数原 真樹夫
第117話 お久しぶりです。
朝。
いつものように目覚める。寝巻きのまま外に出て、大きく息を吸う。
快晴。
空の隅々までポスターカラーのペンで塗ったような水色。天気予報を見なくても、今日は多分、降水確率0%だ。
境内を眺めると、ところどころに蝉の死骸が転がっている。掃除などの日課は、昨晩のうちから雲仙さんたちにお願いしてあった。理由を話すと、2人は快く引き受けてくれた。そして、皆んなには昨晩のうちから、ちゃんと別れも告げている。
掃除は2人に任せてあるが、精舎の周りくらいは、と掃き掃除を始めた。長い間世話になった場所だ。最後には綺麗にしてお別れしたい。最初は精舎の周りだけ掃いていたが、結局境内の全体を掃除してしまった。
それにしても、だらしのない人たちだ。境内全部を掃き終わるまで30分くらいは要しただろうが、誰1人起きちゃこない。
僕は態と溜息を吐いて、竹箒を片付けた。
久しぶりに、みんな揃うんだから早起きしろよ。
僕は精舎に戻ると、みんなを叩き起こした。
「ふはぁぁ、ん?ここは、どこだ?」
40過ぎのオッさんが1人起きた。
「え!なんで、ここにいんだよ!」
その声に、他の人たちも起き始めた。
「えー、なんで?」「どうなってんだ?」「ちょっと、どういうこと」みんな方々好き勝手にぼやいている。
そこには、劉弦さんと天馬さん、蓮実さんと沙千絵さんの4人の姿。布団から上半身を起こし、4人とも不思議そうな顔をしている。現状が飲み込めないようだ。
「みなさん、お久しぶりです」
現状を把握しているのが自分だけという、なんとも愉快なシチュエーションだ。




