浅川 沙千絵
第77話 3人の関係性
「お姉さんも一緒に働いてる人なの?」
ワタシのことを「お姉さん」と呼ぶので、女性に対してそういう分別は付けられるようだ。天馬さんと弟さんを比べると、弟さんの方が育ちが良さそうだ。ちゃんとしている家庭では、お子さんの育ちも良くなるのだろう。
しかし親戚の叔父さんに会うのに、高校生にもなってそんなにはしゃげるもんなのかと、なんとなく違和感があった。
「兄さんは、ここにいるんですよね」
父親の方は、やや緊張している。それは20年以上も会っていない兄弟に会うのだから多少緊張はするのだろう。兄弟間でも、何か問題でもあるのか。まあ、問題あるからそんなに会っていないだろうし、その原因は聞かなくても天馬さんの方にあると決めつけてしまう。
弟さんの顔は、天馬さんに似ているところもあるが、雰囲気が正反対だ。弟さんも40を越えている年齢だろうが、爽やかで誠実そうな印象。名前さえわかれば字画を調べたい衝動が起きるが、我慢。和尚に《《その人を見ろ》》と言われたから、弟さんをよく観察してみる。
「大丈夫だよ、舜ちゃん」
高校生は弟さんの背中を叩いた。《《舜ちゃん》》?今の子供は父親のことを下の名前で呼ぶのか。それとも、この人たちは親子じゃないのか。じゃあ、その女の人は?
「母ちゃんも、なんとか言ってやれよ」
あ、ここは親子なのか。
弟さんは女の人と目を合わせた。「大丈夫よ」女の人はか細い声でそういうと、弟さんの手をギュッと握った。ここは夫婦か恋人か。なるほど、この子はこの女の人の連れ子なのね。
利休くんはこの状況を静観している。まあ、利休くんはこの家族の事情を知ってるわけね。もしかしたら連れ子ですか、なんて無粋なことは聞けない。あとで利休くんに聞けばいいか。
ん?待てよ。
弟さんとは20年以上も会ってないのに、この息子さんはなんで天馬さんのことを知ってるんだ?時系列が整理できない。
もう少しで階段を上りきる。
全ては、天馬さんと再会すればわかるだろう。
階段を上りきると、境内には天馬さんの姿はなかった。代わりに甘くていい匂いが漂ってきた。ハンバーグより先にスープでも作っているのだろうか。
そうだった。優禅さんに早く玉葱を渡さないと。
気になる親子の関係は後にして、ワタシは台所は急いだ。




