五章13話 ゲテモノ料理(田嶋颯太)
豚姫の様子を見に行く事を理由に面倒な会議を抜け出したは良いが、返って面倒な物を抱えた気がする。
豚姫、いや、リーシア姫に化けていた魔王軍の諜報員リリを乱暴に引きずりながら移動して空いている席に腰を下ろす。いや、やりたくてやってるわけじゃない、リリが積極的に引きずられに来てるだけだ。
「こいつはリリ、なんかリーシア姫に化けて色々やらかしてたみたいなんだが、魔王軍の関係者みたいだから色々ゲロって貰おうと思って持って来た」
「は~い、ソウタ様が望むなら何でも話しちゃいますよ~」
江ノ塚にシルバーブルの王代理を押し付けることができた為、会議の場に江ノ塚と魔王国側の情報を持っているリリを加えて会議は進む。
まず、エバーラルド、マギナサフィア、セントコーラルとの停戦はあっさり行われ、今は各戦場に伝令を出した所のようだ。問題の豚王や腐った奴等は一掃されている為、魔王国との戦いに向けての同盟を優先する形となり、シルバーブルの各国に対する賠償等は全て片付いた後の話し合いに回されるようだ。
目の前のエバーラルドの姫さんの誘拐未遂とかの豚王の所業のせいだが、シルバーブルの払うものが少なくないのは確実だろう。その辺りは江ノ塚に丸投げだな。あいつの能力は演じることだったって話だから王ぐらい演じるだろう、豚王を真似されたら手がつけられないが……まさかそんなことしないよな? まぁ、大丈夫だろう。
「んじゃ、こいつの出番だな」
会議が三国とシルバーブルが協力しての魔王軍との戦いに関してに移ったので、言っても席に座らずに地べたに座っていたリリを立たせる。
「はい! 何でも聞いてください!」
魔王軍の諜報員の癖に協力的過ぎるのが不安なんだよなぁ、俺が容赦無く沈めて放置したからマゾに目覚めてこんな状態になったって言うのもいまいち信用できない、こいつ、なにか企んでないだろうな?
「えっと、貴方がリーシア姫と入れ替わっていた目的は何でしょう?」
エバーラルドの姫さんもどう反応していいのか戸惑ってるじゃないか、それでもしっかり話を進行しようとするのはさすが一国の姫さんって所か。
「ん~とぉ、私にもよく分からないんだよね~、キリちゃんから言われた事をやってただけで目的は分かんないよ」
リリの性格が今まで感じたままなら、重要なことは聞かされてないって言われても納得がいく。
「とりあえず、お前がやったこと全部話せよ」
「まず、シルバーブルの亜人狩りにユキちゃんが巻き込まれたから腹いせにシルバーブルのお姫さんを攫ったんだよね……ユキちゃんはハーちゃんが助けたんだけど、ついでだから色々やれってキリちゃんに言われて高度な変身魔法が使える私がお姫さんと入れ替わったんだよ」
なんか知らない名前が出まくってるな、後シルバーブルの亜人狩りって何だ? まだまだ俺の知らない豚王の悪行がいっぱい有りそうだな。とりあえず今は話を続けさせよう。
「入れ替わった後は、内部からシルバーブルを腐らせろって指示に従って動いたんだけど、私が何かするまでも無くボロボロだったよ。
そんなわけで次に指示されたのは勇者の召喚、これだけ国の上の奴等が腐ってれば勇者の魂もすぐに穢れるだろうって言ってたけど、なんだか上手く行ってなかったみたい。
シルバーブルの王は何とかして勇者を意のままにしようとしていたみたいだけど、それも上手く行ってなかったね」
その辺は俺や朝霧が色々やったからな、正義感の暴走を懸念していた相田にはセリアが付いてたし……江ノ塚も豚王の意に添わない意図で動いていたから驚く位豚王の意を外せたと思う。魔王側の目的は何だ? 勇者の魂を穢すって言い方だと、お約束展開は勇者が魔王化する感じか?
それだと一番ヤバイのは江ノ塚だよな、リリに目をつけられなくて良かったな、それだけ江ノ塚の能力が江ノ塚の復讐の目的を隠すのに向いてたからだろうけど。
「それで、尽く上手く行かないから今度は商人になって実戦で数回使えば爆発する魔法兵器を売りつけたり、魔法具を渡したりして色々掻き回してたんだけど、やっぱり目的は教えてくれないからキリちゃんってば意地悪だよね~」
あの怪しい商人もリリだったか。で、豚王は魔法具で化け物化したってか。あの魔法具の能力は多分、食った相手の能力を能力値も能力も自分のものにするって所だろうから、複数の勇者を食わせて強力な化け物でも作ろうとしたか?
「まずやらなきゃいけないのは、いつ爆発するか分からない魔法兵器を使うなって注意しに行かないと駄目か?」
「僕が休暇に入る前は拠点になってる砦に配置してたみたいだけど、順調に進撃してたから魔法兵器は使ってなかったと思うけど、僕が戻ったら伝えるよ?」
今ならまだ爆発してないって事か。
「江ノ塚は戻れる気で居るのか? 代理とは言え、王が戦場に出てどうするよ」
「え~、まだ寺坂とかぶちのめしてないのに……」
魔王じゃなくて身内と戦う気満々で行かれても困るんだよ。
「もうこっちの不安要素は粗方排除できただろうからな、対魔王の方には江ノ塚の代わりに俺が行く。
お前どうせ本気出してなかったんだろ? だったら、俺が行っても前と戦力的には代わらない、戻って来た高深たちも居る事だしな……って、高深は何処行った? 伊勢もか!」
なんだよ、あいつらいつの間に居なくなった? 二人一緒に居なくなるってことはどこかでよろしくやってるのか? 伊勢の奴上手くやったな。俺や高深や江ノ塚なんかは女の子に免疫が無いのに、戻って来た高深と伊勢が自然に接触してたからそうなんじゃないかと思ってたけど、あえて言わせて貰おう、リア充爆発しろ!
とか思ってたら戻って来やがった。で、その両手に持った皿に盛られた怪しい物体は何だ?
能力値が上がるから食え? マジで言ってるのか? ステータスが上がるって言っても食いたくない見た目だぞ……虫っぽい魔物の素揚げとか絶対食えない。
能力値の上昇を確かめる為にこの世界に来てすぐに使った魔法道具がどこか聞かれたが、アレは……江ノ塚があの特大の炎術で吹っ飛ばしたな、あの周囲には焦げ跡以外何も残ってなかったから間違い無く吹っ飛んでるな。
まぁ、アレなら冒険者協会の方にも有るが、田中の解析に比べたら数段劣る効果しかないぞ。魔王軍との戦場に行けば田中が居るからそこで見てもらえば良いんじゃないか?
はぁ……江ノ塚が田中の能力もコピってる訳か、まぁ有用だしな……。高深の能力は俺も気になるから、今分かるのは別に良いんだがな……お前ら、会議がとまってるのに気が付いてるか?
「それじゃ視るよ?」
「おう、よろしく頼む」
まぁいいか、上空のドラゴンから投げ出されて、ほぼクッション無しに瓦礫の山に突っ込んで軽傷で済む能力値ってのは一体どんなもんだろう?
高深 蒼也(16)♂
称号……異世界人 生命の志竜
特殊能力……自己治癒(大)
LV 55
STR 1435
DEF 1348
VIT 1596
MAG 1376
RES 1347
DEX 1382
AGL 1403
「こんな感じかな?」
江ノ塚が解析したステータスを紙に書き出したが、水晶で調べるのとは能力値の項目が違うな。これじゃ比べられないぞ。軒並み千をを越えてるってのは普通に高いんだとは思うが。
「能力値的には相田君に迫る物が有るね、レベルが僕たちより高いからレベルが並んだら離されると思うけど……今現在の能力値だけで言うと今の僕や田嶋君よりは高いね」
レベルが俺たちより高いって、まぁ冒険者をしていたなら俺たちよりも魔物と戦う機会は多かったって事か。
にしても、あの魔法道具だと一桁だった数値がここまで跳ね上がるものか?
「能力が有るな、これが高深の勇者としての力か?」
自己治癒(大)ドラゴンから落ちた後すぐに動けるようになってたのはこれが原因だな。やっぱり、高深にも精霊が犠牲になった能力は有ったってことか?
「あ~それは、さっき俺たちを運んで来たドラゴンから貰った能力だな……あの異常な治癒力はそれか……」
後半は独り言のようだが、高深も把握して無い能力なのか? とりあえず勇者召喚由来の能力とは違うんだな、それじゃ高深の能力って無いままなのか?
「あの剣から風出してたのは?」
多分違うと思いつつも訊ねる。
「魔法剣だな……武器と共感し、武器に力を借り、武器を通して世界に働きかける魔法だ」
やっぱりあれも違うか……後それっぽいのは前に無かった称号の生命の志竜だが、これもさっきのドラゴン関係だろうから勇者召喚で得た能力じゃないだろう。てか、この称号ってのは何だろうな? 能力や能力値の方向性が称号に合った物なのは分かるんだがな。増えている称号のせいで能力値が上がってるのか?
「地道にやって来た甲斐が有ったな……これなら、俺も足手纏いじゃないだろう?」
もとの能力が無いってのは分かってた事だからな、高深は能力値が相田に追いつく勢いだってことに純粋に喜んでいるみたいだ。まぁ、高深が自分で折り合いをつけているなら俺が気を揉む事ではないな。
「まぁ、そうだな、お帰り主人公」
「誰が主人公だ……」
「いやいや、僕も高深君は主人公だと思うよ」
「江ノ塚も人のことは言えないと思うぞ、その点、俺はモブではないとして、いい所サブキャラだよな」
暗殺者なんて目立たないポジションの称号だし、クラス全体のサポートをして豚王戦も止めは江ノ塚だったからどう考えても俺が主人公になる要素は無い。
「それじゃぁ、(復讐系)主人公らしく屑(白山)共をぬっ殺してくるね……」
「いやいや! お前はモブだから大人しくしてろ!」
そういう脅し止めろよな、今のお前を止められる奴ってそう居ないぞ。
「にしても、よくここまで成長したね、やっぱり主人公だからかな?」
「能力値に関しては、食うと能力値が上がる魔物が居たりするんだって、だからとりあえずこれ食ってみろって」
そう言ってまだ誰も手をつけていない虫型魔物の素揚げを差し出してくる。こいつ、強くなる為にゲテモノ食いになったって事かよ、勘弁してくれ。
「まぁまぁ」
「おいこら、それ持って近付いて来るな!」
「まぁまぁ」
「って! 江ノ塚も! 逃げられないように俺の周囲に結界張ってんじゃねぇ!」
「江ノ塚ナイスアシスト。ほら、とりあえず食ってみ、めっちゃ不味いけど上昇能力値は筋力だ」
ちょ! お前力強過ぎる! そう言やぁ江ノ塚が高深の能力値は俺や江ノ塚を越えてるって言ってたよな! それから今! めっちゃ不味いっていったか!?
くっそ! ほんとに力強くなってやがる!
抵抗も空しく、虫の素揚げが俺の口に放り込まれた。




