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異世界人~無能勇者~  作者: リジア・フリージア
三章 マギナサフィア・一人じゃない旅路
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三章4話 マギナサフィア到着

「田嶋たちはどうしてるんだ?」

「ん、レベル上げ、捜索」


 マギナサフィアの首都への行程の中、俺の質問に伊勢が短く答える……うん、分かりにくい。


「最初に見たステータスにLVって有ったでしょ、この世界、魔物を倒したりすると経験値が手に入ってレベルが上がるのよ、レベルが上がるとそれに応じて能力値も上がるから、田嶋君は戦闘組だけじゃなく捜索組もいざって言う時に身を守れるようにレベルを上げているのよ、レベリングって言ったかしら?」


 田嶋は全体のことを考えているか……あいつ、異世界に来て前よりアクティブになったな。普段目立たないのにいざとなったら頼りになる、主人公気質か? 相田のとは違った頼もしさだ、あいつに任せとけば向こうの皆は何とかなるだろう。おまけになんだかんだで勝ち組の相田も居るからな、悪くはならないだろう。


「ん、蒼也……そろそろ現実を見る」

「高深君、あなたやっぱり変な能力持っているんじゃない?」


 はぁ、そうかもしれない……俺たちを囲み、俺の現実逃避を律儀に見守っているのは、今まで散々狩って来た盗賊と言う名の使い捨て武器供給機。

 伊勢と美波はこれまで盗賊との遭遇率はゼロ、俺は言わずもがな……一人旅だからよく襲われてた訳じゃなかったっポイな。いや、この一回だけで結論を出すのも早計か……。


「へへへ、女と金目の物を置いていくなら見逃してやってもいいぜ」


 盗賊が何か言ってるけど無視だ。


「2人は魔物としか戦ったこと無かったっけ?」

「うん」

「そうね」


 ならここは俺がやろう。


「んじゃ、人死にを見たくなければ目を瞑っててもいいぞ、すぐ終わらせるから……」


 相手が屑だって事も有るけど、殺しに全く抵抗が無くなっている俺は元の生活に戻れるんだろうか? まぁ無差別に殺ってる訳じゃないし大丈夫か……。


「蒼也……」


 美波が反射的に目を瞑り、伊勢が何か言いたそうにこっちを見ているが、気にせずさっさと終わらせよう。

 抜剣した剣を地面に突き刺し小さく呟く……。


「バーストグランド」


 俺たちを取り囲んでいた盗賊は俺が剣を地面に刺した事で降伏すると勘違いでもしたのか、あっけなく爆ぜる地面に巻き込まれ吹き飛ばされる。

 よし、残さず吹っ飛ばした。これで一応伊勢と美波の2人からは盗賊を引き離せた。

 後はダメージを負って無さそうな奴から順に斬りつけていく……首をちょんぱ、肩口から袈裟斬り、股を切断、その場その場で一番やり易い方法で盗賊の命を狩って行く。こっちを舐めきっていた盗賊にしてみれば酷い話しだろう、でも俺は容赦しない。

 最後の1人、首を刎ねようとしたが俺の剣は空を斬った。最後の1人は俺が斬る前に前のめりに倒れ動かなくなっていた。


「伊勢……」


 最後の1人が倒れた事でその背後で小太刀を構え息を荒げている伊勢が目に入った。俺だけに任せておくのは心苦しかったか……でも伊勢が無理する必要なかったんだぞ、こいつらを殺したのは武器を回収したい俺の事情だ。能力値的に伊勢や美波なら殺さずとも逃げれば逃げ切れただろう。


「気にするな、この世界で相手に危害を加えようって輩が、自身の危険を考慮していない訳が無い、こいつらもいつか殺されるのは覚悟の上だ。慣れろとは言わないけど、気にするな……」


 様子がおかしい伊勢に気を使い言葉ではこう言うが、盗賊が自身の危険を考慮している事なんて殆ど無い、盗賊なんて好き勝手やる屑だ自身が報いを受けるなんてこれっぽっちも思っちゃ居ない、だから、俺たちがこんな奴らに考慮する必要なんて無い。適当に言い訳を並べればそんなところだ。


「それはともかく、戦利品の回収回収」


 美波を伊勢に任せて離れた所で待ってもらい、盗賊からそれぞれが所持していた武器を回収して魔法のカバン(マジックポーチ)に収めていく。2人を待たせているから使える使えないは後で確認するつもりだ。


「さっき高深君が使ったのが魔法剣?」


 武器回収を終えマギナサフィアに向けて歩みを再開する。少し暗くなっている雰囲気を切り替えるためか美波が聞いてくる。


「そうだ、でもこの技術を魔法剣って呼んでるのは俺と師匠ぐらいだけどな」


 話題が変われば気分も紛れるかと魔法剣について俺の知っていることを説明する。


「この世界の達人って呼ばれる人たちは己の剣で城壁すら斬り裂く、それは無意識的に武器に魔力を込めて攻撃を強化しているから……魔法剣はその無意識を意識的にやることで可能になる技術だ」


 師匠の説明を思い出しながら俺なりに説明していく、どこか師匠の説明とは違っている所が有るかも知れないけど、もう随分前のことだから仕方ない。


「武器に魔力を込める感覚を掴むのに苦労したなぁ……」


 師匠との修行の日々をまだそんなに時間は経っていない筈なのに懐かしく思う。


「それ、私たちも使える?」

「魔法剣に耐えられる武器があって、武器に魔力を込める感覚を掴めれば誰にでもできるぞ」


 もっとも、勇者として特殊能力を持っている伊勢たちは魔法剣が使えなくても十分強いんだけどな。


「やってみるか?」

「やる!」

「ちょっと興味あるわね」


 とりあえずポーチの中から適当な剣を取り出す。


「2人は魔法道具を使ったことはあるよな?」


 ここまで旅して来ているんだから当然使ったことは有るだろう。この世界で旅するのに魔法道具は大変便利だ。


「田嶋君が用意してくれた旅道具の中に入っていたから使っているわね」

「ん、便利」


 田嶋のサポートが優秀過ぎる、まぁいい、どうやら2人共使い方も分かっているようだ。


「なら魔力を込めるって言うのは分かるよな、それを武器にやるだけだ。

 ただ、武器には必要以上の魔力を込めすぎない為のリミッターが無いから、魔力を込めすぎると……」


 手に持った剣に魔力を込めていく、魔法剣が使える状態まで込められてもまだ魔力を込め続ける。 

 やがて、パリンと相変わらず鉄が壊れるには少々おかしな音がして剣が砕けた。


「武器が耐えきれなくてこうなる、愛用の武器でこうなったら戦力半減どころじゃないからな、さっき回収した適当な武器で練習してみよう」

「魔法剣用に、武器回収?」

「俺の場合はそのまま投げたりもするけどな、盗賊から得られる武器は殆ど魔法剣に耐えられる物じゃないからな、そのまま投げたほうが幾らかマシだ。俺の戦闘方法は剣による攻撃、奪った武器による投擲、そして魔法剣、後は臨機応変に対応だな」


 美波に苦労してきたみたいねって同情されたが、まぁ、自分で望んだ道だしな……。

 2人に魔法剣に耐えられる武器を見繕って手渡す。


「まぁ、やってみ」


 促されて渡した武器に魔力を込めようとする2人……。


「ん……ん?」

「ん~? 魔法道具のようにいかないみたいよ」


 え~、どういうことだ? 俺のときはあっさりと魔力を込められたんだけど……ボロい武器を使ったから魔法剣を使える状態にはならずに剣が壊れたけど、魔力を込めるだけなら普通にできたんだけど、2人の持つ武器を確認してみても魔力が込められた様子は無い……何が悪いんだ?


「何かやり方を間違えて教えたか? いや、俺はこの方法であっさりできたし……どうなってるんだ?」

「あれじゃない? 本来なら達人が辿り着く領域の事をやろうとしてもそう簡単にはいかなくて、高深君は魔法剣と相性が良かっただけとか……」


 そうなのだろうか? 師匠はそういったことは何も言っていなかったけど……やり方さえ知っていれば誰にでもできる技術、の筈だよな?


「どうも一朝一夕でできるようなことじゃ無さそうね……」


 一朝一夕とは言わないけど、俺は結構早く習得できたぞ……相性が良かっただけなんだろうか?

 答えは出ないが、どうやら2人には簡単に使えるって物ではないみたいだ。


「出来ないものはしょうがないか……」


 なんか話が違う気がするけど、師匠も知らなかったことなのか、何か事情が有って本当の事を伏せていたか……いつか、師匠に会う機会が有ったら聞いてみよう。

 とりあえず今は、やり方を知っていても魔法剣は誰にでもすぐにできるようになることじゃないって認識しておこう。

 2人に渡していた武器を回収してポーチに戻す。


「残念……」


 美波はそうでもないが、伊勢は心底残念そうだ。

 魔法剣が使えなくても伊勢たちは十分に特殊能力を持っているからいいじゃないか。

 聞けばレベルが上がる事で使える特殊能力も増えていくみたいだ、これまで結構な数の魔物を倒してきたから俺もそこそこレベルが上がっている筈だ、魔物の能力強化部位による能力値の強化も有るからそれなりに能力値は上がっている筈だ。前に比べて随分動きやすくなっているし、実際の能力値が気になるところでは有るけど……。


「俺にも何か特殊能力が出ていないかが凄く気になるな」

「出ていたら何時の間にか詳細を理解してるから、何も無いって思っているなら何も出ていないんじゃないかしら?」


 美波が俺の期待をあっさりと打ち砕いてくれた。

 いや、俺にも特殊能力が有ったな……レベルが上がって得たものじゃないけど、チンピラドラゴンの肉を喰った翌日になんとなく理解していた。

 今、俺の身体には不自然な程の治癒能力が有る、以前盗賊に麻痺毒を食らった時に回復が結構早かったのも、今考えればそのおかげだったんだろう。そう言えばあのチンピラドラゴン、自分の肉は特別だって言ってたな……。まぁ、少しでも生存率の上がる要素は有り難い。

 2人の能力も教えてもらい戦闘時の動き方について少し話し合う、美波の精霊使いの能力は使うのに少し時間が掛かるので、基本は俺と伊勢が前に出て敵を倒す形になる。

 師匠と一緒の時も思ったが、やっぱり1人じゃないと何かと楽でやり易い、俺や伊勢がミスしても美波がフォローしてくれるので、道中特に怪我も無く無事にマギナサフィアの首都に辿り着く事ができた。

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