真鍋 蓮実
第31話 わたしのこと。
すぐに浅川さんにアポを取った。いつでも大丈夫だと言うので、明日の朝イチにまた来てもらうことにした。再就職の件を聞かれたが、まずはわたしたちの仕事を見学することを提案した。
テストすると言う劉くんの考えは、とても短絡的で幼稚に思えた。浅川さんだって、どうしてもわたしたちの仕事をやりたいわけではないだろうし、選ぶ権利だってある。お金に困ってるなら勧められない仕事だし、彼女みたいな真面目な人には向いてないかもしれない。わたしたちの仕事、特に劉くんたちの復讐の方の仕事を見たら、考え直すかもしれない。警察に通報されるリスクも考えたが、ちゃんと話せばわかってもらえるはずだ。
もしそれでも通報されるのであれば、それがわたしたちの潮時なのかもしれない。こんなことをしていて何か意味などあるのか、と何度も自問自答してきた。答えなんて自分では出せなかった。それは劉くんも天馬くんも、きっと同じだろう。利休だって、出家することが答えだっんじゃないと思う。人を助けているつもりで、自分自身を苦しめている。そう考えてしまう時がある。
彼女を入れることで、多少なりともわたしたちの関係性は崩れると思う。わたしたちの関係性がちゃんと成り立っているのかと言えば、そう言い切れない。だけお互いの距離を取り、互いの存在を尊重してきたつもりだ。そこに不協和音が生じることもあるだろう。それが、わたしたちの仕事の終わりを迎えるのかもしれない。それでもいいと思っている。
こんなこと、いつまでも続けられない。誰かが終わりにしてくれれば、それでいい。
わたしは手桶から柄杓で水を掬い、墓石に水をかけた。乾いたタオルで墓石をしっかりと拭いた。そして娘の墓に手を合わせた。
ママは、どうしたらいいのかな。
返事がないことはわかっている。そんなこと聞かれても、陽夏も困るよね。
パパに聞いてみなよ。
どこからか声が聞こえた気がした。
気のせいだ。わたしは陽夏の声も知らない。顔だって、赤ちゃんの顔しか知らないのだ。
あれから3年経った。3歳の陽夏は、どんな顔に育ったのだろう。この3年間、勝手にわたしの中で成長させてきた。わたしの小さな時の顔に似せて、声も想像した。だから聞こえたのは、わたしの心の声だ。
そんなことを聞いても、あの人は答えてくれないだろう。




