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転生したらアンデルセンになっていた!  作者: 上野 拓夢
Prologueー
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scene.2   デンマーク国のアンデルセン

 それから一体どの位の時が経ったのだろうか、僕は陽光の眩しさで目を覚ました。


 何と言うか深く長い眠りから目覚めたような感覚だった。


「……おおっ、ハンスや、目が覚めたみたいだね、熱も下がって来たし、何とか症状が治まってきたようだね……」


 目の前には白髪の老婆が居て、僕の顔を見て安心したような表情を見せてくる。前に見た金髪の女性の姿は見えなかった。


「あっ、あの…… 体が凄く怠いけど、僕の体に何かあったのかな? それと僕は今記憶があやふやなんだけど……」


 そう言いながら周囲を見回してみる。


 あれ? こ、ここは一体何処だ? というか日本の家屋の構造じゃないぞ、何というか西洋風だ。それも現代とかじゃなく、中世辺りの雰囲気だと思うけど。


 そんな事を考えていると白髪の老婆が説明をし始めてくれる。


「ハンス、お前は流行り病に罹ってしまって高熱が出て、一週間程寝込んでいたんだよ……」


「流行病…… そ、そうなんだ……」


 どうやら川で溺れた僕は、死んで何処かの世界に転生したらしい。そしてハンスという名前の人物になっているようだ。何だか良くある異世界転生というやつに似ている気がするぞ。


 しかしながら、もし仮に異世界転生というやつだったとすると、赤子に転生したわけじゃなさそうだから、この体の元々の人格や性格や意志はどうなっているのだろう? 切り替わるのか? それとも僕の人格とハンスという人物の人格の二つが共存するような感じになるのだろうか? 


 僕は混乱しつつも、そんな余計な事まで考えてしまった。


 とはいえ、そのハンスという人格や意志はほとんど感じられなかった。単純に僕という人物の人格がハンスという人物の体に入り込んだだけのような感覚に近い。


「あ、あのさ、僕、ボ~っとしていて状況が解らなくなっているんだ。ちょっと記憶喪失みたいな状態になってしまっているようなんだよね……」


 僕は戸惑い気味に白髪の老婆に声を掛ける。


「成程だね、高熱で脳が委縮してしまっている状態なのかもしれないね……」


「僕さ、自分の記憶を再確認したいと思うんだけど、僕の問い掛けに答えてもらって良いかな?」


 とりあえず状況を見定める必要があるぞ。


「ん? 記憶の再確認かい、ああ、協力するよ、何でも聞いとくれ」


 白髪の老婆がうんうん頷く。


「じゃ、じゃあ、まず、今僕が居るのはどこ? ここは何ていう場所なの?」


「ここねえ…… こんな答え方で良いのか解らないけど、ここはデンマーク王国、フュン島、オーデンセという街だよ」


 ……えっ、デ、デンマーク王国? ここはヨーロッパなのか? 異世界じゃないのか?  


「そ、そうしたら、今って西暦何年位なの?」


 僕は問い掛けてみる。


「西暦? それはグレゴリオ暦の事かい?」


「そ、そう、そうだよ、そのグレゴリオ暦で構わないよ」


 僕は話を合わせた。日本から見れば西の暦だがデンマークではそうは言わない気がする。


「今はグレゴリオ暦1817年になるね」


「1817年なのか……」


 成程、過去か…… 中世から近世といった所だな。


「じゃあ、改めてなんだけど、僕の名前を言ってもらっていいかな?」


「ああ、お前の名前かい? 名前はハンスだよ、正式にはハンス・クリスチャン・アンデルセンだけど……」


 ……えっ、アンデルセン? 若しかしてハンスって人物は、童話作家のハンス・クリスチャン・アンデルセンだったりするのか? 確か昔に千葉のアンデルセン公園に行った時、アンデルセンはデンマークのオーデンセ生まれとか書いてあった気がするけど。


「と、ところで、熱でうなされていた僕を必死に励ましてくれていた、あの……」


 お母さんぽい人は?


「何処に居るのかな?」


「お母さんかい?」


 僕は顎を引いた。矢張り母親だったようだ。


 その問い掛けに老婆は天を仰いだ。


「……残念だったよ、体力が無かったんだろうね、看病中に、お前の罹っていた流行り病に感染してしまってね……」


「えっ、そ、それ、どういうことなの?」


 まさか……。


「ああ、お前の母親、アネは亡くなってしまったんだよ……」


 マジか……。いきなり急展開過ぎるぞ。


 転生したばかりだから、その母親に対しての思い入れは少ない。とはいえ自分を必死に看病してくれていた母親が死んでしまったのだ。状況的に何か申し訳ないと言うか酷く残念な気持ちが浮かんでくる。


「じゃあさ、記憶が無くて思い出せなくなっているんだけど、僕のお父さんはどうしているの?」


 それを聞いた白髪の老婆は顔を顰める。


「ハンス、お前、それも思い出せないのかい?」


「あっ、う、うん」


「お前の父親、いや、あたしの息子は一年前に自殺しちまったじゃないか……」


「えっ、自殺した?」


「ああ、戦争に従軍したのに報労金が支払われなかった事に絶望しちゃってね」


 これまた残念な話しだ。上野拓夢としてはその両親に思い入れがないから悲しいという感覚は殆どない。だが、流行り病から回復した状況ながら、父親は既に死んでいて、母親は自分の罹っていた病気が罹り死んでしまったという。現時点で存在が確認できるのは父方の祖母だけのようだ。個人的に悲しい訳じゃないけど、自分がとても悲しい状況に置かれているという事は理解できた。


 いずれにしても転生したばかりだというのに、両親がいないとか救いがなさすぎるだろう。

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