↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【百合】放課後だけ距離が近い女の子と、友だちではしないことをしている。  作者: 夏野恵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/31

第24話 また二人で入ってみるー?

「花火ってここからどの辺に見えるものなの?」

「いつもあの辺に見える感じかな」


 渋谷さんは夜空に指をさして方向を示してくれた。


 雑談をしていると、あっという間に花火が打ちあがる時間になった。

 もう晩ご飯は軽く済ませていて、花火を見ながらお菓子を食べるつもり。


 今はコンビニで買ったお菓子を手にしてベランダに出ている。


「ここからならちゃんと見えそうだね」


 なんとなく方向だけは確認してから焼き菓子を口に放り込む。


 渋谷さんの住むマンションは河川敷から少し離れているため、ここから人だかりを確認することはできない。でも微かに花火が打ちあがるアナウンスらしき放送が聞こえた。


 手すりに身を寄せながらぼんやり眺めていると、突然、やけに綺麗な模様が夜空に浮かんだ。

 それに少し遅れてドーンっと重い音がこちらに届く。


 花火大会が始まったみたいだ。


 花火を生で見るのは中学生ぶりだった。

 久しぶりに見て、花火ってこんな綺麗だったんだ、と思った。


 でもめちゃくちゃ感動したというわけではない。


 今さら言うなって言われそうだけど、私は花火がそれほど好きではないのだ。

 嫌いではないけど、好きでもない。自分で見たいと思うほどではないって感じ。


 だから今、私が花火を見ているのは完全に渋谷さんから誘われたからだった。


「そろそろ戻ろっか」

「うん」


 しばらく黙って見てから、私たちはリビングに戻った。


 ベランダとは言っても外であることには変わりがないから暑い。

 汗をかいてまで見るほどでもない、と思っていると渋谷さんが口を開いた。


 たぶん渋谷さんも同じことを考えていたんだろう。


 リビングのソファに腰を下ろすと、渋谷さんがテレビをつける。

 地域のテレビ局では花火大会の様子を生中継しているから、それをぼんやりと見てみる。さっき見たような花火がスクリーン上に映し出されていて、それにニュースキャスターがコメントをしていた。


「テレビで見るくらいがちょうどいいね」

「生で見たのにそんなこと言う?」


 情緒ゼロだね、と渋谷さんはくすくす笑った。


 もちろん、生で花火を見るのもいいことだと思う。

 スクリーンを挟んだら、どんなに解像度が高くても生には劣るわけだし。


 でも生で見るのもいいことばかりではない。暑いなか人混みで座る場所を探したり、食べきれない焼きそばのパックを持て余したりするかもしれない。


 そういうのも花火大会の良さだろうけど、私はそんなに心が惹かれなかった。


 花火が打ちあがり始めたけれど、私たちは見向きもしない。

 テレビで何度か流れている花火大会の様子をぼんやりと見ていた。


「これからどうする?」

「お風呂入ろうかな」


 これから外に出る予定もないし。


「それなら、また二人で入ってみるー?」


 すすす、と私に近づいて渋谷さんは顔を覗き込んできた。


 冗談とも本気ともわからない、柔らかな笑み。

 彼女のぱっちりとした瞳の中には、私が写っていた。


 前みたいに唇かまないならいいよ、という言葉が出かかった。

 でもあの時は特殊だったわけだし、そう何度もするものじゃないと思う。


 だから私はその言葉を飲み込んだ。


「今日はひとりずつでいい?」

「うん。二宮さんから入っていいよ」

「ありがと」


 そういって渋谷さんの頬に手を当てる。


 彼女の頬は、子どもみたいにふっくらとしていた。

 とても触り心地が良くて、ずっと撫でていたくなる。


「……なに?」


 渋谷さんは私の方を見てきた。


 私の手を退けようとしないから、私のことを信頼してくれているのだろう。

 お風呂に入る前に、と思って、私は軽く渋谷さんと唇を重ねてすぐ離れた。


「なるべく早く入るね」

「……ん」


 渋谷さんがこくんと頷いたのを確認してから、私は脱衣所に入った。


 すぐに服を脱いで左胸に手を当てると、ドクドクと脈を打っている。

 でも苦しい感じではなくて、ちょっとだけ気持ちが良い胸の締め付け感だった。


 キスしようってわざわざ言ってするよりも、ああいう感じの方が好き。

 生活の延長線上にあるから、気合を入れる必要がないっていうか。


 ああいうの、もっとできたらいいな。


 さっきの触れ合いに満足した私は、悠々と浴室に足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。