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転生したらアンデルセンになっていた!  作者: 上野 拓夢
Prologueー
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scene.7   アンナさんが魔法を使う

 欝蒼とした木々を掻き分けつつ更に一時間程歩くと、次第に薄暗い森の中から何やら視線のようなものを感じ始める。偶にカサっという音が聞こえてきたりするのだ。


「……ん、妙だね」


「えっ、アンナさん、何か感じる? 妙って?」


 僕はビクビクしながら周囲に視線を送る。


「……ハンス、あたし達、いつの間にか何かにとり囲まれちまってるかもかもしれないよ……」


 ゆっくりと足を止めたアンナは周囲の木々の隙間に視線を送る。


 森の隙間を探っていると、低い唸り声を発しながら、体の大きな狼が姿を現した。


 四頭程いて取り囲むように迫ってきていたのだ。


「フェンリル狼か…… 狙われちまったね。ハンス、ピッケルを取り出しな」


「えっ、ピッケル? なんで? 何のためにピッケルを?」


「武器になりそうなもんはピッケルぐらいしかないだろ、追っ払うにしても身を守るにしても必要だろ?」


「そ、それはそうだけど、あの狼は敵なの? フェンリル狼って呼んでたけど……」


「敵というか、こっちを獲物として見てるね、フェンリル狼ってのは魔獣だよ、元々は神の一種みたいな存在だったけど今は理性や知性が失われた獣だ。倒すか逃げるしかないね」


「じゃあ、逃げようよ!」


「いやいや、そんな都合よく逃がしてくれると思えないけどね……」


 僕はリュックからピッケルを取り出して取り敢えず身構える。


 低い唸り声をあげながらフェンリル狼は距離を詰めてきた。そして、僕の死角から一匹が襲い掛かってくる。


「う、うわあああああああああああっ!」


 僕はピッケルをぶんぶん振り回す。が、当たらない。襲ってきた一匹に気を取られていると、もう一匹が隙を狙って襲い掛かって来た。


「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」


 僕が恐怖の悲鳴をあげたと同時に、炎の渦がぶわりと僕のすぐ横を通過した。そして、その炎の渦は僕の背後を狙っていた狼に当たり、その体を焼き尽くした。


「えっ、な、なに? 何が?」


 僕は唖然として炎の出所を確認する。


「えっ、ア、アンナさん!」


 炎の出所は手の平を向けているアンナだった。


「ふん、久しぶりだけど、ちゃんと魔法が使えたね……」


「えっ、ま、ま、魔法?」


 僕は唖然とせずにはいられない。マジかよ!


「実はね、あたしゃ魔法が使えたんだよ、地上に降りたら使えなくなっちゃったけどさ……」


「えっ、ア、アンナさんが魔法使いだったの?」


「そういや言ってなかったね、あたしは色々な魔法が使えるんだよ」


「そ、そうなんだ……」


 正直、どうな反応をすれば良いか、よく解らないぞ。


「とにかく、奴らを追っ払うよ!」


 アンナは手から放つ炎で、もう一匹の狼も焼き尽くす。


 そんなアンナの炎に恐れをなしたのか、残りのフェンリル狼二匹は尻尾を巻いて逃げ出した。


「ふん、上手く追っ払えたみたいだね」


 アンナはふうと息を吐く。


 焼け焦げたフェンリル狼の遺体はしばらくすると煙のように消え去り、宝石のような物が残った。


「ア、アンナさん、死骸が無くなって宝石みたいなのになったよ!」


「ああ、魔宝石が残ったんだよ、魔獣だからね」


「魔宝石?」


「ああ、魔獣の核みたいな物だよ、それ拾っときな、後でお金に換えられるから」


「はあ……」


 僕は正直この世界の常識に付いていけない。何だかとんでもない世界に来てしまったようだ。


 しかしながら思考が追い付かない僕であったが、心に少し安心材料が追加されていた。それは祖母アンナが自分の想像以上にこの世界に詳しい事と、アンナが若返った事、そして、魔法を使える事だ。正直かなり頼もしい存在だった。


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