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転生したらアンデルセンになっていた!  作者: 上野 拓夢
Episode one カエルの王子様
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scene.1   弱ったカエルを助けてあげる

 森の中をしばらく進んで行くと、木々が疎らになり視界が開けてきた。手前には小川が流れており、その先には平野というか平原が広がっていた。さらに遠くには畑や家みたいなのかあり、奥には城壁が見える。


「この平原辺りから、どこかの王国の領域みたいだね、真ん中に見える王都みたいなのが王の住まいで、その更にずっとずっと遠くに見える山辺りが国境かねえ……」


 アンナはそう呟きながら視線を走らせる。


「う~ん、どうやら、この辺りはミズカルズのようだね、ミズカルズの南部の王国ってとこかしら……」


「ミズガルズ?」


「ミズガルズってのは人間が多く住む土地さ、ミズガルズの他には巨人が多く住むヨトゥンヘイムという土地とか、言語を話す動物の国があるニダヴェリールなんていう土地もあるんだよ」


「なるほど……」


 そう答えたものの、僕の頭はすでに満杯状態だった。正直、何が何だかよく解っていない。


「とにかく、王城の方へ向かうよ、城の近くには人が多くいるだろうし、物も買えるし」


「わ、わかった」


 アンナの提案に従い草原を進んで行く。もう完全に任せた方が良さそうだ。


 進んで行くと徐々に人の営みが見えてきた。草原に紛れて畑も多く見えてくる。


 次第に道らしきものもあらわれ、それが段々と道と解るようになってくる。また家も城に近づけば近づくほど多くなってきているのだ。


 更に進み、お城の手前付近に至ると完全に町になっていた。人々も沢山行きかっている。そんな通行人には普通の人間風もいれば、話に聞いた身長三メートル位の巨人や人語を話す二足歩行の動物なんかもいる。また町には質屋や武器屋、道具屋、宿屋、酒場、飯屋なんかがあった。かなり商業も充実しているようだ。完全に異世界であり、不思議な世界だった。僕は感動を覚えた。


「……あの、だ、誰か私に食べ物を……」


 僕等が武器屋の前を通過した時に微かに何かが聞こえた気がした。


「あっ、こっちが質屋みたいだね、よし、さっきの魔宝石を換金しようじゃないか」


 アンナに促された僕は相槌を打つことしかできない。


「う、うん」


 いずれにしても、もうこの世界に慣れていくしかないだろう。


 アンナに付き従い木戸を開けて中に入る。


 横に長い受付テーブルが置かれ、そこに少し身なりが良い中年の男が座っていた。普通の人間だ。西洋人っぽい顔立ちだった。


「ねえ、この魔宝石を換金したいんだけどさ……」


「はい、換金ですね、では、その魔宝石を見せて頂けますか」


 アンナは布の小袋からフェンリル狼を倒して得た魔宝石を二つ取り出し渡した。


「ほう、中々大きいですね」


 鑑定士らしき男は拡大鏡を目に付け品定めをし始める。


「ああ、立派だろ、幾らになるかい?」


 アンナは堂々としている。やはり体験者は頼りになる。


「う~ん、そうですね、そうしたら3万ゴッドでは如何でしょうか?」


「3万5千にならないかな? 相場だとその位だと思うけどね」


 相場も解っているようだ。


「う~ん、わかりましたよ。お姉さん可愛くて綺麗だから特別ですよ、3万5千ゴッドで換金致しましよう」


「えっ、か、可愛くて綺麗だって! やばい久しぶりに言われた! うん、そうなの、そうなのよ、あたしってば、今、とっても若くて美しくて可愛くて綺麗だからね!」


 可愛くて綺麗って言われて喜んでやがる。本当はおばさんを通り越してお婆さんなのに。


「では、こちらにて換金致します。ご確認をお願いします」


 男はお金をトレイの上に載せて僕等の前に出す。


 何だかんだアンナの美貌? の効果もあってか、希望値になったようだ。金貨のような物を受け取り僕らは質屋を出る。


「さてと、じゃあ金も用意出来たし、飯屋でも行こうかね?」


 確かに腹も減ってきている。


「うん、じゃあ食事にしよう。って何を食べれば良いのかよく解らないんだけど?」


「ふん、そのあたりは、あたしに任しときなよ」


 質屋から飯屋に向かって進んで行くと、また何かが聞こえた気がした。


「……あの、だ、誰か私を助けて下さい……」


 声がする方を見ると、武器屋の壁の端の方に、力なく座り込んでいるカエルの姿があった。


「アンナさん…… あのカエル大丈夫かな? 困っているみたいだけど……」


「バカ、物乞いだ。見るんじゃないよ!」


 アンナはそちら側を見ようともしない。


「でも、かなり弱っているみたいだし、困っているみたいだけど……」


 僕は再度視線を送る。カエルは弱弱しい雰囲気ながら、僕を見つつ何度も微かな頷きをみせる。


 この世界特有なのか、人間の子供位の大きさのカエルだった。通常のカエルから考えるとかなりデカい。普段は二足歩行で歩いているのか、足を前に投げ出し尻を付いて座り込んでいた。


「……そっ、そこの、赤毛の、大変お美しいお嬢様、何卒私にお恵みと救いを…… 何卒お願いします……」


 アンナはピクっと反応する。


「ふっ、仕方がないわね、可哀想だから、助けてあげようかしら」


「ち、ちょっと待って! それって今、美しいお嬢様って言われたからなんじゃないの?」


 ズルい! 豹変だ。


「ち、違うわよ、本当に可哀そうになっちゃったからよ、急にね」


「ほ、本当かよ、うごっ……」


 また鳩尾に肘が入った。声が出ない。


「本当なのよ」


「…………は、はい……」


 何だか納得がいかないぞ。


「で、あんた、どう助ければ良いの? ご飯を恵むの? 体力を回復させれば良いの?」


「……と、とりあえず、お腹が減って動けません。食事を恵んで頂けませんでしょうか…… 後でお礼は必ず致しますから……」


「食事ね…… まあ、良いわよ、あたし達も飯屋に行く所だから一緒に連れて行ってあげるわよ」


「そ、そ、それは大変ありがたい…… ありがとうございます。本当にありがとうございます……」


 カエルは弱弱しくもペコペコ何度も頭を下げてくる。


 そうしてカエルを連れ立った我々は飯屋へと入って行った。


 でも、この事が食事だけでは済まず、大変な事になってくことを、この時の僕たちは知る由もなかったのだ。

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