百二十三話
ヒバカリさんを救出して喜んでいた俺達。しかし、突如地獄の様な展開に見舞われた。ノリ先輩とガーターさんが刺されて負傷してしまった。しかも味方だったヒバカリさんとビーグルさんに!一体何が起きているのか分からない。ヒバカリさんとビーグルさんはユウ先輩が気絶させてマンバさんが捕獲した。ノリ先輩はマシロが、ガーターさんはモイラさんが連れて後退していった。
つまり今この場所には俺とユウ先輩、そして敵の男だけになったのだ。
俺は改めて野衾と言った男を見る。身長は百七十くらい、体格は痩せ型、眼鏡をかけて白衣を来ている。まるで、科学者みたいな風貌だ。ただ、顔色がとにかく悪い。まるでゾンビの様に血色が悪い。
とりあえず、片手剣と盾を装備する。不意打ちが怖いしな。
俺がそんな事を考えていたら、ユウ先輩が野衾に話しかける。
「おい、お前の目的は何なんだ?どうもアイツ等とは目的が違うように感じてな」
「はて?アイツ等とは誰ですか?」
「決まってるだろ。ネコショウやセッショウだよ。お前の目的がアイツ等と一緒とは思えないんだよな」
「ふふふ、さあどうでしょうね?」
「まあ、いいわ。とりあえずお前をボコってからその辺は考えるか。行くぞ!」
そう言ってユウ先輩が日本刀を取り出して突撃して行った!あの構えは!
「松山流剣術奥義、天!」
ユウ先輩がトーナメントで見せた奥義を放った!初っ端から決めにいった!相手の正面に残像を残して頭上から攻撃してくる、奥義天!初見で見切れないだろう!俺はそう思っていたのだが、野衾半身をずらして頭上からの攻撃を避けた!そして、ユウ先輩に向けていつ出したのか分からない剣で斬りかかった!ユウ先輩はそれを綺麗に避ける。そして野衾に話しかけた。
「おいおい、今のを避けるのかよ!全然戦闘とか出来るタイプには見えないのによ!」
「私は研究者なんですよ。研究はね、些細な変化すら見逃す事はないのですよ。その様な実験に比べれば貴方達の行動を読むくらい何でもありませんよ」
「嫌味なヤツだぜ!」
「よく言われますよ。では次は私の番ですね」
野衾がその体格からは考えられないスピードで動いた!狙いは・・・俺か!!
俺の首を刎ねようとしてきた剣を俺は盾で防ぐ!
「おや、ただの腰巾着かと思ったら中々やりますね」
「伊達にここまで来てないっすよ!ってか俺から狙うなんて!」
「弱い方から減らすのが鉄則ですからね。しかし、思ってたより強いですね」
俺と野衾がやりとりをしていたら、野衾の後ろからユウ先輩が斬りかかった!
「おいコラ、俺を無視するんじゃねーよ!」
ユウ先輩の攻撃を避けた野衾が距離を取る。それを逃さない様にユウ先輩が追従する。二人とも速いな!
けど、追えない程じゃない!俺はユウ先輩の援護をする為に追従に加わった!
俺とユウ先輩の攻撃を紙一重でかわしていく野衾。
しかし、全ての攻撃をかわしきれなくて、少しづつ野衾に傷をつけていった。
このまま押し切れる!そう思っていたら野衾が距離をとった。そして、俺達に語りかけてきた。
「いやはや、素晴らしい!これ程強い冒険者は初めてですよ!魔力も多く本当に素晴らしい!ああ、私の研究も更にはかどるというものだ!」
「おいおい、狂ってるのか?お前は俺達に負けるのだから研究なんて出来ないだろ?」
「・・・そうですね。今のままでは私は貴方達に勝てません。今のままではね」
「それってどういう意味っすか?」
「ですので、コレを使わせていただきますね」
野衾はそう言って黒い珠を取り出した。
その珠を見た瞬間、俺とユウ先輩に寒気がした!
「ユウ先輩!!」
「お前も感じたか、ダイ!ヤバイな!!」
野衾はその珠を俺達に見せた後、その珠を飲み込んだ!!はっ?飲み込んだ?何をしたいんだと思っていたら野衾が呟いた。
「幻魔覚醒!」
そう呟いた瞬間、爆発的な魔力を感じた後、凄まじい風圧を叩きつけられた。土煙が晴れた後に飛び出した姿に俺は驚いた。
さっきまではまだ人間の姿をしていた奴が、化け物になった!顔はあまり変わらないが口から牙が生えている!
身体はもう人間らしさはない。見た目はまるで蝙蝠かモモンガのようだ。手足の爪が鋭く伸びている!
何より、野衾から発せられる魔力量が桁違いに上がった。どうなってんだよこれ!
「おいおい、なんつー姿だよ!それが幻魔覚醒か!オロチはなる前に止めといてよかったぜ」
「アレってオロチが撤退前にやろうとしてたやつっすよね。確かにオロチがなっていたらヤバイっすね!」
「今の私を前にして余裕とは、果たして何処まで続きますかね?」
「本気を出してないのがお前だけだと思っていたのか?」
「なんですって!」
「やるぞダイ!魔導甲冑始動!」
「了解っす!いくっすよー!」
俺とユウ先輩は魔導甲冑を発動した!
そして野衾に二人同時に攻撃を仕掛ける。俺とユウ先輩の攻撃を野衾は手の爪で受けたり弾いたりする。勿論、受けるだけでは無く攻撃もしてくる。さっきは剣での攻撃だったが、今度は両手の爪だ!攻撃回数が倍に増えている。何度か斬りあったが互いにダメージを与えられなかった。
「クソ、中々ダメージが通らないな!」
「アイツの身体事態がかなりの硬度っすよ!」
「貴方達も中々しぶといですね。ここまで粘られるとは思いませんでした」
「うるせー!もっかい受けてみろよ!俺の奥義を!」
えっ、ユウ先輩さっき避けられた奥義をもう一度やるのか?そう思っていたらユウ先輩から声をかけられた!
「ダイ、アイツの手を抑えとけ!」
「!!了解っす!!」
俺がそう答えるとユウ先輩が突撃して行った。俺はユウ先輩の指示を実行する!
「いやはや、攻撃場所を指定するなど!防いでくれと言っている様なものですよ!」
野衾は手の攻撃を防ぐように行動した!
かかったな阿呆が!!
俺はユウ先輩の指示道理に、野衾の足元を拘束した!それに野衾はビックリしていた!
「なっ!手ではなく足元だと!何故!」
「おっと、俺の攻撃に意識していていいっすか?今っすよユウ先輩!」
「よくやったダイ!くらえ!」
「馬鹿か!その奥義は先程防いだ!食らうものか!」
そう言って野衾は頭上に見た。しかし、そこにユウ先輩はいなかった。
「ど、何処だ!何処に行った!!」
そう叫んでいる野衾の足元でユウ先輩の声が聞こえた。
「松山流剣術奥義、地!!」
ユウ先輩の斬撃が野衾の脚を斬りにいった!そして右脚を切った!左脚もそのまま切れそうだったがギリギリで野衾は避けた!そして野衾は天井に逆さまで張り付いたのだ。マジで蝙蝠みたいだな。
「ヒッヒッヒ、まさか、まさか私の脚を切るとは!そして、脚を切断されるとこれ程痛いとは!」
「おいおい、切られたんだから血ぐらい流せよ。何で何も流れないんだよ?お前生きてないのかよ!」
「いやいや、血の流れを止めているだけですよ。私の数少ない特技でしてね。血流操作」
「血を操る?まるで吸血鬼みたいだな。・・・もしかしてヒバカリさん達を操ったのって!!」
「おや、そこに気づきましたか。そうですよ、彼女達に少し私の血液を混ぜました。まあ、量が少なかったので多分もう操る事は出来ないでしょうけどね。多くの血液を混ぜると死んでしまいますからね」
「いいのかよ、お前の技を俺等に教えてよ」
「問題ありませんよ。だって貴方達は今から死ぬのですから!」
そう言うと野衾の圧力が増した!
成程、ここからが本番なんだな。流石ネコショウ達の仲間だ。一筋縄ではいかないな。だが、俺達は負けない。必ずコイツを倒して日本に還るんだ!




