表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎮めよ!  作者: オノダ竜太朗
第1章 諸法無我〜俺たちには実態がない
PR
72/120

辻 天馬

第72話 利休の電話


 今日は酒が進んでしまう。

 みんな乾杯はビールだったが、2杯目からは各々好きなものに変えている。劉弦はハイボール。女性陣は白ワイン。和尚と雲仙さんと優禅さんは冷酒を飲んでいた。俺は最後までビール、だ。しつこいようだが、唐揚げとの組み合わせは、ヤバい。なんの根拠もないが、ビールのホップが唐揚げの脂分を分解してくれると思っているから、無限に食える気がする。


 若い時は全然飲めなかった。酒を飲んで調子が悪くなるのに、大人たちがなんで酒を飲むのか理解できなかった。ここへ来て毎日飲むようになり、酒も強くなった。和尚には仏の教えより、美味い飯を食うための酒の飲み方を教わっただけの気がする。その和尚も、むかしはビールをガンガン飲んでたくせに、最近は冷酒をチビチビ飲むようになってきた。やっぱりジジイだな。

 今日はハンパなく汗をかいたので、ビールの吸収率もハンパない。いつもはそう簡単に酔わないのに、3杯目辺りからフワフワとしてきた。そこからは更に唐揚げが美味く、食ってることが楽しくなってしまう。

 いつも和尚は「お酒は嗜みなさい」「悪いお酒は飲むな」と言う。要は悪酔いするな、と言いたいだろうが、そもそも坊さんが酒飲んでいいのかよ、と思う。だが、それを突っ込んだところで結局は自分の首を絞めてしまうので、言わない。


「そう言えば、先程利休さんから電話がありましたよ」


 雲仙さんは、和尚の空になった小さいグラスに冷酒を注ぎながら言った。


「明後日、都合がつきそうなので、帰るとのことでした」


「なんだ、なんだ。もう少しゆっくりしてくればいいのに」


 雲仙さんの報告に和尚は笑いながら答えた。

 和尚。笑ってる場合じゃねえよ。もう少しゆっくりなんて冗談じゃねえ。何が明後日都合がつく、だ。テメェの都合ってなんなんだよ!何様のつもりだ。また明日も檀家回り、俺が行かなきゃならねえじゃねえか。とっとと今日の新幹線で帰って来い!

 雲仙さんも俺の顔を覗き見て笑っている。なんだよ!俺がヘロヘロになって檀家回りから帰ってくるのが、そんなに面白えか。

 でも、明日もう1日、この美味いビールが飲めると思うと楽しみでもある。あの暑い中歩き回るという苦行に耐えてこそ、この美味さが待っているのだ。いかんいかん。思考回路が僧侶化してきやがった。こんなの続けてたら、マジで僧侶になっちまう。

 あの野郎、帰ってきたらいつもの倍以上苛いじめてやる。それにしてもビールが美味い。今は、ビールと唐揚げの方が大事だ。


 和尚と雲仙さんが俺の方を覗き見て、なにやらコソコソと話している。和尚はフンフンと頷いて、「それはいい」とほざいてやがる。

 まさか、一休が帰ってきても、檀家回りは俺にやらせるとか言ってんじゃねえだろうな。冗談じゃねえぞ。


「なんすか?」


 怒鳴りたい気持ちは、ビールと唐揚げで鎮めることができた。だけど、コソコソと話している内容が気になる。


「明後日も、美味しいビールを飲みましょう」


 含むような笑みで雲仙さんが返事をした。

 なぁにぃ!巫山戯ふざけるなよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ