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SWEET TRAP  作者: 麻乃そら
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最終話

朝吹邸の玄関前には、紳一郎さんを見送るために使用人の人達が整列していた。

昨日海外出張から帰ったばかりなのに、紳一郎さんは今日もお仕事なんだ。

いつものように帰りは真夜中なんだろうな……。


そっと溜息をついて、それから、こっそりと自分の左手を見た。

薬指にはプラチナの指輪がおさまっている。

夢じゃないんだよね?


あの後、紳一郎さんはとっても優しかったけど、途中からちょっと意地悪だったような気がする。

だって……………………………

って、朝から何を思い出してるんだよ僕は!


「望ちゃん?」

「ひゃっ!」

いきなり後ろから肩を叩かれて、変な声を出してしまった。

振り返ると、おばあちゃんと速水さんが並んで立っている。

「お、おばあちゃん……脅かさないで」

「何度も呼んだのに、気づかないんですもの。

立ったままで寝ているのかと思ったわ」


「おばあさん、わざわざ見送りをして頂かなくても……。

おやすみになっていてください。ギックリ腰は大丈夫なんですか?」

紳一郎さんが気遣うようにおばあちゃんに言った。

「この時間じゃないと、あなたとお話ができませんからね。

昨日はお客様をずっとほっといたままで、夕食にも顔を出さないし。

龍二と、あの綺麗な外人さん…アンリさんだったわね。あなた達のことを心配して遅くまでいてくださったのよ?

うまくまとまったのなら、報告ぐらいしてくれればいいのにねえ」

「すみません」

「ごめんなさい。おばあちゃん」

「……紳一郎、仕事に行く前にその緩んだ顔をどうにかなさい。

ところで、加納さんはいるかしら?」

僕達へのお説教を済ませると、おばあちゃんは秘書の加納さんの姿を探した。

「はい。なんでしょうか?」

後ろにいた加納さんがおばあちゃんの前に進み出る。

「メイドさんに聞いたんだけど、この子結婚してから一日もお休みなしで働いてるんですって?

紳一郎をこき使うのは構わないけど、望ちゃんに寂しい思いをさせるのは可哀想ですよ」

加納さんは僕の方に顔を向けて、唇を緩ませた。

「申し訳ありません。

どうしても来月は長期休暇を取りたいと仰るので、

休日返上の厳しいスケジュールになってしまったんです」


長期休暇?


「望とふたりで海外にでも行こうかと考えているんです。

彼も学校がありますからね。夏休みに合わせようと思ったんですよ」

「まあ、素敵。ハネムーンね?

よかったわねえ、望ちゃん。どこか静かでロマンチックな場所で思いっきりイチャイチャしていらっしゃい。そうそう、おととし買った南フランスの古城なんかどう?

オプションで二百年前の幽霊カップルがついてるのよ。

残念ながらまだお会いしたことはないんだけど……。

それとも、結婚祝いに南の島をプレゼントしましょうか?ヘリとクルーザーもつけて。ね?」

「ありがとうございます。行き先は望と相談して決めますよ」


「…あの」

「ん?」

「お休みの間は、ずうっと紳一郎さんと一緒にいられるんですよね?」

僕は周りのひとに聞こえないように小さな声で言って、紳一郎さんを見上げた。

嬉しくて、思わずニコニコしてしまう。


紳一郎さんは目をパチクリさせた。

それから

いきなり僕の体をぎゅうっと抱きしめた。


し、紳一郎さん!

周りにはメイドさんや、おばあちゃんや、加納さんや…とにかく、まわりにひとがいっぱいいるんだよ!



紳一郎さんは、優しく微笑んで僕の唇にキスを落とすと、耳元でひと言囁いた。




それは、

甘くて、

ふわふわして、

あったかくて、

とっても幸せな気持ちになれる

魔法の言葉だったんだ。






end / SWEET TRAP

最後までおつき合いいただき、ありがとうございました。


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