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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
五章 異世界人・勇者
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五章12話 能力解析

「どうしてこうなった……」


 俺と田嶋がリミュールたちの話し合っている部屋に突入した後、遅れて部屋に入って来た江ノ塚が床に手と膝をついて頭を垂れながら呟いた。


「頑張れ、江ノ塚(新王)


 もう完全に他人事だよな、まぁ田嶋にはリリって変態(厄介ごと)の問題があるんだが……。


「江ノ塚が自分で言い出したことだから逃れ様が無いな……」


 とか言っている俺の方は結構ギリギリだった。なんか意地になって玲奈を抱えたまま行ったのがいけなかったな。じりじり差を縮めてはいたんだが、江ノ塚を追い抜くには残りの距離が足りなかったから咄嗟にグリーブに魔力を込めて足の裏に風の魔法剣を発動させた。幸いグリーブも武器だと思い込めば魔法剣は使えるようで、イメージ通りに加速をかける事ができたので、ギリギリで江ノ塚を追い抜けた。


「えっと、何かありましたか?」


 おっと、俺たちがいきなり入って来たから話し合いを中断させてしまったみたいだな。


「紹介しよう、新王の江ノ塚だ!」


 いきなりだな、さっき俺たちが王の代理を決めようって感じの話をしてたのを知らない奴には意味が分からないんじゃないか?


「代理……だからね」


 江ノ塚は納得いかないって顔で応えるけど、執務官たちはほぼ単独で異形化した豚王を倒した江ノ塚を王の代理としてあっさりと受け入れた。そんな簡単にいくものなのかとも思ったが、豚王に付き従って利を得ていたような奴等は、豚王の異形化を察知してとっくに逃げ出したか、豚王に殺られたかのどっちからしい……逃げた奴等が今更戻って来て王に成り代わろうとしても、異形化した豚王を撃破した江ノ塚が王なら手が出しにくいとか言われたが……そんなもんなのか?

 俺がやるわけじゃないからいいか。なんか江ノ塚も他の奴に押し付ける気満々な顔してるし……。


「そうね、相田君に押し付けようって思ってるんじゃないかしら?」

「ふっ、朝霧もそう思うか? でも、させるかよ。政務で忙殺して復讐なんて考えてる暇なくしてやる」


 江ノ塚がはっちゃけたのは白山たちへの復讐からだったか? まぁ、今回で周辺三国とはけりが着くけど、まだ魔王の方との問題が残ってるからな……田嶋が江ノ塚を王に置くのは身内間で揉め事を無くそうって腹か? 復讐者に権力なんて与えたら国巻き込んでやばい事になると思うんだけどな。


「とは言っても、名前だけの王だからね。ただの学生に政なんてできる訳ないんだから……」


 俺が戻って来てから……豚王を消し飛ばした後の江ノ塚と接してる感じだと問題無さそうな気もするけど……やばくなりそうなら田嶋が責任持って止めるだろう。


「まぁ、適当で良いだろ? 豚王があんな状態でも国に残って頑張ってた奴等が居るんだから、そいつらがちゃんとフォローしてくれるって」


 あんなのが王でも国が残ってるんだから、残って頑張ってたそいつらは変態的に優秀なんだな……こうなる前に、もうちょいどうにか出来なかった時点でどこかずれてるんだろうけど……。


「はぁ……じゃぁ、代理王として聞くけど、もう魔王国以外の交戦中の戦場には停戦の指示を出したの? 無駄に戦力を消耗すると魔王国に対するのが面倒になるよ。……まぁ、魔王の方は勇者、主に相田君が何とかするだろうけど、余計な被害は少ないに越した事は無いよね」


 そうだな、マギナサフィアの方は飯本が居なくなったから無条件降伏の状態で、マギナサフィアの軍と一緒にこっちに進軍中だから良いとして、他を早いこと手を打っておかないとな。


「そっちは大丈夫です。マギナサフィアの方はもう終わっていますし、セントコーラルも我が国もシルバーブルの兵を圧倒できるだけの戦力を揃えてから今回の事に当たりましたから、殆んどの兵は傷付けずに無力化している筈です」


 竜騎士なんて使われたらシルバーブルの兵じゃ相手にならないだろうな。多分今の俺でも一般兵なら圧倒できる。

 そして、セントコーラルには聖女(ばあさん)の神託が有る……それならできるだけ互いの被害を少なくした無力化も可能ってことか?

 シルバーブルの弱さっていうのか? そういうのがよく分かるが……これでよく魔王軍との戦線を維持できてるな。他の三国は、被害を減らす為に戦力が整うまでの間は戦線を維持して大きな交戦が起こらないようにしていたらしいけど、もしかして魔王軍の方も何か理由があって積極的に攻めてないのか? 今は相田たちが居るから攻め込んでいる状態らしいけど、それ以前の戦線が維持できていたって言うのが不自然だ。

 まぁ、魔王軍のリリが王女に成り代わって色々やってたみたいだけど……。攻めを緩める理由にはならないよな。

 シルバーブルの詰みっぷりに言葉も無いけど、既に相田たちが戦線に加えられて順調に進軍しているらしいから、魔王軍も何が目的だったんだか……。

 停戦の支持は既に出しているようなので魔王軍以外との戦場は問題無いらしい。


「それより、王女が魔王軍の間者と入れ替わっていた事は言わなくて良いのか?」


 色々やらかしていたっぽいから間者って言い方は違うかも知れないけど……。

 あ~あ、執務官共が驚いてるけど気づいてなかったのか?


「入れ替わる前の王女と全然違うらしいから気が付かない訳無いと思うんだけど……なんでだ?」

「あ~、あの豚王の血を引いてるからって不思議に思われなかったみたいだな。入れ替わる前のリーシア王女は人格者みたいなんだけどな」


 不憫な……それは王女も可哀相だな。


「居ない間に評価が落とされてるとか……」

「街の人の評価は入れ替わる前と変わってないみたいだが?」

「それは、私が城の中でしか工作してなかったからじゃないかな?」


 入れ替わった後街には出てない、主に勇者召喚とその勇者にちょっかいを出すことに集中していたって事だな。

 リリに色々と聞いた後、引き続き江ノ塚も加えて話し合いが行われているけど、俺は参加しなくて良いよな? 会議より休みたい、それが駄目ならせめて鍛練に時間を使いたい。


「蒼也……訓練、やる?」

「いや、どっちかって言うと休みたい」


 話し合いは江ノ塚を加えて再開したようだし、魔王軍の内情の説明を求められたリリの制御に田嶋も忙しそうだ。誰も俺に意見なんて求めてないから注目もされてない、抜け出すなら今か?


「ん、一緒に休む……」


 連れて行けと?

 ずっと抱えたままだからこのままだとそうなるけど、そろそろ下りない?


「ご~」


 下りないのね……はいはい。

 部屋を抜け出すけど誰にも気付かれないな、あ……これ隠密かかってるな、玲奈が周りの注意がこっちに向いてないのをいい事に使ったな。まぁ、確実に抜け出せるのはありがたい。

 さて、自室が残ってたとしても玲奈と一緒に休む訳にも行かないからなぁ、宿みたいにベッドが別なら……まぁ、許容するけど……このまま休みに行っても付いて来るよな? とりあえず食堂にでも行くか……人は居ないけど食材はあるだろう、適当に調理して無い魔物の食材でなんか作ろう。玲奈も抱えたままじゃ調理できないから下りてくれるだろう。


「私の部屋、残ってると思う」

「送って行ったら良いのか?」

「ううん、一緒に休む」

「あ~、俺は未使用の魔物の食材を調理するから……」

「ん、手伝う」


 一緒に食うか? 玲奈はゲテモノみたいな食材でも躊躇わないよな。その分能力値が底上げできてるから良いんだろうけど……。


「ちょっと味が保障できないぞ」

「いい……」


 玲奈が良いって言うなら構わないけど……でも、師匠に確実に不味いって言われてるやつは避けよう。

 食堂に移動して調理するからと言って玲奈を下ろす。

 主に肉系を捌く、焼く、煮るなりして調理する。師匠に教わった手順でやらないと効果が無いから手の加えようが無く、焦げ過ぎとかに気をつければ失敗も無い。多分……。

 できた料理は可も無く不可も無く、普通に食べられる味だった。

 不味い物を避けたせいで素早さの上がる食材ばかり使う事になった……玲奈のやばさが上がったな。

 旅の間能力値の上がる部位を持った魔物は積極的に狩って行き、随分能力値の底上げができたと思うけど、今の俺の能力値ってどれ位なんだろう? 

 丁度豚王(じゃまもの)も居なくなった事だし、召喚当初に使った鑑定する水晶を使わせてもらうか……マギナサフィアやセントコーラルにも有るって話だったけどすっかり忘れていたからな、三国回った旅の間にどれぐらい成長したかが楽しみだ。


「問題は何処に有るかだな……」

「何が?」


 抱き付いてはいないけど、相変わらず一緒に居る玲奈に鑑定の水晶が何処にあるか心当たりが無いか聞いてみる。


「……分からない、でも、たーなら知ってる……かも」


 ってことは、会議してる所に戻るのか? 玲奈の隠密を使った状態で出て来たけど、もうばれてるだろう。今戻ったら何言われるやら……。


「よし、差し入れを作ってたって事にして戻るか……」


 俺はポーチから残った能力値強化の魔物の食材を取り出して調理を始める。


「…………」


 玲奈が何か言いたそうにしていたけど、何も言わず手伝ってくれる。


「という訳で差し入れだ!」


 扉を蹴破って開けて会議している中へ突入する。調理を終えた見た目美味そうな料理が載った皿で両手が塞がっているんだからしょうがない。


「どう言う訳だ! ったく、居なくなったと思ったら騒がしく戻って来やがって」

「まぁまぁ、これ差し入れ、食うと能力値が上がるから食べておいて損は無いぞ……」

「マジ?」

「おう、マジマジ……でさ、俺らが最初に能力を調べるのに使った水晶って何処に有るか分かるか?」

「あれなら玉座の後ろに……あ」


 玉座の後ろ? あの天井やら壁やらが吹っ飛んだ部屋だよな……そう言えば、あそこに玉座って有ったか? 召喚されてすぐに連れて行かれた時は有った。豚王が座ってたからな。で、さっき俺がチンピラドラゴンから落ちた時は……無かったよな? 前に玉座が有った場所に焦げ跡は有ったけど……。

 俺はゆっくりと江ノ塚の方を見る。


「一緒に吹っ飛ばしたか?」


 あれって、前の異世界人が作った魔法道具で希少品だぞ……。


「あ……あはは」


 江ノ塚が笑って誤魔化すけど仕方ないか、どんな戦いだったは田嶋に聞いた程度にしか分からないけど、豚王の魔物化……治癒力―豚王のは再生か?―が俺以上にやばかったみたいだからな。


「まぁ、冒険者協会の方にも有るって話しだし良いけど……」

「でもあれって過去の勇者、異世界人が作ったものだよな……田中の解析に比べたら何も分からないような物みたいだがな」

「あ、じゃぁ僕が解析しようか? 高深君のステータスを調べればいいの?」

「お前、田中の能力もコピってたのかよ、確かに解析能力は異世界召喚物で便利なチートだけど……」

「コピー? そう言えば江ノ塚の能力って何だったっけ?」


 最初の時に江ノ塚が申告してた称号は……なんだたかな、たしか……そうだ、火術士だったか?


「まぁ、ひと暴れしたし……もう隠しておく必要も無いよね。僕の能力は演劇かな? 物真似みたいなものだと思っておけば良いよ」

「多分条件は有るんだろうが……田中の解析能力もコピー済みって訳だ」

「条件が有るのは当たりだけど言わないよ。後、コピーした能力は多少劣化するけどね……」


 条件さえ満たせばなんでもできるようになるんだろ? ある意味万能で羨ましい限りだ……。


「俺の魔法剣もできるのか?」

「さっきのやっぱり魔法剣って言うんだ? 解析しても名前が出てこなかったからそんな感じだなぁとは思ってたけど……多分できるけど、やらないよ。僕が能力でやると魔力効率が悪過ぎる。普通に魔法使ってる方が良いね」

「魔法剣は消費魔力が少ないのが利点なんだが?」

「僕のはあくまでも演技なんだよ、実際に同じことが出来てるわけじゃないんだ。魔法剣を真似るのに使う魔力が実際の魔法剣より高すぎるって事だよ、これなら魔法を使ってる方が効率が良い」

「そんなもんか? まぁいいか、とりあえず解析してみてくれないか」


 ようやく修行の成果が見れるな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 伊勢が気持ち悪すぎてギブしそう これをかわいいとか思う人いるの? 受け入れてる主人公が一番のキチガイだけど
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