、恋人としてはクリスマスにはデートの予定があるものだと考えていてほしかった。

 そしてその言い方では「特に予定なかったらバイトを優先していい?」と聞こえるが気のせいだろうか。

「……一緒にイルミネーションを見たいと思って」

 ホテルで共に夜を過ごしたいとは言えない。もしここで「やだよ」と言われたら立ち直れない自信がある。

「そっかあ! いいね。見たことないから楽しみ」

 クリスマスにイルミネーションという発想自体が無かったようで、笑顔が花咲いた。可愛い。

「じゃあ店長には悪いけど、希望休入れておかなきゃ」

 俺から誘う前にその日にはデートの予定があるって思い至って欲しかった。


 それにしても……危なかったな。

 みやびの性格上、もしバイトが入っていたら「今更休みを申請するの店長に悪いからバイト行かなきゃ。ゴメンねナギ。また次の機会にイルミネーションを見ようね」と、そっちを優先していただろうな。

 そして俺はホテルのダブルベッドで一人寂しく寝る事になっただろう。

 ……何故だかその光景がありありと思い浮かべられる。


 それにしても、みやびのイベントに対する認識の低さはなんなのだろうか。

「来年のバレンタインデーには俺はチョコ貰えるだろうか」とまた別の心配を抱えるのだった。


挿絵(By みてみん)

※AI生成イラストです

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