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サムライの格好で異世界に来たんだが  作者: 志村けんじ


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少年の賭け


 エクセラの魔力により、更に濃い霧が、少年たちの視界を奪う。


「ヒック、ヒック……あっ……あぁーーーっ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 その霧の中から、シクシクと泣く女の声かして、それが徐々に泣き叫ぶ声に変わっていく。


 その声の主は、確実にエクセラ以外にはいない。


「いやぁーー! あぁぁーーっ。王子よ……200年前。何故、このワタシを捨てた! ……」

 そのエクセラの泣き叫ぶが、次第に大きくなっていき、精神を攻撃してくる。


 このエクセラの泣き叫ぶ声は、最初はまわりから聞こえていたが、今は自分の頭の中から聞こえてくるようだ。


 それなので、いくら耳をふさごうが意味がない。


 この泣き叫ぶ声を聞いていると、精神力が削られて疲弊ひへいされていく。


 少年は、大刀だいとうカタナさやに収めた。


「クレア姫。エクセラが持っているフィラクトリーの気配は感じますか?」

 そう。少年は聞いた。


「ええ。感じるわ」

 クレアは、そう答える。


「その位置まで、わかりますか?」

 少年は、そのことも聞いた。


「ええ。これだけ近くだから、大体の位置もわかるわ」

 クレアには、ほぼ正確にエクセラが持っているフィラクトリーの位置までわかっていた。


 ただ、わかってはいたが。この視界では、危険すぎて近づくことなどできない。


「なら……」

 少年は、大刀だいとうに変えて、脇差わきざしを抜いた。


 この少年が持っている脇差には、少し離れたところにいる魔物を、見えない魔法のムチのようなもので、絡みついて捕まえるという能力がある。


 少年がこの異世界に来たときに、身につけていた着物や藁草履わらぞうり、持っていた3つの武器は、間違いなく何かしらの魔法が込められているものだ。


 それは、もう疑いようがない事実である。


 ところがだ。この世界には、魔力を持った魔物が存在しているのに、人間の魔法使いがいない。魔法の道具なるものも聞いたことがない。


 この事は、RPGをほとんどしたことのない、そういった知識が浅い少年でも不思議に思っていた。


 ところが、クレアは魔法は使えないが、魔物の魔力を感じる能力がある。


 そういう人間が存在していたのだ。


 もしかしたら、クレアはこれから魔法を使えるようになるのかもしれない。


 その可能性がある。


 そして、可能性といえば、少年は火縄銃のチカラのことから、この脇差にも、その可能性があるのではと考えた。


 少年の持っている火縄銃は、少年が精神力を込める度合いに応じて、その威力が変わる。


 それであれば、この脇差も少年が精神力を込めれば、威力や能力が増すのではないかと考えた。


 但し、少年のこの予想が外れれば、もうあとがない。


 このままだと、精神力が持ちそうにない。


 だからこれは、もう一か八かの賭けだ。


 少年は、脇差に精神力を込めた。


 すると、脇差の刀身から延びる、青白く光るムチのようなものが見える。


「クレア。この青白い光が見えるか」

 少年はクレアに、そのことを聞いた。


「ええ。見えるわ。ハッキリと」


 この時点で、少年は賭けに半分勝った。


「よし。それならみんな、ちょっと頭を低くしてくれ」


 少年はそう言うと、その(ムチ)をグルグルと自分のまわりに回し始めた。


「クレア。このムチの高さは、エクセラが持っているフィラクトリーよりも、高い? 低い?」

 そう聞いた。


「少し高いわ。もう少し下げて!」


 少年は、この脇差のチカラなら、エクセラが持っている、リッチのフィラクトリーを捕まえることができるのではないかと思ったのだ。 


「今よ! その高さよ!」

 クレアは、そう叫んだ。


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